〇〇ワインに〇〇の実 エチオピアあれこれ
マラリアの予防薬が切れたので買い直したイクエです。
まだふたりともマラリアにはかかってないけど、これだけ長くアフリカにいると一度くらいかかるリスクは多いにある。
とくにわたしは虫に刺されやすい体質だし・・・。
虫除けとマラリアの予防薬で、これからもリスク回避をしなきゃ。
世界遺産の岩窟教会やトレッキングを楽しんだゴンダール。
それにエチオピアの新年の時期だったのでここでは年越しもやった。
泊まっているアットホームな売春宿の食堂では大晦日にあたる9月10日の夜、コーヒーセレモニーが行われた。
集まったのはいつものメンバー。
わたしたちふたり、いつもここで客を待っている娼婦のおねえさん、食事に来る地元の青年たち。
食堂で働くおねえさんが振る舞ってくれる。

コーヒーセレモニーは日本の茶道にあたるようなもので、儀式化されていて決まった作法がありエチオピアの伝統文化。
カーペットがわりに床に敷き詰めた草。
草の上に、お供え物のようにポップコーンを散らす。
ポップコーンにパンケーキにフルーツ。
これがコーヒーセレモニーのお供え物の定番。

上手においしいコーヒーを淹れることを、女性はたしなみとして要求される。
エチオピアではどの女性もコーヒーセレモニーができるのだそう。
成人式の日には、女の子は家族や親戚の前でコーヒーセレモニーを披露しないといけない。
そのために年頃の女の子は母親からコーヒーの淹れ方を教えてもらうんだって。

花瓶のような壷に水とコーヒーの粉を入れて、炭でグツグツと煮込んでいく。
煮出したエチオピアコーヒーは苦い。
どろっとした粉が沈殿していてエスプレッソのような濃さ。
チビチビと味わうので、おちょこのような小さなカップに注がれる。

宿を切り盛りするお母さんが、自慢のハニーワインをごちそうしてくれた。
色は黄色。
炭酸ではないけどちょっとだけシュワシュワする。
ハニーで作っているけど、甘過ぎない。
それなりに度数はあるようだけど、マイルドで飲みやすい。

元旦にあたる9月11日の日に、隣のレストランに行ったらエチオピアのダンスと音楽が披露されていた。
男性が小さなギターのようなものを弦でかき鳴らし、それに合わせて女性が歌いながら激しく踊る。歌い手の女性は客のなかからターゲットを決めると、その客の前に歩み寄り質問するように歌を投げかける。
客がそれに答えると女性は歌で返し、会場が笑いで沸く。
掛け合いのような歌。
ケンゾーも歌い手の女性に歌で質問され、なんと言ってるかわからなかったので「I don't know」と言ったら女性が歌で切り返し、笑いで包まれた。
なんて言ってたんだろう。
そして腰と肩を上下に揺らしながら踊るダンスはアムハラ族の伝統的なものらしい。
ケンゾーも歌い手の女性から誘われて体を揺らしたけど、目も当てられないほどひどかった。
ケンゾーはほんとうにダンスのセンスがゼロ。
本人が思っている以上にヘタくそ。
本人は同じようにやってるつもりなんだけど、ぜんぜん違う。
はっきり言って、ケンゾーよりも踊りがヘタな人を見たことない。
こういうとき、妻としていつも恥ずかしくなる。
それに比べて、5歳くらいの男の子や10歳くらいの姉妹たちが大人顔負けのダンスをし続ける。
こういうのを見ると、さすがアフリカだなあって思う。
子どものころから音楽に合わせて自然に体を動かす技を身に付けている。
そんなふうに新年を過ごしたラリベラを発つときがやってきた。
目指すのはメケレという街。
かなり距離はあるけど、今日中にたどり着けるかなあ。

山を2キロ下りバスターミナルへ。
時間は、朝の4時半!

