フランス「モンサンミッシェル」☆☆ 島内の実態は
ドミトリーのベッドの上でひとりでビール飲みながらクチャクチャいわせてつまみを食べたり、平気でゲップを何度もやってる夫にストレスをためている妻のイクエです。
いつからこんなに「オヤジ化」したんでしょう。
注意すると「しょうがない。」とか「誰も気にせん。」とか反論するけど、そんなことを言うことがもうオヤジの証だ。
あ! いま横を見たら、今度は手をつっこんで尻をかいてる!
家族とのフランス旅行。
パリでのんびり、という案もあったけれど、「ぜひ行きたい」とおかあが言っているモンサンミッシェルに足をのばすことにした。
モンサンミッシェルは孤島の上に立つ修道院。
世界遺産にもなっている。

パリからモンサンミッシェルまではけっこう遠い。
日本の新幹線にあたるTGVで最寄りのレンヌを目指す。
4歳の甥っ子はフランスの観光よりもたくさんの乗り物に乗ることが一番の楽しみ。

日本の新幹線の運賃が高いように、TGVの運賃も高い。
ネットで早めに買うと少しは安くなるみたいだけど、大人4人子ども2人の往復でお値段なんと580ユーロ!
バックパッカーのみなさん、フランスは国内移動費が高いので要注意ですよ!
甥っ子は、日本から持ってきているミニカーセットで遊びながら新幹線の車窓を楽しむという、彼にとってはとても贅沢な時間を過ごしている。

どうして男の子はこんなに乗り物が好きなの?
わたしも姉も、姪っ子も乗り物なんて興味なかったけどなあ。
男には、原始時代に狩猟をしていたDNAが受け継がれていて、大きな動くものに興奮するのかな。
そんな甥っ子もさすがに2時間は長いと感じたのか、退屈になったようす。
足元になにか気配を感じると思ったら・・・。

後ろの座席に座っていた甥っ子が床に寝そべってこっちまで侵入してきている!
よくこんなところに体が入るもんだねえ。
レンヌの街に到着。
ここから今度はバスに乗り換える。

フランスってちょっと街を離れたらこんなふうに、のどか~な田園風景が続いてるんだよね。
フランスという国を広い目で見てみると、わたしたちがイメージする華やかな部分はほんのわずか。
ほとんどはこんなふうに北海道みたいなのどかなところに、小さな街がぽつんぽつんとあって、そこで人びとが慎ましく暮らしているんだよね。
熊本の田舎育ちの甥っ子は、こののどかな風景を目の前にしてこう言った。
「ばあちゃん、ここ熊本!?」。
いや、わかるよ。
その気持ち。
ずっと緑が広がって、車も少ないし、お店もないし。
でも、ほら。
よく見ると街の様子が熊本とは違うでしょ。


ガイドブックには載っていない街も、建物や街並みがいちいちかわいいんだよね。
「ちょっと1泊くらいして街歩きしたいな」
そんなふうに思える街がいくつもある。

「ヨーロッパはどこも似てるから、飽きるよ」
そんなことをいう人もいた。
だけど、隣り合うイタリアとフランスを旅して、こんなにも家や街の様子が違うのかってびっくりした。
すがすがしくってメルヘンな気分にさせてくれる車窓を見ていたら、あっという間にモンサンミッシェルの入口に到着。
ほら、おなじみのあの姿そのままの島が見えてきた!!

島へは橋のような道が続いている。
シャトルバスに乗り変えて行くこともできるし、もちろん歩いて行くこともできる。
「ちょっとそこで写真撮ってからバスにのろう」

歩いていたら、結局バス停を通り越してしまった。
「けっこう遠かね。」
「荷物重いけど、がんばろう。」

「でも、この歩いて行くってのがいいとよ。
どんどん島が近くなっていって『モンサンミッシェルに入っていくぞー』って気持ちが高まっていくし、バスでそのまま行ってたら味気ない。」

