「いつのまにかガイド」にご用心
半袖のシャツを2着買って、2年以上着続けていた服を捨てたイクエです。
破けたりはしてなかったんだけど、着過ぎて裾も襟ぐりものびのびになっていたからね。
今度は伸びきったスカートを新調しなきゃ。
予定ではスーダンを出国してその日のうちに来るつもりだったけど、バスがパンクしたり正規運賃でワゴンに乗れなかったりで1泊2日かけてようやくたどり着いたゴンダールの街。
ふぅ~。
長くて疲れる移動だったなあ。

小雨が降るなかワゴンを降りると、わらわらと人が寄ってきた。
「ハロー、ホテル探してるの?」
「あっちにいいホテルがあるよ。」
「ホテルまで連れて行こうか。」
きたきたきたきた。
エチオピアでは勝手にホテルに案内するガイドがいるというのを聞いていた。
「もう決めてるから!」と強い口調で言って彼らをかわすように小走りで逃げる。
「宿まで案内するよ」と言う彼らはホテルの関係者ではない。
ホテル側と提携しているわけでもホテルから頼まれているわけでもなく、適当にその辺の宿に連れて行って、案内代を受け取るらしい。
たとえば自力でホテルにたどり着けば通常の宿泊料で泊まることができるけど、案内係といっしょに行けば上乗せされた宿泊料を請求されて、その上乗せ分が彼らに渡されるらしい。
エジプトで知り合った旅人カップルのだいごろくんときっこちゃんが先にゴンダールを旅していて、お勧めのホテルを教えてもらっていた。
だからわたしたちは自力でそのホテルを目指す。
小走りに移動してる間も「ハロー? ハワユー?」と親しく声をかけてくる人がいる。
適当に挨拶すると「ホテルは?」と切り出してくる。
誰とも目を合わせないようにして、大通りへ。
「あ、ここかも!」
わたしたちがそのホテルの前で足を止めると、脇からさっとわたしたちを追い抜いてこっちをちらりと見てホテルへ入っていった男がいた。
看板でそのホテル名を確認するとお目当てのホテルじゃないことが判明したので、わたしたちはまた次のホテルへ歩き出した。
「あ、ここじゃない?
ほら。」
わたしたちが看板を確認して中に入ろうとしたら、入口に青年がいて「ウェルカム」と言ってわたしたちを中へ案内した。
ホテルのスタッフだろう。
レセプションには愛想のいいおばちゃんがいた。
おばちゃんと数人のスタッフに向かって「部屋ありますか?」と聞いた。
するとさっきの青年が早口でわたしたちに聞く。
「どんな部屋がいい?
部屋はふたつ?
それともいっしょの部屋?」
「いっしょの部屋でいい。」
するとその青年はおばちゃんや他のスタッフに向かって現地語でわたしたちの意向を伝える。
スタッフの中には英語をしゃべれる人がいるのに、青年がわざわざ間に立って通訳をする。
なんでわざわざそんなことするのかな。
「とりあえず部屋を見せてくれませんか?」
そう言うと、また青年がスタッフたちにそのことを伝えてみんなで部屋に案内してくれた。
わたしたちを3階の部屋まで案内してくれたのは、その青年とほかのスタッフ数人。
案内するのはひとりでいいんだけど・・・。
だいごろくんときっこちゃんからはあらかじめホテルの写真を送ってもらっていて、ふたりで100ブル(約550円)と聞いていた。
案内してくれた部屋はだいごろくんたちが送ってくれた写真と同じだった。
とりあえず聞いてみた。
「ここいくらですか?」
青年が言った。
「150ブル。」
「え!?150?
高いよ。」
「いや、高くないよ。」
青年は150ブルが妥当な値段であることを早口で主張しつづける。
青年とわたしたちのやりとりを他のスタッフたちが見つめる。
だうごろくんたちからスタッフはいい人ばかりだと聞いていた。
数日前に泊まっていた2人が100ブルなのに150ブルっておかしい!
それにわたしたちはガイドを連れてきていない。
いや。
もしかして・・・連れてきているかもしれない。
「フーアーユ!?」
青年に向かって聞いてみた。
青年が一瞬止まった。
でもすぐに150ブルがリーズナブルな値段であるという主張を続ける。
「フーアーユ!?」
青年が目をそらす。
「フーアーユ!?
あなたはホテルのスタッフなの?」
青年は答えない。
腕をつかんで聞いているのに答えてくれない。
だから青年の後ろでわたしたちのやり取りを見守っていたほかのスタッフに聞いた。
「ねえ!
この人、誰?
ホテルのスタッフ?」
スタッフたちがいっせいに青年を見つめた。
青年は気まずそうな顔をしている。
スタッフたちが言った。
「この人は、あなたたちのガイドでしょ?」
え?
「いや、違うよ。
わたしたちはこの人のこと知らない。
ホテルに一緒に入ってきただけだよ。
友だちからこのホテルのことを聞いていて最初から泊まるつもりだったもん。
この人と話したのはさっきがはじめて。」
「あなたたちのガイドじゃないの?」
「うん。
数日前に日本人のカップルが泊まってたでしょ。
部屋は100ブルって聞いたけど。」
「そうだったの!?
ガイドじゃないのね。
100ブルでいいよ!」
青年はまったくの部外者でただホテルの入口でわたしたちを待ち構え、わたしたちにはさもホテルスタッフであるかのように振る舞い、ホテルスタッフに対してはさも自分が旅行者を捕まえてこのホテルまで案内したかのように振る舞っていたのだった。
彼の正体はエチオピアに多い「いつのまにかガイド」だったのだ。
正体がばれてしまった彼は、すでに姿を消していた。
「いつのまにかガイド」に気をつけなきゃ!!
わたしたちが泊まったホテルは3階建てのビルの2階と3階部分にあるEnana Wubet Bed Room。
トイレ・シャワーは共同だけど清潔だし温かいお湯が出る。
1階で食堂も経営している。