エチオピアの旅は、移動が大変。
だからエチオピアに行きたくないという旅人もいるほど。
とにかく朝が早い。
しかもバスの本数が少ないので、朝イチのバスを逃せない。
というのも、エチオピアでは夜間にバスが走らないから。
街灯もなく山道も多いエチオピアでは暗いと事故が起こる可能性が高い。
そのため、自動車保険が夜は適用されないらしい。
だから日暮れ前になんとしても目的地に着かないといけないので、長距離バスは日の出とともに出発する。
バスのチケットは前日に買ってはいたけれど「5時にはバスターミナルに来ないといけないよ」って言われてた。
本当にこんな朝早い時間に来る必要があったのかなあ。
ターミナルに到着したのは5時前。
それなのにすでにたくさんの乗客たちがゲートが開くのを待っていた。

いくらチケットを持っているとはいえ不安になる。
元旦は終わったけれど、今度は新年をふるさとで迎えた人たちのUターンラッシュ。
ちゃんと席を確保しないと!
ゲートが開くと同時にみんなが一斉にバスへと走る。
わたしたちも負けないようにダッシュ。
バスに飛び乗って席に座る。
なんでチケットを前日に買ってるのに、こんなことをしないといけないのか意味がわからない。
でも地元の人もそうしてるからしょうがない。
ほんとうはする必要がないのにただ不安だからみんなそうやってるのか、それとも事前予約していても当日の客に席を取られる可能性があるからなのか・・・。
しかも夜が明けないとバスは出発しないので、満員の状態で1時間以上バスは駐車場に停車したまま。
だったら集合時間を1時間遅い、6時にすればいいのに・・・。
エチオピアのバスは無駄な労力を使わないといけない。
ここからメケレへの直通バスはない。
まずはワルディアという街へ。
バスは値段交渉も面倒くさい。
とくに外国人には高い運賃を請求されるし、バックパックを載せるときに高額の荷物代を請求されることもある。
荷物代に関しては、払っている地元の人もいれば払わない人もいる。
だから地元の人が払っていたり、少額だったらわたしたちは払うこともあった。
今回は最初に車掌に高い値段を要求されたけど、あらかじめ地元の人に聞いていた運賃を伝えたらその金額で了承してくれた。
でも、かわりに荷物代を払えと言われたのでおつり分だけ渡した。
移動がスムーズにいったら、エチオピアはもっと旅がしやすくなるのに・・・。
とは思うものも、それこそが旅の醍醐味かもしれない。
空が白みはじめて、乗客で満杯になったバスはようやく出発した。

まぶしい緑。
かわいらしく咲き乱れる黄色い花。
息吹を感じる季節。
エチオピアの新年がこの時期であることが納得できる。
大晦日に足止めを食らったガシャナの村でバスは止まり、休憩タイム。
名前も知らず何もない村だったけど、1泊しただけでわたしたちにとってなじみのある村になった。
かって知ったる村。
ほったて小屋のお茶屋さんの椅子に腰かけて紅茶とパンの朝食。

再びバスは走りはじめた。
このルートはとてもきれい。
ゆるやかな丘がつらなり、草原があり、家畜が放牧され、昔ながらの家がぽつぽつと建っている。
「原風景」という言葉が似つかわしい景色。
初めて見るのに、なつかしささえ感じる。


エチオピアは赤道に近いにもかかわらず、涼しい。
それは標高が高いから。
いくつもの山が連なっている。
だから山を越え、くねくね道を走らなければならない。
車酔いする乗客多数。
峠を越えていかないといけないので時間がかかる。
そういう意味でもエチオピアの移動は大変!
ちょっとそれたら転落しそうなきわどい道をバスは走っていく。
この崖の、上から3分の1ほどのところの横に走る切れ込みが見える。
これが道路。

バスは最初の乗り継ぎ地点ワルディアに到着。
ほとんどのバスが早朝出発なので、もうこの時間になるとバスはほとんどなくなっている。
ここからは乗合いワゴンに乗る。
幸運にもメケレ行きの乗合いワゴンに乗れることに。