そう言い聞かせながら歩く。
シャトルバスに乗っていたら、あの城壁の下まで行けたのにね。

ようやく島に到着!
姉が見つけて予約してくれていたホテルがここ。
「Le Mouton Blanc」

小さい島の大部分の敷地を修道院が占めていて、モンサンミッシェルのホテル数は限られている。
そんな場所に観光客が集結するからホテルは予約でいっぱいになるだろうし、高いだろうと思っていた。
だけど年末年始といっても、寒いこの季節はヨーロッパではオフシーズンだからかそんなに高くない。
朝食付きでダブルで1万円くらいだったかな。

おかあと姉と姪っ子甥っ子は別の部屋でロフトまであったけど、こちらも高くなかった。
イクエとケンゾーはいつもは節約旅だけど、今回は割り切っている。
みんなとの家族旅行だし、お正月だし、ある程度のお金を使ってみんなで楽しい旅をしたい。
だから、今回の旅は金銭感覚がこれまでと違う。
バックパッカーのみなさんには、参考にならないかも。
さて、重い荷物をホテルに置いてさっそく修道院へ。
島はけっこう険しい山のようになっていて、修道院までの細い路地に限られた建物が並んでいる。

昔、新婚旅行でここに来た会社の先輩がこんなことを言っていたのを思い出す。
「モンサンミッシェルってさ、外から見ると神聖な感じで雰囲気あるんだけど、島の中に入ったらガッカリしたよ。
駐車場にはツアーバスがいっぱいだし、島の中はお土産屋さんがひしめきあっている。」
たしかに、ね。

修道院以外のほとんどの建物がお土産屋さんかレストランかホテル。
日本人の観光客も多くて、お土産屋さんにも日本語表記の看板が目立つ。
浅草寺の参道みたいな感じかな。
でも、今はシーズンオフ。
暖かい季節だとこの細い道にうじゃあって人が集まって歩くのも大変らしいよ。
去年のお正月に家族と行った台湾の九份みたいになるんだろうな。
あそこもお土産屋さんと人の多さでイメージと全然違ったからな。
その狭い目抜き通りを5分くらい歩くと、木の上のほうに見えてきた!

今は島だけど、ここは昔は陸続きで森の中にそびえる山だったんだって。
だけど津波が飲み込んで、この部分だけ陸と切り離されて島になったのだそう。
こうやって上っていくと昔は山だったと言うのがちょっとだけ想像できる。

こんな場所に修道院が建てられることになったのは8世紀。
司教の聖オベールの夢の中に大天使のサン・ミッシェルが現れて「ここに修道院を建てよ」と言ったのだそう。
礼拝堂を建てて、966年に現在の修道院の建設が本格的に始まった。
数世紀にわたって増改築がされたからロマネスクやゴシックなどさまざまな時代の建築様式がまざりあっている。

島のもっとも高い位置に建つ修道院。
修道院のテラスからは陸から島へと続く道がよく見える。

モンサンミッシェルは潮の満ち引きが激しく、干潮のときは一帯が陸続きに見えるし満潮のときは海で覆われる。
だけど駐車場をつくったり大型のバスも通れる道を建設したりしたせいで、土砂が堆積して「孤島」とは呼べない姿になってきているんだって。
だから現在、駐車場を廃止し砂をかき出す工事をしている。
一番のポイントはあらたな道をつくること。
上の写真の右側が今使われている道。
真ん中のが新しい橋。
ちなみに建設中の道を横から見るとこんな風に見える。
これまでの道は土を盛ってつくった道路だけど、新しいのは潮の流れを妨げないような「橋」になっている。

昔は干潮のときにだけ道ができて、満潮のときは船で渡っていたんだって。
とくにここは干潮の差が激しくて、驚く速さで潮が満ちていくから多くの巡礼者たちが水にのまれて命を落としたのだそう。

ちょうど満潮を迎えようとしている。
おかあが言う。
「やっぱり、モンサンミッシェルは満潮よりも干潮がいいんだね!
干潟の模様がいい。」
「海に浮かぶ孤島」という姿のほうが趣があるように思うんだけど、おかあによると実は干潮のときに現れるこの島のまわりの干潟こそが美しいと言われてるんだって。
たしかに水がいろんな方角からやってきて形成しているこの干潟は、なぜか美しい。
複雑な模様をつくりだしている。
ちょうど潮が満ちようとしているときだから、風に揺れてできる波紋も幻想的。