食堂に行くとさっそく常連客がエチオピアの国民食インジェラを食べていた。
インジェラは銀色の大きなお盆に盛られてくる。
それをみんなで囲んで手を使って食べる。

インジェラとは「テフ」と呼ばれるイネ科の穀物を粉にしてクレープ状にしているものでエチオピアの主食。
そのうえにおかずがのせてあって、インジェラで巻いたりちぎっていっしょに食べたりする。

このインジェラが旅行者には不評!
「ゲロのような味」とか「雑巾を食べてる気分」なんて酷評されることもある。
で、実際はと言うと・・・。
けっしてゲロや雑巾ではない。
でもおいしくはない。
見た目はクレープのようでガレットのようでそこそこおいしそうだけど、クレープよりも厚みがあってもさもさしている。
そして酸っぱい!
エチオピア人にとってはこの酸っぱさがいいらしいんだけど、発酵させすぎていておかずのうまみを打ち消すくらい酸っぱくて個性が強すぎる。
カビが生えたパンのような匂いもする。
「ゲロ」や「雑巾」は言い過ぎだけど、毎食これを食べるのは嫌だなあ。
でも、逃げ道はある。
何も言わなければインジェラが来るんだけど、店によっては「インジェラじゃなくてパンにしてください」とお願いすると同じ値段でパンと変えてくれる。

上の写真でパンに付け合わせてあるのはシロとよばれる豆を挽いてペースト状にしたもの。
このシロもエチオピア人は好き。
唐辛子が入っていてマッシュドポテトをちょっと辛くしたような味。
これとパンやインジェラだけを食べるけど、わたしたちにとっては物足りないし口の中の水分がもっていかれる。
シロはいまいちだけどティブスと言われるぶつ切り肉の炒め物はおいしい。
主食のインジェラはおいしくないけど、エチオピアのおかずはおいしい。
「濃い味付けでご飯が進む」って言いたいところだけどあいにくご飯じゃなくてインジェラかパン。
これがご飯だったらなあ・・・。
エチオピアのおかずはビールも進む。

エチオピア人は豆が大好き。
路上で揚げていたサモサを買ったら中からぎっしり詰まった豆が出てきた。
ひとつ3ブル(約16円)。
揚げたてでサクッとしておいしいし、豆はお腹にたまるので小腹がすいたときにちょうどいい。

「エチオピア料理はマズい」と言われることもあるけれど、けっしてそんなことはないと思う。
たしかに毎食インジェラってのは嫌だけどおかずのレパートリーは多い。
海はないけど川や湖があるので魚は取れる。
数は少ないけど魚料理を出すお店も探せばある。

エチオピア人は食にこだわっていると確信したのがこの料理。
注文すると、炭を入れた小さな七輪のようなものがテーブルに運ばれてくる。
おしぼりのように巻かれたものはインジェラ。

「あつあつのままおいしくいただきたい」
そんな食へのこだわりがあるからこそ生まれた定番メニューだと思う。

エチオピア料理を知ることになった最初の街、ゴンダール。
料理だけじゃなく街歩きも楽しんでみましょ ♪
ゴンダールは標高2300メートルほどある。
お隣の国スーダンはあんなに暑かったのに、山の多いエチオピアは涼しい場所が多い。
スーダンでは酷暑のなかを一日過ごすだけで大変だったのに、ここはなんて快適。

大通りは栄えているけれど、一歩脇道に入ればのどかな山村の風景。
ちょうどいい街の規模。
だからからか「ゴンダールよかった!」って旅人も多い。
「エチオピア南部に比べて人もマイルドで優しい」なんて言う人も多いけど、うーん、真相はどうだろう。