また美しい山を越えながらメケレを目指していく。
モロッコに行ったときも「砂漠」のイメージを覆す緑豊かな山々を見るたび、驚くとともに感動した。
ここエチオピアもそう。
移動は大変だけど、美しい国だなあって思う。
でも実はこのワゴン、メケレ行きじゃなかった。
途中のアディグドムという街が終点だった。
メケレまでの運賃を払ったのに~、と思っていたら車掌はちゃんと差額分を返してくれて「次はこのワゴンに乗って!」とちゃんと次のワゴンまで案内してくれた。

ラリベラ ~ ワルディアの運賃は75ブル(約410円)、ワルディア ~ アディグドムが99ブル(約540円)、アディグドム ~ メケレまでが20ブル(約110円)。
エチオピアはアフリカの中でも物価が安い国だけど、交通費はそれほど安くはない。
マイカーの普及率が低くて、首都以外の街ではバスやワゴン以外に車をほとんど見ないので需要が高いからかもしれない。
車の免許を取るのもお金がかかるので、経済的に豊かな人がドライバーになるらしい。
憧れの職業はドライバーで、ドライバーには高学歴で英語も話せる人が多い。
プライドが高く、車掌や客に対して態度が横柄なドライバーがけっこういる。
バスが北上するにしたがって、少しずつ景色が変わりはじめる。
草原にかわって、木々がうっそうと生い茂る。
サボテンも群生している。
バラエティー豊かなエチオピアの景色。

そしてようやくメケレの街に到着!
メケレはこれまでの街よりも道路が広くて高いビルもチラホラあって、都会って感じ。
かといってごみごみしてないし、暮らしやすそうなところ。

いくつかまわって決めた宿は、バスターミナル前のホテル。
まだ新しくて1階は食堂。
スタッフにほぼ英語は通じないけど、みんな笑顔で誠実に対応してくれる。

バス・トイレつきで100ブル(約550円)。
できたばかりなのでまだ完成してないところもあり、残念ながらホットシャワーは出なかった。
でも部屋はきれいだし、ベッドマットもシーツも新品。
これは重要。
だって、もうずっと南京虫にやられ続けている。

スーダンの南部からこれまで泊まった宿のほとんどで南京虫の攻撃を受けてきた。
やられる場所は、手首、足首、首、腰、股、腕。
200か所は噛まれたかなあ。
おもに2種類あって、小さいくせにピョ~ンピョ~ン!と驚異的なジャンプ力を見せ、捕まえることが困難なノミ。
そしてゴキブリをゴマくらいの大きさにしたようなダニ。
とくにダニから攻撃を受けている。
ダニを潰すとプシューっと血が噴き出す。
こんなにわたしの血を吸ってたのねって憎たらしくなる。
驚くのは彼らの生命力!
つぶしてぺっちゃんこになって死んだと思ってたのに、ぺっちゃんこのまま手足をバタバタさせて起き上がり動き出す。
ぺっちゃんこなのに生きてるってのが怖くなる。
今度は爪で胴体を突き刺し切れ込みを入れる。
ぺっちゃんこで胴体が折れているのにそれでも歩こうとする。
「うっわぁ~。なんなんコイツ。
こっわ~!」
「これだけ生命力があるけん、そりゃ殺虫剤をいつもベッドにふりかけても死なんはずよ。」
「コイツはゴマぐらいの大きさだけど、もし犬ぐらいの大きさだったら人も喰うし生命力もあるし、史上最強の生き物になるんやない?」
「よくB級映画でジャングルの中で得体の知れない生物に人が喰われるようなのがあるけど、そんなふうになるやろうね。」
ふたりでくだらない話で盛り上がる。
盛り上がるんだけど、じつはケンゾーはまったく刺されない。
同じ部屋のツインベッドでもそうだし、ふたりでダブルベッドに寝てもわたしだけ十か所以上刺されるのにケンゾーはゼロ。
南京虫にやられるかどうかは、蚊以上に個人差がありそう。
南京虫を防ぐ方法はほとんどない。
新しめのホテルでシーツも毎日洗ってブランケットを毎日干してるのに出ることもあるし、汚い宿なのに出ないところもある。
エチオピアではバスの座席も南京虫の巣窟になってるので、外から自分が室内に連れてくることもある。
それに自分の洋服に住み着いたり、パンツのウエストのゴム部分に卵がついたりもするんだって!
しかも洗っても取れないの!!
おそろしや~。
南京虫の弱点は高熱!
服を煮沸するか、アイロンをかけるか。
エチオピアで暮らす青年海外協力隊の人は、下着にもベッドマットにもアイロンをかけてるって言ってた。
南京虫は夜になるとどこからともなくベッドの上に這い上がってくる。
寝てると気配を感じて気になってすぐ起きてしまうし、かゆすぎて熟睡できない。
寝るのが怖くなってくる。
日課のように刺されるので気にしないようにしてるし「旅する以上は南京虫たちとつきあっていかないといけない」と割り切るようにはしてるけど。