陸なのか、海なのか。
幾重にも川が交わっているような不思議な場所を夕陽が照らす。

重たく冷たい印象のある修道院もピンクに染まる。

いつまでも見ていたいこの景色に後ろ髪引かれながらも、修道院の内部へ。

ヨーロッパのほかの大きな教会で見られるようなごちゃごちゃとした装飾は一切ない。
だからこそ迫力がある。
高い天井、いくつもの石造りの柱、細長い窓から差し込むやわらかな光。
それだけでじゅうぶん。
ステンドグラスのデザインも落ちついた色合いの幾何学模様でとてもシンプル。
これが、孤島の修道院には似合う。

教会を出て、最上階の中庭へ。
中庭を取り囲む回廊は13世紀につくられたもの。

わざとずらして並べている2列の柱。
歩くたびに柱が重なって見えたり、間隔が開いて見えたり。
この回廊を歩きながら、修道士たちは瞑想をしていたのだそう。

こんなちょっとしたトリックがモンサンミッシェルには取り入れられている。
たとえば修道士の大食堂。

窓は正面に細いのが2つあるだけで、あとは石の壁と柱。
でも、それにしては明るい。
なぜなら・・・。

正面からは見えないようになっているけど、壁にはすべて窓が取り付けられている。
こうすることでブラインドみたいに差し込む光を遮って眩しくないようにしたのかも。
ちなみに修道士たちはここで食事をとるときは、代表者の読経に耳を傾けながら黙って食べていたんだって。
食堂には一段高いところに読経者用の席も設けられていた。
このモンサンミッシェル、18世紀には牢獄として使われるようになった。
政治犯や反体制派の人たちがここに投獄されたんだって。
島だから脱出も難しいし、石造りの頑丈な建物だから人を閉じ込めるにはちょうどいいと考えたのだろうか。

4歳の甥っ子は「ここ、怖い。イヤだ。」って言っている。
たしかに薄暗くて圧迫感がある。

かつての遺体安置所もあって、観光客がいるからいいけど1人で歩くには怖い。
それでも、暖炉のあった迎賓の間なんかもあって王様なんかが訪れたときは華やかに迎えてたんだろうけどね。

修道院も見たことだし、ホテルへと戻ろう。
修道院だけじゃなくて、へばりつくように建っている小さな家々も雰囲気があっていい。

階段を下っていく。
なんか、さっきよりもだいぶ潮が満ちてきているような・・・。

モンサンミッシェルは日帰り客が多いので、修道院が閉まる時間になると一気に島から人の姿がなくなる。
静かな島。
人通りの少ない石畳。
これぞ本来のモンサンミッシェル。
そんな雰囲気を味わいたいかたには、宿泊することをお勧めします。

ホテルのレストランでフランス料理に舌鼓。
「おいしい〜!!」と言いながら食べている大人たち。
さっき修道院を怖がっていた甥っ子は、レストランの席で座ったまま眠りはじめた。
目をつぶったままだけど、おかあが口元にごはんをもっていけば口だけを動かして食べるという器用なことをやってのける。

子どもらしいかわいい姿。
だっこされて部屋に連れて行かれたら、子どもらしい姿ではなく完全なオヤジの姿になった。

ケンゾーもそうだけど、寝ているときにズボンに手を入れるというのは人間の習性なんだろうか。
部屋の窓からはライトアップされた修道院。

小学2年生の姪っ子は、眠るのにはちょっと早い時間。
「ライトアップされた島を見に行ってみようか。」

昼はあんなににぎやかだったのに、お店は閉まっていてガラーンとしている。
ちょっと怖いくらい。
昔はもっと暗くて何もなくて怖かったんだろうあ。
島の外の道のところから、島全体を見てみよう。
そう思って島の出入り口に行ってみてビックリ!!
「ええ〜っ! なにこれ!!」
「出られんようになっとる。
いつのまに!?」