歩道では家畜のヤギのお散歩中?
いや、手にニワトリを持っているところをみると市場でニワトリとともに買って来たのかな。
これから家でごちそうにするのかも。

人間にとってヤギの肉がごちそうなら、犬だってヤギの肉がお好き?
耳が残っている頭部をワイルドにガリガリ。
人間のおこぼれにあずかっている。

新しい国に来てやるべきことがある。
それは携帯電話のSIMカードを買うこと。
どんな種類があるのか、いくらくらいで買えるのか、きのうホテルの近くの携帯電話屋さんのお兄さんに聞いていた。
エチオピアには観光客を騙す人もいるかもしれないけど、ほとんどの人は面倒見が良くて優しい。
だからわからないことや聞きたいこと、頼みたいことがあれば優しそうな人を探して聞くことにしている。
きのうも携帯電話屋さんのお兄さんに聞いたら丁寧に英語で説明してくれた。
あいにくSIMカードは携帯電話屋さんじゃなくて、街の中心にある専用のお店で買わないといけないらしい。
SIMカードを買いにお店を探していると、若者が寄ってくる。
「どうしたの?
SIMカードを買うならあの店がいいから連れて行ってやるよ。」
「俺の親戚がやってる店があっちにあるんだ。」
みんな同じ方角を指す。
でも案内してもらうわけにはいかない。
英語で向こうからしゃべりかけてくるのがなんとなくあやしいし、また「いつのまにかガイド」で最終的に「案内してあげたからお金ちょうだい」なんて言われかねない。
ここは自力で行かなきゃ。
わたしたちが彼らを振り切って歩いていても、2人くらいついてくる。
「SIMカードの店はあそこだよ。」
「自分たちで行けるから大丈夫。」
わたしたちは看板を見つけて商店にたどり着いた。
その商店では店主のおやじと客の若者が話していた。
「SIMカードください。
インターネットもできるヤツがいいです。」
「パスポートのコピー持ってる?」
客の若者が聞いてきた。
わたしたちは仲良くなった携帯屋さんのお兄さんにSIMカードを買うときはパスポートのコピーが必要だと聞いていたので用意していた。
若者が続けた。
「インターネットもできるSIMカードは150ブルだよ。」
150ブルというのも携帯屋さんが言ってた金額と同じ。
「うん、その150ブルのをください。」
おやじが店の奥からSIMカードをもってきてわたしたちは200ブル渡し、おやじから50ブルのお釣りをもらった。
「これでインターネットもできるんですよね!」
「SIMカードを中に入れればできるよ。」
わたしたちの携帯電話は小型のスマートフォン。
SIMカードを小さく切らないと入らない。
「すぐそこでカットできるから。」と若者が言ってカットできる場所に案内してくれた。
歩いているとさっきわたしたちを店に連れて行こうとしていた人たちがその若者に何やら話しかけている。
顔見知りのようでいろいろとわたしたちのことを聞いているみたいだった。
そのうちのひとりがわたしに聞いた。
「彼はいいヤツか?」
「うん。」
わたしが答えると親指を立ててニヤリとした。
若者はわたしたちをすぐ近くの店に連れて行き「ここでカットできるよ。」と言った。
そして「カット代20ブル(約110円)。」と言った。
20ブル?
ただホッチキスみたいなのでパチンとカットするだけなのに。
日本じゃタダでやってくれるのに。
20ブル払うくらいなら自分でハサミでカットするほうがいい。
「高すぎるよ!
この店ではやらない。」
「高い!?」
いままであんなに優しく教えてくれてたのに若者はわたしたちの「高い」という言葉を聞いてすっといなくなった。
若者はいろいろと教えてくれていたけど、SIMカードのカット代を高く請求しているし、バイバイも何も言わずに逃げていくようにわたしたちから離れていった。
なんかちょっと違和感を感じた。
わたしたちはホテル近くの仲良くなった携帯屋のお兄さんにさっそくSIMカードとインターネットの使い方を聞くことにした。
でも、お兄さんの店は閉まっていた。
仕方なく、ほかの携帯電話屋さんで聞くことにした。
「英語話せますか?」
「もちろん。
何か困ってるの?
手伝うことがあれば。」
その人は紳士的な対応をしてくれた。
でもSIMカードを入れてもインターネットが使えない。
わたしたちはさっきから不安になっていることを彼に言ってみた。
「実はこれインターネットできるって聞いて150ブルで買ったんですけど、もしかしたらインターネットが使えないいちばん安いSIMカードを渡されたのかもしれないって不安なんですけど。」
「でも150ブルで買ったんでしょ。
だったらインターネット使えるよ。」
すると男性はそばにいた知り合いといっしょにわたしたちにこんなことを説明した。
エチオピアではSIMカードを買って使えるようにするには、技術者に設定をやってもらわないといけないこと。
素人が設定することはできないこと。
自分がその技術者で、技術料80ブル(440円)を支払えば使えるように設定してあげること。
わざわざSIMカードと電話を技術者に渡して携帯を操作してもらって使えるようにしてもらうなんて聞いたことなかった。
でも現にインターネットが使えないので、ちょっと高いけど頼むしかなかった。
「80ブルは高い気がします。」
「じゃあ50ブルでいいよ。」
その男性はわたしたちの携帯を分解するでもなくただ液晶をタッチしながら何か設定した。
5分くらいいじって男性が言った。
「はい、これでできたよ。」
でも渡された携帯電話はインターネットが使えないし、さっきといっしょだった。
「これで本当に使えるんですかね?」
男性はそばにいた知り合いといっしょにわたしたちに説明した。
「あと30分したら使えるようになるよ。
いま起動中だから。」
「そうなんですね!
ありがとうございます。」
「50ブルね。
それと・・・いま起動中だけど、もしまだ作業が終わらないうちに自分で触ってしまったら作業が中断されるから注意してね。
そしたらインターネットは使えないままになるから。」
「わかりました。
30分間触らないといいんですね。」
答えてから、ちょっと考え直した。
なんかそれってリスクがない?
いま50ブル払ってこのまま携帯を持ち帰っても、もし何かの拍子に触れたら台無しってことだよね。
「ちょっと心配なのであと30分ここに置いておきます。
作業が終了したくらいに戻ってきますので預かっておいてください。
そのときに50ブルも払いますので。」
男性とその知り合いは、2人で目を合わせ苦笑いした。
わたしたちは30分以上経って、もういちどその店に行ってみた。
インターネットは使えないままだった。
「ちょっと、できないんだよね。
理由はわからないけど。
だから50ブルは払わなくていいや。」
なにそれ?
さっき50ブル払ってそのまま持ち帰っていたらインターネットができないままだったんじゃないか。
それに文句を言いにここにきても「あなたが途中で触ったから作業が失敗した」って責任逃れされたんじゃないか。
こいつらもしかして最初から騙す気だったんじゃないか。
そもそもお金を払って電話を使えるように設定してもらうなんてヘンな話じゃないか。
エチオピア人、信用ならない・・・。
でも幻滅してばかりではダメだ。
きっといいエチオピア人もいる。
わたしたちはきのう仲良くなった携帯電話屋さんにもう一度行ってみることにした。
さっきは店が閉まっていたけど、開いている!
お兄さんがいた。
「どうしたの?」
「このSIMカードを買ったんだけど、インターネットができないんだよね。」
「見せて?」
わたしたちはSIMカードを見せた。
お兄さんは言った。
「騙されてるよ!
これインターネットができないSIMカードだよ。
150ブルじゃなくて30ブルだよ!」
「ああ〜、やっぱり・・・。」
違う人たちから2回騙されたことを悟った。
1度はSIMカードを売りつけられたとき。
2度目はインターネットが使えるように設定してあげると言われたとき。
「どこで買ったの?」
「交差点を下ったところにあった小さな商店で・・・。」
「あー。
その店はダメな店だよ。」
「今からその店に行って抗議してきます。」
「うん、行っておいで!」
いら立ち、興奮しながらSIMカードを買った店に行った。
青いほったて小屋の中におじさんはいた。