この新しいホテルは南京虫も少ないし、バスターミナルも近くでなかなかいい。
でも、なんとこのエチオピアでWi-Fiが使えるホテルがあると聞いたので移動することにした。
Wi-Fiつきのホテルなんてエジプト以来!

SETI HOTEL。
ダブルで、シャワーは共同で100ブル(約550円)。
1階のレストランは高級なつくりで、レストランでもWi-Fiが使える。
見かけよりも部屋はボロいけれど、けっこうおすすめ。
メケレの街でおもしろい食べ物を発見した。
これはフルーツ?

赤みがかったきれいな黄色。
表面にはイボイボ。
おばさんがスルスルと慣れた手つきで皮をむいてくれる。
ひとつ1ブル(約5.5円)。


この正体はというと・・・。
これ!!

サボテンのつぼみ!
意外に甘くておいしい。
つぶつぶの種が中までいっぱいあるのでちょっと食べづらいけど、熟した柿のような味。
メケレの街にはエチオピアに珍しくオシャレなレストランやカフェもある。
ボリュームたっぷりで文句なしのおいしいハンバーガーを出すお店。
インジェラ以外の食べ物を出してくれるお店。
そして釜焼きピザ!

本格的なイタリアンピザ。
いっしょに食べたのはエジプトのアスワンで出会ったカップル、だいごろくんときっこちゃん。
(2人の旅ブログ「世界ぽろり旅」)
アフリカの旅のルートが同じで「またエチオピアのメケレで会えるかもね」って話していた。
(この2人とはその後もちょこちょこ分かれては合流というのを繰り返すことに。)

このカップルも南京虫の被害にあうのはきっこちゃんだけ。
わたしたちと同じように、2人で同じベッドで寝てもきっこちゃんだけ刺されるのだそう。
「なんか自分が犠牲になってる感じするよね。」
「そうそう。
わたしたちが防波堤になってる。
いなかったら、ケンゾーやだいごろくんは刺されてるはず。
だから感謝してほしいよね。」
ここメケレに来た目的は3泊4日のダナキルツアーというものに参加するため。
火山や塩湖などエチオピアならではのダイナミックな自然を楽しめるツアー。
このツアーにだいごろくんときっこちゃんと「いっしょに参加できたらいいね」って言ってたんだけど、わたしたちの旅のスピードが遅いこともあって、さきに2人は参加ずみ。
きょうツアーを終えてきていた。
そしてわたしたちはあしたからそのツアーに参加する。
きょうツアー会社の前でたかちゃんという日本人の女の子に出会い、彼女といっしょにあしたから参加することにした。
この夕食にはたかちゃんも同席。
5人でエチオピアのワインで乾杯!