門のところから海が押し寄せてきている。
満潮だ。
気づいたら島は海に覆われていた。
水位よりも少しだけ高いところにある別の裏口を見つけて、島の外へ。


人がいない静かな夜のほうが幻想的。
石畳の通りも独占できるしね。

そして迎えた朝。
朝もまた、違う表情を見せてくれる。

あいにくの曇り空で朝日は見えなかったけど、霧に包まれたモンサンミッシェルもなかなか。

さて、孤島にそびえる巡礼の地「モンサンミッシェル」。
「星いくつ?」
「星、2つ!」
これまで見てきた写真そのままの姿。
海と干潟と島と修道院。
この4つが織りなす空間はここでしか見られない独特のもの。
残念なのはお土産屋さんが多いし、狭い島に観光客が大勢大挙するから「幻想的」「おごそか」というにはほど遠いこと。
だから、その雰囲気を味わいたい人は人が少ない冬のシーズンオフをねらったり島内に宿泊することをお勧めします。
人がいなくなる夕方に島に到着して1泊。
その日は幻想的な雰囲気を楽しんで、次の日は修道院を観光してお土産屋さん巡りをするっていうプランが一番いいかも。
1日滞在すれば干潮も満潮も見られるだろうし。
現在「なるべく昔の姿に戻そう」ということで、島へ通じる道を作り直したり埋め立て地を壊したりしているので、将来のモンサンミッシェルにご期待ください。
いつからこんなに「オヤジ化」したんでしょう。
注意すると「しょうがない。」とか「誰も気にせん。」とか反論するけど、そんなことを言うことがもうオヤジの証だ。
あ! いま横を見たら、今度は手をつっこんで尻をかいてる!
家族とのフランス旅行。
パリでのんびり、という案もあったけれど、「ぜひ行きたい」とおかあが言っているモンサンミッシェルに足をのばすことにした。
モンサンミッシェルは孤島の上に立つ修道院。
世界遺産にもなっている。

パリからモンサンミッシェルまではけっこう遠い。
日本の新幹線にあたるTGVで最寄りのレンヌを目指す。
4歳の甥っ子はフランスの観光よりもたくさんの乗り物に乗ることが一番の楽しみ。

日本の新幹線の運賃が高いように、TGVの運賃も高い。
ネットで早めに買うと少しは安くなるみたいだけど、大人4人子ども2人の往復でお値段なんと580ユーロ!
バックパッカーのみなさん、フランスは国内移動費が高いので要注意ですよ!
甥っ子は、日本から持ってきているミニカーセットで遊びながら新幹線の車窓を楽しむという、彼にとってはとても贅沢な時間を過ごしている。

どうして男の子はこんなに乗り物が好きなの?
わたしも姉も、姪っ子も乗り物なんて興味なかったけどなあ。
男には、原始時代に狩猟をしていたDNAが受け継がれていて、大きな動くものに興奮するのかな。
そんな甥っ子もさすがに2時間は長いと感じたのか、退屈になったようす。
足元になにか気配を感じると思ったら・・・。

後ろの座席に座っていた甥っ子が床に寝そべってこっちまで侵入してきている!
よくこんなところに体が入るもんだねえ。
レンヌの街に到着。
ここから今度はバスに乗り換える。

フランスってちょっと街を離れたらこんなふうに、のどか~な田園風景が続いてるんだよね。
フランスという国を広い目で見てみると、わたしたちがイメージする華やかな部分はほんのわずか。
ほとんどはこんなふうに北海道みたいなのどかなところに、小さな街がぽつんぽつんとあって、そこで人びとが慎ましく暮らしているんだよね。
熊本の田舎育ちの甥っ子は、こののどかな風景を目の前にしてこう言った。
「ばあちゃん、ここ熊本!?」。
いや、わかるよ。
その気持ち。
ずっと緑が広がって、車も少ないし、お店もないし。
でも、ほら。
よく見ると街の様子が熊本とは違うでしょ。


ガイドブックには載っていない街も、建物や街並みがいちいちかわいいんだよね。
「ちょっと1泊くらいして街歩きしたいな」
そんなふうに思える街がいくつもある。

「ヨーロッパはどこも似てるから、飽きるよ」
そんなことをいう人もいた。
だけど、隣り合うイタリアとフランスを旅して、こんなにも家や街の様子が違うのかってびっくりした。
すがすがしくってメルヘンな気分にさせてくれる車窓を見ていたら、あっという間にモンサンミッシェルの入口に到着。
ほら、おなじみのあの姿そのままの島が見えてきた!!