ずんずんずんと店に近づき、おじさんに抗議した。
「これ、インターネットできないSIMカードでしょ!
どうして30ブルなのに150ブルで買わせたの!」
おじさんはヤバいというような顔をしたけど、また取り繕って平然と言った。
「だってあんたたちガイドを連れてきたでしょ。
ガイドを連れてきたら高くなるんだよ。
ガイドの斡旋料が含まれていたんじゃない?」
「ガイド!?
誰それ!?」
「さっきそこにいた若者だよ。」
ここでも「いつのまにかガイド」か・・・。
でもあいつ「ガイド」じゃなくてわたしたちがここに来たときから店の前にいておじさんと話していた。
あいつとおじさんは結託してわたしたちを騙したのだった。
「あんなのガイドでも何でもない。
あなたの知り合いでしょ。
ここでいっしょに話してたでしょ。」
「いやあ、あの若者は知らないなあ。
君たちが連れてきたでしょ。」
「連れてきてないよ!
しかも150ブルはガイドに渡したんじゃない。
あなたに直接渡して、あなたがそれをそのまま受け取ったでしょ!
わたしたちが『これでインターネットできる?』って聞いたら『うん』って言ってたよね?」
いま考えるとその辺にたむろしていた若者たちは、SIMカードを探していたわたしたちをみんなこの店に連れて行きたがっていた。
きっとおじさんはどうしようもない若者たちと手を組んで、これまでも詐欺をやってきたのだと思う。
「あんた若者ギャングのボスだよ!
そんなことしてどうするの!?」
強い口調で問いつめるとおじさんは最初「100ブル返すから」と言ったけど、結局正規料金は30ブルなので120ブルを取り返した。
なんかものすごく疲れた。
エチオピア、かなり大変だ。
こんなときこそエチオピア人に癒やされたくて、わたしたちはホテル近くのあの優しいお兄さんがやっている携帯電話屋さんに行った。
「SIMカードの代金、取り返すことができました。
ありがとう!」
「取り返せたの?
お〜、よかったねえ!!」
お兄さんはニコニコと笑って握手してくれた。
悪い人もいれば、いい人もいる。
大変だし気を緩められないけど、そんなのも含めてエチオピアは刺激的でおもしろいのかもしれない。
なんか自分が試されている気がする。
だからこそ、この国を楽しんでいけるようにしよう。
通りを歩いていたら、男の子たちが集まり盛り上がっている場所があった。


サッカーのゲームに興じていた。
「ハロー!
ジャパニーズ!
いっしょにやらない?」
みんな元気で明るくてかわいい!