残念ながら、甘すぎてマズい!!
ワインは好きだしけっこう飲んでも酔わないのに、グラス1杯で気持ち悪くなってしまった。
気持ち悪さは宿に戻っても治らず。
これは悪酔い?
それとも風邪?
あしたからのツアー、大丈夫かな。
なんせこのツアー、ふたりで1000ドル近くしてるから。
さて次回からはこの高額ツアーについてお伝えします。
いったいどんなツアー?
まだふたりともマラリアにはかかってないけど、これだけ長くアフリカにいると一度くらいかかるリスクは多いにある。
とくにわたしは虫に刺されやすい体質だし・・・。
虫除けとマラリアの予防薬で、これからもリスク回避をしなきゃ。
世界遺産の岩窟教会やトレッキングを楽しんだゴンダール。
それにエチオピアの新年の時期だったのでここでは年越しもやった。
泊まっているアットホームな売春宿の食堂では大晦日にあたる9月10日の夜、コーヒーセレモニーが行われた。
集まったのはいつものメンバー。
わたしたちふたり、いつもここで客を待っている娼婦のおねえさん、食事に来る地元の青年たち。
食堂で働くおねえさんが振る舞ってくれる。

コーヒーセレモニーは日本の茶道にあたるようなもので、儀式化されていて決まった作法がありエチオピアの伝統文化。
カーペットがわりに床に敷き詰めた草。
草の上に、お供え物のようにポップコーンを散らす。
ポップコーンにパンケーキにフルーツ。
これがコーヒーセレモニーのお供え物の定番。

上手においしいコーヒーを淹れることを、女性はたしなみとして要求される。
エチオピアではどの女性もコーヒーセレモニーができるのだそう。
成人式の日には、女の子は家族や親戚の前でコーヒーセレモニーを披露しないといけない。
そのために年頃の女の子は母親からコーヒーの淹れ方を教えてもらうんだって。

花瓶のような壷に水とコーヒーの粉を入れて、炭でグツグツと煮込んでいく。
煮出したエチオピアコーヒーは苦い。
どろっとした粉が沈殿していてエスプレッソのような濃さ。
チビチビと味わうので、おちょこのような小さなカップに注がれる。

宿を切り盛りするお母さんが、自慢のハニーワインをごちそうしてくれた。
色は黄色。
炭酸ではないけどちょっとだけシュワシュワする。
ハニーで作っているけど、甘過ぎない。
それなりに度数はあるようだけど、マイルドで飲みやすい。

元旦にあたる9月11日の日に、隣のレストランに行ったらエチオピアのダンスと音楽が披露されていた。
男性が小さなギターのようなものを弦でかき鳴らし、それに合わせて女性が歌いながら激しく踊る。歌い手の女性は客のなかからターゲットを決めると、その客の前に歩み寄り質問するように歌を投げかける。
客がそれに答えると女性は歌で返し、会場が笑いで沸く。
掛け合いのような歌。
ケンゾーも歌い手の女性に歌で質問され、なんと言ってるかわからなかったので「I don't know」と言ったら女性が歌で切り返し、笑いで包まれた。
なんて言ってたんだろう。
そして腰と肩を上下に揺らしながら踊るダンスはアムハラ族の伝統的なものらしい。
ケンゾーも歌い手の女性から誘われて体を揺らしたけど、目も当てられないほどひどかった。
ケンゾーはほんとうにダンスのセンスがゼロ。
本人が思っている以上にヘタくそ。
本人は同じようにやってるつもりなんだけど、ぜんぜん違う。
はっきり言って、ケンゾーよりも踊りがヘタな人を見たことない。
こういうとき、妻としていつも恥ずかしくなる。
それに比べて、5歳くらいの男の子や10歳くらいの姉妹たちが大人顔負けのダンスをし続ける。
こういうのを見ると、さすがアフリカだなあって思う。
子どものころから音楽に合わせて自然に体を動かす技を身に付けている。
そんなふうに新年を過ごしたラリベラを発つときがやってきた。
目指すのはメケレという街。
かなり距離はあるけど、今日中にたどり着けるかなあ。

山を2キロ下りバスターミナルへ。
時間は、朝の4時半!