島へは橋のような道が続いている。
シャトルバスに乗り変えて行くこともできるし、もちろん歩いて行くこともできる。
「ちょっとそこで写真撮ってからバスにのろう」

歩いていたら、結局バス停を通り越してしまった。
「けっこう遠かね。」
「荷物重いけど、がんばろう。」

「でも、この歩いて行くってのがいいとよ。
どんどん島が近くなっていって『モンサンミッシェルに入っていくぞー』って気持ちが高まっていくし、バスでそのまま行ってたら味気ない。」

そう言い聞かせながら歩く。
シャトルバスに乗っていたら、あの城壁の下まで行けたのにね。

ようやく島に到着!
姉が見つけて予約してくれていたホテルがここ。
「Le Mouton Blanc」

小さい島の大部分の敷地を修道院が占めていて、モンサンミッシェルのホテル数は限られている。
そんな場所に観光客が集結するからホテルは予約でいっぱいになるだろうし、高いだろうと思っていた。
だけど年末年始といっても、寒いこの季節はヨーロッパではオフシーズンだからかそんなに高くない。
朝食付きでダブルで1万円くらいだったかな。

おかあと姉と姪っ子甥っ子は別の部屋でロフトまであったけど、こちらも高くなかった。
イクエとケンゾーはいつもは節約旅だけど、今回は割り切っている。
みんなとの家族旅行だし、お正月だし、ある程度のお金を使ってみんなで楽しい旅をしたい。
だから、今回の旅は金銭感覚がこれまでと違う。
バックパッカーのみなさんには、参考にならないかも。
さて、重い荷物をホテルに置いてさっそく修道院へ。
島はけっこう険しい山のようになっていて、修道院までの細い路地に限られた建物が並んでいる。

昔、新婚旅行でここに来た会社の先輩がこんなことを言っていたのを思い出す。
「モンサンミッシェルってさ、外から見ると神聖な感じで雰囲気あるんだけど、島の中に入ったらガッカリしたよ。
駐車場にはツアーバスがいっぱいだし、島の中はお土産屋さんがひしめきあっている。」
たしかに、ね。

修道院以外のほとんどの建物がお土産屋さんかレストランかホテル。
日本人の観光客も多くて、お土産屋さんにも日本語表記の看板が目立つ。
浅草寺の参道みたいな感じかな。
でも、今はシーズンオフ。
暖かい季節だとこの細い道にうじゃあって人が集まって歩くのも大変らしいよ。
去年のお正月に家族と行った台湾の九份みたいになるんだろうな。
あそこもお土産屋さんと人の多さでイメージと全然違ったからな。
その狭い目抜き通りを5分くらい歩くと、木の上のほうに見えてきた!

今は島だけど、ここは昔は陸続きで森の中にそびえる山だったんだって。
だけど津波が飲み込んで、この部分だけ陸と切り離されて島になったのだそう。
こうやって上っていくと昔は山だったと言うのがちょっとだけ想像できる。

こんな場所に修道院が建てられることになったのは8世紀。
司教の聖オベールの夢の中に大天使のサン・ミッシェルが現れて「ここに修道院を建てよ」と言ったのだそう。
礼拝堂を建てて、966年に現在の修道院の建設が本格的に始まった。
数世紀にわたって増改築がされたからロマネスクやゴシックなどさまざまな時代の建築様式がまざりあっている。

島のもっとも高い位置に建つ修道院。
修道院のテラスからは陸から島へと続く道がよく見える。

モンサンミッシェルは潮の満ち引きが激しく、干潮のときは一帯が陸続きに見えるし満潮のときは海で覆われる。
だけど駐車場をつくったり大型のバスも通れる道を建設したりしたせいで、土砂が堆積して「孤島」とは呼べない姿になってきているんだって。
だから現在、駐車場を廃止し砂をかき出す工事をしている。
一番のポイントはあらたな道をつくること。
上の写真の右側が今使われている道。
真ん中のが新しい橋。
ちなみに建設中の道を横から見るとこんな風に見える。
これまでの道は土を盛ってつくった道路だけど、新しいのは潮の流れを妨げないような「橋」になっている。