おじいちゃんに手を引かれた女の子。
チラチラと後ろを振り返る。
かわいいね。


こっちにもお母さんに手を引かれた女の子。
おしゃれしてるね。


「いつのまにかガイド」に振り回される国だけど、でもなんかこの国を好きになりはじめている自分がいる。
破けたりはしてなかったんだけど、着過ぎて裾も襟ぐりものびのびになっていたからね。
今度は伸びきったスカートを新調しなきゃ。
予定ではスーダンを出国してその日のうちに来るつもりだったけど、バスがパンクしたり正規運賃でワゴンに乗れなかったりで1泊2日かけてようやくたどり着いたゴンダールの街。
ふぅ~。
長くて疲れる移動だったなあ。

小雨が降るなかワゴンを降りると、わらわらと人が寄ってきた。
「ハロー、ホテル探してるの?」
「あっちにいいホテルがあるよ。」
「ホテルまで連れて行こうか。」
きたきたきたきた。
エチオピアでは勝手にホテルに案内するガイドがいるというのを聞いていた。
「もう決めてるから!」と強い口調で言って彼らをかわすように小走りで逃げる。
「宿まで案内するよ」と言う彼らはホテルの関係者ではない。
ホテル側と提携しているわけでもホテルから頼まれているわけでもなく、適当にその辺の宿に連れて行って、案内代を受け取るらしい。
たとえば自力でホテルにたどり着けば通常の宿泊料で泊まることができるけど、案内係といっしょに行けば上乗せされた宿泊料を請求されて、その上乗せ分が彼らに渡されるらしい。
エジプトで知り合った旅人カップルのだいごろくんときっこちゃんが先にゴンダールを旅していて、お勧めのホテルを教えてもらっていた。
だからわたしたちは自力でそのホテルを目指す。
小走りに移動してる間も「ハロー? ハワユー?」と親しく声をかけてくる人がいる。
適当に挨拶すると「ホテルは?」と切り出してくる。
誰とも目を合わせないようにして、大通りへ。
「あ、ここかも!」
わたしたちがそのホテルの前で足を止めると、脇からさっとわたしたちを追い抜いてこっちをちらりと見てホテルへ入っていった男がいた。
看板でそのホテル名を確認するとお目当てのホテルじゃないことが判明したので、わたしたちはまた次のホテルへ歩き出した。
「あ、ここじゃない?
ほら。」
わたしたちが看板を確認して中に入ろうとしたら、入口に青年がいて「ウェルカム」と言ってわたしたちを中へ案内した。
ホテルのスタッフだろう。
レセプションには愛想のいいおばちゃんがいた。
おばちゃんと数人のスタッフに向かって「部屋ありますか?」と聞いた。
するとさっきの青年が早口でわたしたちに聞く。
「どんな部屋がいい?
部屋はふたつ?
それともいっしょの部屋?」
「いっしょの部屋でいい。」
するとその青年はおばちゃんや他のスタッフに向かって現地語でわたしたちの意向を伝える。
スタッフの中には英語をしゃべれる人がいるのに、青年がわざわざ間に立って通訳をする。
なんでわざわざそんなことするのかな。
「とりあえず部屋を見せてくれませんか?」
そう言うと、また青年がスタッフたちにそのことを伝えてみんなで部屋に案内してくれた。
わたしたちを3階の部屋まで案内してくれたのは、その青年とほかのスタッフ数人。
案内するのはひとりでいいんだけど・・・。
だいごろくんときっこちゃんからはあらかじめホテルの写真を送ってもらっていて、ふたりで100ブル(約550円)と聞いていた。
案内してくれた部屋はだいごろくんたちが送ってくれた写真と同じだった。
とりあえず聞いてみた。
「ここいくらですか?」
青年が言った。
「150ブル。」
「え!?150?
高いよ。」
「いや、高くないよ。」
青年は150ブルが妥当な値段であることを早口で主張しつづける。
青年とわたしたちのやりとりを他のスタッフたちが見つめる。
だうごろくんたちからスタッフはいい人ばかりだと聞いていた。
数日前に泊まっていた2人が100ブルなのに150ブルっておかしい!
それにわたしたちはガイドを連れてきていない。
いや。
もしかして・・・連れてきているかもしれない。
「フーアーユ!?」
青年に向かって聞いてみた。
青年が一瞬止まった。
でもすぐに150ブルがリーズナブルな値段であるという主張を続ける。
「フーアーユ!?」
青年が目をそらす。
「フーアーユ!?
あなたはホテルのスタッフなの?」
青年は答えない。
腕をつかんで聞いているのに答えてくれない。
だから青年の後ろでわたしたちのやり取りを見守っていたほかのスタッフに聞いた。
「ねえ!
この人、誰?
ホテルのスタッフ?」
スタッフたちがいっせいに青年を見つめた。
青年は気まずそうな顔をしている。
スタッフたちが言った。
「この人は、あなたたちのガイドでしょ?」
え?
「いや、違うよ。
わたしたちはこの人のこと知らない。
ホテルに一緒に入ってきただけだよ。
友だちからこのホテルのことを聞いていて最初から泊まるつもりだったもん。
この人と話したのはさっきがはじめて。」
「あなたたちのガイドじゃないの?」
「うん。
数日前に日本人のカップルが泊まってたでしょ。
部屋は100ブルって聞いたけど。」
「そうだったの!?
ガイドじゃないのね。
100ブルでいいよ!」
青年はまったくの部外者でただホテルの入口でわたしたちを待ち構え、わたしたちにはさもホテルスタッフであるかのように振る舞い、ホテルスタッフに対してはさも自分が旅行者を捕まえてこのホテルまで案内したかのように振る舞っていたのだった。
彼の正体はエチオピアに多い「いつのまにかガイド」だったのだ。
正体がばれてしまった彼は、すでに姿を消していた。
「いつのまにかガイド」に気をつけなきゃ!!
わたしたちが泊まったホテルは3階建てのビルの2階と3階部分にあるEnana Wubet Bed Room。
トイレ・シャワーは共同だけど清潔だし温かいお湯が出る。
1階で食堂も経営している。