エチオピアの旅は、移動が大変。
だからエチオピアに行きたくないという旅人もいるほど。
とにかく朝が早い。
しかもバスの本数が少ないので、朝イチのバスを逃せない。
というのも、エチオピアでは夜間にバスが走らないから。
街灯もなく山道も多いエチオピアでは暗いと事故が起こる可能性が高い。
そのため、自動車保険が夜は適用されないらしい。
だから日暮れ前になんとしても目的地に着かないといけないので、長距離バスは日の出とともに出発する。
バスのチケットは前日に買ってはいたけれど「5時にはバスターミナルに来ないといけないよ」って言われてた。
本当にこんな朝早い時間に来る必要があったのかなあ。
ターミナルに到着したのは5時前。
それなのにすでにたくさんの乗客たちがゲートが開くのを待っていた。

いくらチケットを持っているとはいえ不安になる。
元旦は終わったけれど、今度は新年をふるさとで迎えた人たちのUターンラッシュ。
ちゃんと席を確保しないと!
ゲートが開くと同時にみんなが一斉にバスへと走る。
わたしたちも負けないようにダッシュ。
バスに飛び乗って席に座る。
なんでチケットを前日に買ってるのに、こんなことをしないといけないのか意味がわからない。
でも地元の人もそうしてるからしょうがない。
ほんとうはする必要がないのにただ不安だからみんなそうやってるのか、それとも事前予約していても当日の客に席を取られる可能性があるからなのか・・・。
しかも夜が明けないとバスは出発しないので、満員の状態で1時間以上バスは駐車場に停車したまま。
だったら集合時間を1時間遅い、6時にすればいいのに・・・。
エチオピアのバスは無駄な労力を使わないといけない。
ここからメケレへの直通バスはない。
まずはワルディアという街へ。
バスは値段交渉も面倒くさい。
とくに外国人には高い運賃を請求されるし、バックパックを載せるときに高額の荷物代を請求されることもある。
荷物代に関しては、払っている地元の人もいれば払わない人もいる。
だから地元の人が払っていたり、少額だったらわたしたちは払うこともあった。
今回は最初に車掌に高い値段を要求されたけど、あらかじめ地元の人に聞いていた運賃を伝えたらその金額で了承してくれた。
でも、かわりに荷物代を払えと言われたのでおつり分だけ渡した。
移動がスムーズにいったら、エチオピアはもっと旅がしやすくなるのに・・・。
とは思うものも、それこそが旅の醍醐味かもしれない。
空が白みはじめて、乗客で満杯になったバスはようやく出発した。

まぶしい緑。
かわいらしく咲き乱れる黄色い花。
息吹を感じる季節。
エチオピアの新年がこの時期であることが納得できる。
大晦日に足止めを食らったガシャナの村でバスは止まり、休憩タイム。
名前も知らず何もない村だったけど、1泊しただけでわたしたちにとってなじみのある村になった。
かって知ったる村。
ほったて小屋のお茶屋さんの椅子に腰かけて紅茶とパンの朝食。

再びバスは走りはじめた。
このルートはとてもきれい。
ゆるやかな丘がつらなり、草原があり、家畜が放牧され、昔ながらの家がぽつぽつと建っている。
「原風景」という言葉が似つかわしい景色。
初めて見るのに、なつかしささえ感じる。


エチオピアは赤道に近いにもかかわらず、涼しい。
それは標高が高いから。
いくつもの山が連なっている。
だから山を越え、くねくね道を走らなければならない。
車酔いする乗客多数。
峠を越えていかないといけないので時間がかかる。
そういう意味でもエチオピアの移動は大変!
ちょっとそれたら転落しそうなきわどい道をバスは走っていく。
この崖の、上から3分の1ほどのところの横に走る切れ込みが見える。
これが道路。

バスは最初の乗り継ぎ地点ワルディアに到着。
ほとんどのバスが早朝出発なので、もうこの時間になるとバスはほとんどなくなっている。
ここからは乗合いワゴンに乗る。
幸運にもメケレ行きの乗合いワゴンに乗れることに。