食堂に行くとさっそく常連客がエチオピアの国民食インジェラを食べていた。
インジェラは銀色の大きなお盆に盛られてくる。
それをみんなで囲んで手を使って食べる。

インジェラとは「テフ」と呼ばれるイネ科の穀物を粉にしてクレープ状にしているものでエチオピアの主食。
そのうえにおかずがのせてあって、インジェラで巻いたりちぎっていっしょに食べたりする。

このインジェラが旅行者には不評!
「ゲロのような味」とか「雑巾を食べてる気分」なんて酷評されることもある。
で、実際はと言うと・・・。
けっしてゲロや雑巾ではない。
でもおいしくはない。
見た目はクレープのようでガレットのようでそこそこおいしそうだけど、クレープよりも厚みがあってもさもさしている。
そして酸っぱい!
エチオピア人にとってはこの酸っぱさがいいらしいんだけど、発酵させすぎていておかずのうまみを打ち消すくらい酸っぱくて個性が強すぎる。
カビが生えたパンのような匂いもする。
「ゲロ」や「雑巾」は言い過ぎだけど、毎食これを食べるのは嫌だなあ。
でも、逃げ道はある。
何も言わなければインジェラが来るんだけど、店によっては「インジェラじゃなくてパンにしてください」とお願いすると同じ値段でパンと変えてくれる。

上の写真でパンに付け合わせてあるのはシロとよばれる豆を挽いてペースト状にしたもの。
このシロもエチオピア人は好き。
唐辛子が入っていてマッシュドポテトをちょっと辛くしたような味。
これとパンやインジェラだけを食べるけど、わたしたちにとっては物足りないし口の中の水分がもっていかれる。
シロはいまいちだけどティブスと言われるぶつ切り肉の炒め物はおいしい。
主食のインジェラはおいしくないけど、エチオピアのおかずはおいしい。
「濃い味付けでご飯が進む」って言いたいところだけどあいにくご飯じゃなくてインジェラかパン。
これがご飯だったらなあ・・・。
エチオピアのおかずはビールも進む。

エチオピア人は豆が大好き。
路上で揚げていたサモサを買ったら中からぎっしり詰まった豆が出てきた。
ひとつ3ブル(約16円)。
揚げたてでサクッとしておいしいし、豆はお腹にたまるので小腹がすいたときにちょうどいい。

「エチオピア料理はマズい」と言われることもあるけれど、けっしてそんなことはないと思う。
たしかに毎食インジェラってのは嫌だけどおかずのレパートリーは多い。
海はないけど川や湖があるので魚は取れる。
数は少ないけど魚料理を出すお店も探せばある。

エチオピア人は食にこだわっていると確信したのがこの料理。
注文すると、炭を入れた小さな七輪のようなものがテーブルに運ばれてくる。
おしぼりのように巻かれたものはインジェラ。

「あつあつのままおいしくいただきたい」
そんな食へのこだわりがあるからこそ生まれた定番メニューだと思う。

エチオピア料理を知ることになった最初の街、ゴンダール。
料理だけじゃなく街歩きも楽しんでみましょ ♪
ゴンダールは標高2300メートルほどある。
お隣の国スーダンはあんなに暑かったのに、山の多いエチオピアは涼しい場所が多い。
スーダンでは酷暑のなかを一日過ごすだけで大変だったのに、ここはなんて快適。

大通りは栄えているけれど、一歩脇道に入ればのどかな山村の風景。
ちょうどいい街の規模。
だからからか「ゴンダールよかった!」って旅人も多い。
「エチオピア南部に比べて人もマイルドで優しい」なんて言う人も多いけど、うーん、真相はどうだろう。

歩道では家畜のヤギのお散歩中?
いや、手にニワトリを持っているところをみると市場でニワトリとともに買って来たのかな。
これから家でごちそうにするのかも。

人間にとってヤギの肉がごちそうなら、犬だってヤギの肉がお好き?
耳が残っている頭部をワイルドにガリガリ。
人間のおこぼれにあずかっている。

新しい国に来てやるべきことがある。
それは携帯電話のSIMカードを買うこと。
どんな種類があるのか、いくらくらいで買えるのか、きのうホテルの近くの携帯電話屋さんのお兄さんに聞いていた。
エチオピアには観光客を騙す人もいるかもしれないけど、ほとんどの人は面倒見が良くて優しい。
だからわからないことや聞きたいこと、頼みたいことがあれば優しそうな人を探して聞くことにしている。
きのうも携帯電話屋さんのお兄さんに聞いたら丁寧に英語で説明してくれた。
あいにくSIMカードは携帯電話屋さんじゃなくて、街の中心にある専用のお店で買わないといけないらしい。
SIMカードを買いにお店を探していると、若者が寄ってくる。
「どうしたの?
SIMカードを買うならあの店がいいから連れて行ってやるよ。」
「俺の親戚がやってる店があっちにあるんだ。」
みんな同じ方角を指す。
でも案内してもらうわけにはいかない。
英語で向こうからしゃべりかけてくるのがなんとなくあやしいし、また「いつのまにかガイド」で最終的に「案内してあげたからお金ちょうだい」なんて言われかねない。
ここは自力で行かなきゃ。
わたしたちが彼らを振り切って歩いていても、2人くらいついてくる。
「SIMカードの店はあそこだよ。」
「自分たちで行けるから大丈夫。」
わたしたちは看板を見つけて商店にたどり着いた。
その商店では店主のおやじと客の若者が話していた。
「SIMカードください。
インターネットもできるヤツがいいです。」
「パスポートのコピー持ってる?」
客の若者が聞いてきた。
わたしたちは仲良くなった携帯屋さんのお兄さんにSIMカードを買うときはパスポートのコピーが必要だと聞いていたので用意していた。
若者が続けた。
「インターネットもできるSIMカードは150ブルだよ。」
150ブルというのも携帯屋さんが言ってた金額と同じ。
「うん、その150ブルのをください。」
おやじが店の奥からSIMカードをもってきてわたしたちは200ブル渡し、おやじから50ブルのお釣りをもらった。
「これでインターネットもできるんですよね!」
「SIMカードを中に入れればできるよ。」
わたしたちの携帯電話は小型のスマートフォン。
SIMカードを小さく切らないと入らない。
「すぐそこでカットできるから。」と若者が言ってカットできる場所に案内してくれた。
歩いているとさっきわたしたちを店に連れて行こうとしていた人たちがその若者に何やら話しかけている。
顔見知りのようでいろいろとわたしたちのことを聞いているみたいだった。
そのうちのひとりがわたしに聞いた。
「彼はいいヤツか?」
「うん。」
わたしが答えると親指を立ててニヤリとした。
若者はわたしたちをすぐ近くの店に連れて行き「ここでカットできるよ。」と言った。
そして「カット代20ブル(約110円)。」と言った。
20ブル?
ただホッチキスみたいなのでパチンとカットするだけなのに。
日本じゃタダでやってくれるのに。
20ブル払うくらいなら自分でハサミでカットするほうがいい。
「高すぎるよ!
この店ではやらない。」
「高い!?」
いままであんなに優しく教えてくれてたのに若者はわたしたちの「高い」という言葉を聞いてすっといなくなった。
若者はいろいろと教えてくれていたけど、SIMカードのカット代を高く請求しているし、バイバイも何も言わずに逃げていくようにわたしたちから離れていった。
なんかちょっと違和感を感じた。
わたしたちはホテル近くの仲良くなった携帯屋のお兄さんにさっそくSIMカードとインターネットの使い方を聞くことにした。
でも、お兄さんの店は閉まっていた。
仕方なく、ほかの携帯電話屋さんで聞くことにした。
「英語話せますか?」
「もちろん。
何か困ってるの?
手伝うことがあれば。」
その人は紳士的な対応をしてくれた。
でもSIMカードを入れてもインターネットが使えない。
わたしたちはさっきから不安になっていることを彼に言ってみた。
「実はこれインターネットできるって聞いて150ブルで買ったんですけど、もしかしたらインターネットが使えないいちばん安いSIMカードを渡されたのかもしれないって不安なんですけど。」
「でも150ブルで買ったんでしょ。
だったらインターネット使えるよ。」
すると男性はそばにいた知り合いといっしょにわたしたちにこんなことを説明した。
エチオピアではSIMカードを買って使えるようにするには、技術者に設定をやってもらわないといけないこと。
素人が設定することはできないこと。
自分がその技術者で、技術料80ブル(440円)を支払えば使えるように設定してあげること。
わざわざSIMカードと電話を技術者に渡して携帯を操作してもらって使えるようにしてもらうなんて聞いたことなかった。
でも現にインターネットが使えないので、ちょっと高いけど頼むしかなかった。
「80ブルは高い気がします。」
「じゃあ50ブルでいいよ。」
その男性はわたしたちの携帯を分解するでもなくただ液晶をタッチしながら何か設定した。
5分くらいいじって男性が言った。
「はい、これでできたよ。」
でも渡された携帯電話はインターネットが使えないし、さっきといっしょだった。
「これで本当に使えるんですかね?」
男性はそばにいた知り合いといっしょにわたしたちに説明した。
「あと30分したら使えるようになるよ。
いま起動中だから。」
「そうなんですね!
ありがとうございます。」
「50ブルね。
それと・・・いま起動中だけど、もしまだ作業が終わらないうちに自分で触ってしまったら作業が中断されるから注意してね。
そしたらインターネットは使えないままになるから。」
「わかりました。
30分間触らないといいんですね。」
答えてから、ちょっと考え直した。
なんかそれってリスクがない?
いま50ブル払ってこのまま携帯を持ち帰っても、もし何かの拍子に触れたら台無しってことだよね。
「ちょっと心配なのであと30分ここに置いておきます。
作業が終了したくらいに戻ってきますので預かっておいてください。
そのときに50ブルも払いますので。」
男性とその知り合いは、2人で目を合わせ苦笑いした。
わたしたちは30分以上経って、もういちどその店に行ってみた。
インターネットは使えないままだった。
「ちょっと、できないんだよね。
理由はわからないけど。
だから50ブルは払わなくていいや。」
なにそれ?
さっき50ブル払ってそのまま持ち帰っていたらインターネットができないままだったんじゃないか。
それに文句を言いにここにきても「あなたが途中で触ったから作業が失敗した」って責任逃れされたんじゃないか。
こいつらもしかして最初から騙す気だったんじゃないか。
そもそもお金を払って電話を使えるように設定してもらうなんてヘンな話じゃないか。
エチオピア人、信用ならない・・・。
でも幻滅してばかりではダメだ。
きっといいエチオピア人もいる。
わたしたちはきのう仲良くなった携帯電話屋さんにもう一度行ってみることにした。
さっきは店が閉まっていたけど、開いている!
お兄さんがいた。
「どうしたの?」
「このSIMカードを買ったんだけど、インターネットができないんだよね。」
「見せて?」
わたしたちはSIMカードを見せた。
お兄さんは言った。
「騙されてるよ!
これインターネットができないSIMカードだよ。
150ブルじゃなくて30ブルだよ!」
「ああ〜、やっぱり・・・。」
違う人たちから2回騙されたことを悟った。
1度はSIMカードを売りつけられたとき。
2度目はインターネットが使えるように設定してあげると言われたとき。
「どこで買ったの?」
「交差点を下ったところにあった小さな商店で・・・。」
「あー。
その店はダメな店だよ。」
「今からその店に行って抗議してきます。」
「うん、行っておいで!」
いら立ち、興奮しながらSIMカードを買った店に行った。
青いほったて小屋の中におじさんはいた。