また美しい山を越えながらメケレを目指していく。
モロッコに行ったときも「砂漠」のイメージを覆す緑豊かな山々を見るたび、驚くとともに感動した。
ここエチオピアもそう。
移動は大変だけど、美しい国だなあって思う。
でも実はこのワゴン、メケレ行きじゃなかった。
途中のアディグドムという街が終点だった。
メケレまでの運賃を払ったのに~、と思っていたら車掌はちゃんと差額分を返してくれて「次はこのワゴンに乗って!」とちゃんと次のワゴンまで案内してくれた。

ラリベラ ~ ワルディアの運賃は75ブル(約410円)、ワルディア ~ アディグドムが99ブル(約540円)、アディグドム ~ メケレまでが20ブル(約110円)。
エチオピアはアフリカの中でも物価が安い国だけど、交通費はそれほど安くはない。
マイカーの普及率が低くて、首都以外の街ではバスやワゴン以外に車をほとんど見ないので需要が高いからかもしれない。
車の免許を取るのもお金がかかるので、経済的に豊かな人がドライバーになるらしい。
憧れの職業はドライバーで、ドライバーには高学歴で英語も話せる人が多い。
プライドが高く、車掌や客に対して態度が横柄なドライバーがけっこういる。
バスが北上するにしたがって、少しずつ景色が変わりはじめる。
草原にかわって、木々がうっそうと生い茂る。
サボテンも群生している。
バラエティー豊かなエチオピアの景色。

そしてようやくメケレの街に到着!
メケレはこれまでの街よりも道路が広くて高いビルもチラホラあって、都会って感じ。
かといってごみごみしてないし、暮らしやすそうなところ。

いくつかまわって決めた宿は、バスターミナル前のホテル。
まだ新しくて1階は食堂。
スタッフにほぼ英語は通じないけど、みんな笑顔で誠実に対応してくれる。

バス・トイレつきで100ブル(約550円)。
できたばかりなのでまだ完成してないところもあり、残念ながらホットシャワーは出なかった。
でも部屋はきれいだし、ベッドマットもシーツも新品。
これは重要。
だって、もうずっと南京虫にやられ続けている。

スーダンの南部からこれまで泊まった宿のほとんどで南京虫の攻撃を受けてきた。
やられる場所は、手首、足首、首、腰、股、腕。
200か所は噛まれたかなあ。
おもに2種類あって、小さいくせにピョ~ンピョ~ン!と驚異的なジャンプ力を見せ、捕まえることが困難なノミ。
そしてゴキブリをゴマくらいの大きさにしたようなダニ。
とくにダニから攻撃を受けている。
ダニを潰すとプシューっと血が噴き出す。
こんなにわたしの血を吸ってたのねって憎たらしくなる。
驚くのは彼らの生命力!
つぶしてぺっちゃんこになって死んだと思ってたのに、ぺっちゃんこのまま手足をバタバタさせて起き上がり動き出す。
ぺっちゃんこなのに生きてるってのが怖くなる。
今度は爪で胴体を突き刺し切れ込みを入れる。
ぺっちゃんこで胴体が折れているのにそれでも歩こうとする。
「うっわぁ~。なんなんコイツ。
こっわ~!」
「これだけ生命力があるけん、そりゃ殺虫剤をいつもベッドにふりかけても死なんはずよ。」
「コイツはゴマぐらいの大きさだけど、もし犬ぐらいの大きさだったら人も喰うし生命力もあるし、史上最強の生き物になるんやない?」
「よくB級映画でジャングルの中で得体の知れない生物に人が喰われるようなのがあるけど、そんなふうになるやろうね。」
ふたりでくだらない話で盛り上がる。
盛り上がるんだけど、じつはケンゾーはまったく刺されない。
同じ部屋のツインベッドでもそうだし、ふたりでダブルベッドに寝てもわたしだけ十か所以上刺されるのにケンゾーはゼロ。
南京虫にやられるかどうかは、蚊以上に個人差がありそう。
南京虫を防ぐ方法はほとんどない。
新しめのホテルでシーツも毎日洗ってブランケットを毎日干してるのに出ることもあるし、汚い宿なのに出ないところもある。
エチオピアではバスの座席も南京虫の巣窟になってるので、外から自分が室内に連れてくることもある。
それに自分の洋服に住み着いたり、パンツのウエストのゴム部分に卵がついたりもするんだって!
しかも洗っても取れないの!!
おそろしや~。
南京虫の弱点は高熱!
服を煮沸するか、アイロンをかけるか。
エチオピアで暮らす青年海外協力隊の人は、下着にもベッドマットにもアイロンをかけてるって言ってた。
南京虫は夜になるとどこからともなくベッドの上に這い上がってくる。
寝てると気配を感じて気になってすぐ起きてしまうし、かゆすぎて熟睡できない。
寝るのが怖くなってくる。
日課のように刺されるので気にしないようにしてるし「旅する以上は南京虫たちとつきあっていかないといけない」と割り切るようにはしてるけど。

この新しいホテルは南京虫も少ないし、バスターミナルも近くでなかなかいい。
でも、なんとこのエチオピアでWi-Fiが使えるホテルがあると聞いたので移動することにした。
Wi-Fiつきのホテルなんてエジプト以来!

SETI HOTEL。
ダブルで、シャワーは共同で100ブル(約550円)。
1階のレストランは高級なつくりで、レストランでもWi-Fiが使える。
見かけよりも部屋はボロいけれど、けっこうおすすめ。
メケレの街でおもしろい食べ物を発見した。
これはフルーツ?

赤みがかったきれいな黄色。
表面にはイボイボ。
おばさんがスルスルと慣れた手つきで皮をむいてくれる。
ひとつ1ブル(約5.5円)。


この正体はというと・・・。
これ!!

サボテンのつぼみ!
意外に甘くておいしい。
つぶつぶの種が中までいっぱいあるのでちょっと食べづらいけど、熟した柿のような味。
メケレの街にはエチオピアに珍しくオシャレなレストランやカフェもある。
ボリュームたっぷりで文句なしのおいしいハンバーガーを出すお店。
インジェラ以外の食べ物を出してくれるお店。
そして釜焼きピザ!

本格的なイタリアンピザ。
いっしょに食べたのはエジプトのアスワンで出会ったカップル、だいごろくんときっこちゃん。
(2人の旅ブログ「世界ぽろり旅」)
アフリカの旅のルートが同じで「またエチオピアのメケレで会えるかもね」って話していた。
(この2人とはその後もちょこちょこ分かれては合流というのを繰り返すことに。)

このカップルも南京虫の被害にあうのはきっこちゃんだけ。
わたしたちと同じように、2人で同じベッドで寝てもきっこちゃんだけ刺されるのだそう。
「なんか自分が犠牲になってる感じするよね。」
「そうそう。
わたしたちが防波堤になってる。
いなかったら、ケンゾーやだいごろくんは刺されてるはず。
だから感謝してほしいよね。」
ここメケレに来た目的は3泊4日のダナキルツアーというものに参加するため。
火山や塩湖などエチオピアならではのダイナミックな自然を楽しめるツアー。
このツアーにだいごろくんときっこちゃんと「いっしょに参加できたらいいね」って言ってたんだけど、わたしたちの旅のスピードが遅いこともあって、さきに2人は参加ずみ。
きょうツアーを終えてきていた。
そしてわたしたちはあしたからそのツアーに参加する。
きょうツアー会社の前でたかちゃんという日本人の女の子に出会い、彼女といっしょにあしたから参加することにした。
この夕食にはたかちゃんも同席。
5人でエチオピアのワインで乾杯!

残念ながら、甘すぎてマズい!!
ワインは好きだしけっこう飲んでも酔わないのに、グラス1杯で気持ち悪くなってしまった。
気持ち悪さは宿に戻っても治らず。
これは悪酔い?
それとも風邪?
あしたからのツアー、大丈夫かな。
なんせこのツアー、ふたりで1000ドル近くしてるから。
さて次回からはこの高額ツアーについてお伝えします。
いったいどんなツアー?