ずんずんずんと店に近づき、おじさんに抗議した。
「これ、インターネットできないSIMカードでしょ!
どうして30ブルなのに150ブルで買わせたの!」
おじさんはヤバいというような顔をしたけど、また取り繕って平然と言った。
「だってあんたたちガイドを連れてきたでしょ。
ガイドを連れてきたら高くなるんだよ。
ガイドの斡旋料が含まれていたんじゃない?」
「ガイド!?
誰それ!?」
「さっきそこにいた若者だよ。」
ここでも「いつのまにかガイド」か・・・。
でもあいつ「ガイド」じゃなくてわたしたちがここに来たときから店の前にいておじさんと話していた。
あいつとおじさんは結託してわたしたちを騙したのだった。
「あんなのガイドでも何でもない。
あなたの知り合いでしょ。
ここでいっしょに話してたでしょ。」
「いやあ、あの若者は知らないなあ。
君たちが連れてきたでしょ。」
「連れてきてないよ!
しかも150ブルはガイドに渡したんじゃない。
あなたに直接渡して、あなたがそれをそのまま受け取ったでしょ!
わたしたちが『これでインターネットできる?』って聞いたら『うん』って言ってたよね?」
いま考えるとその辺にたむろしていた若者たちは、SIMカードを探していたわたしたちをみんなこの店に連れて行きたがっていた。
きっとおじさんはどうしようもない若者たちと手を組んで、これまでも詐欺をやってきたのだと思う。
「あんた若者ギャングのボスだよ!
そんなことしてどうするの!?」
強い口調で問いつめるとおじさんは最初「100ブル返すから」と言ったけど、結局正規料金は30ブルなので120ブルを取り返した。
なんかものすごく疲れた。
エチオピア、かなり大変だ。
こんなときこそエチオピア人に癒やされたくて、わたしたちはホテル近くのあの優しいお兄さんがやっている携帯電話屋さんに行った。
「SIMカードの代金、取り返すことができました。
ありがとう!」
「取り返せたの?
お〜、よかったねえ!!」
お兄さんはニコニコと笑って握手してくれた。
悪い人もいれば、いい人もいる。
大変だし気を緩められないけど、そんなのも含めてエチオピアは刺激的でおもしろいのかもしれない。
なんか自分が試されている気がする。
だからこそ、この国を楽しんでいけるようにしよう。
通りを歩いていたら、男の子たちが集まり盛り上がっている場所があった。


サッカーのゲームに興じていた。
「ハロー!
ジャパニーズ!
いっしょにやらない?」
みんな元気で明るくてかわいい!

おじいちゃんに手を引かれた女の子。
チラチラと後ろを振り返る。
かわいいね。


こっちにもお母さんに手を引かれた女の子。
おしゃれしてるね。


「いつのまにかガイド」に振り回される国だけど、でもなんかこの国を好きになりはじめている自分がいる。