昔は干潮のときにだけ道ができて、満潮のときは船で渡っていたんだって。
とくにここは干潮の差が激しくて、驚く速さで潮が満ちていくから多くの巡礼者たちが水にのまれて命を落としたのだそう。

ちょうど満潮を迎えようとしている。
おかあが言う。
「やっぱり、モンサンミッシェルは満潮よりも干潮がいいんだね!
干潟の模様がいい。」
「海に浮かぶ孤島」という姿のほうが趣があるように思うんだけど、おかあによると実は干潮のときに現れるこの島のまわりの干潟こそが美しいと言われてるんだって。
たしかに水がいろんな方角からやってきて形成しているこの干潟は、なぜか美しい。
複雑な模様をつくりだしている。
ちょうど潮が満ちようとしているときだから、風に揺れてできる波紋も幻想的。

陸なのか、海なのか。
幾重にも川が交わっているような不思議な場所を夕陽が照らす。

重たく冷たい印象のある修道院もピンクに染まる。

いつまでも見ていたいこの景色に後ろ髪引かれながらも、修道院の内部へ。

ヨーロッパのほかの大きな教会で見られるようなごちゃごちゃとした装飾は一切ない。
だからこそ迫力がある。
高い天井、いくつもの石造りの柱、細長い窓から差し込むやわらかな光。
それだけでじゅうぶん。
ステンドグラスのデザインも落ちついた色合いの幾何学模様でとてもシンプル。
これが、孤島の修道院には似合う。

教会を出て、最上階の中庭へ。
中庭を取り囲む回廊は13世紀につくられたもの。

わざとずらして並べている2列の柱。
歩くたびに柱が重なって見えたり、間隔が開いて見えたり。
この回廊を歩きながら、修道士たちは瞑想をしていたのだそう。

こんなちょっとしたトリックがモンサンミッシェルには取り入れられている。
たとえば修道士の大食堂。

窓は正面に細いのが2つあるだけで、あとは石の壁と柱。
でも、それにしては明るい。
なぜなら・・・。

正面からは見えないようになっているけど、壁にはすべて窓が取り付けられている。
こうすることでブラインドみたいに差し込む光を遮って眩しくないようにしたのかも。
ちなみに修道士たちはここで食事をとるときは、代表者の読経に耳を傾けながら黙って食べていたんだって。
食堂には一段高いところに読経者用の席も設けられていた。
このモンサンミッシェル、18世紀には牢獄として使われるようになった。
政治犯や反体制派の人たちがここに投獄されたんだって。
島だから脱出も難しいし、石造りの頑丈な建物だから人を閉じ込めるにはちょうどいいと考えたのだろうか。

4歳の甥っ子は「ここ、怖い。イヤだ。」って言っている。
たしかに薄暗くて圧迫感がある。

かつての遺体安置所もあって、観光客がいるからいいけど1人で歩くには怖い。
それでも、暖炉のあった迎賓の間なんかもあって王様なんかが訪れたときは華やかに迎えてたんだろうけどね。

修道院も見たことだし、ホテルへと戻ろう。
修道院だけじゃなくて、へばりつくように建っている小さな家々も雰囲気があっていい。

階段を下っていく。
なんか、さっきよりもだいぶ潮が満ちてきているような・・・。

モンサンミッシェルは日帰り客が多いので、修道院が閉まる時間になると一気に島から人の姿がなくなる。
静かな島。
人通りの少ない石畳。
これぞ本来のモンサンミッシェル。
そんな雰囲気を味わいたいかたには、宿泊することをお勧めします。

ホテルのレストランでフランス料理に舌鼓。
「おいしい〜!!」と言いながら食べている大人たち。
さっき修道院を怖がっていた甥っ子は、レストランの席で座ったまま眠りはじめた。
目をつぶったままだけど、おかあが口元にごはんをもっていけば口だけを動かして食べるという器用なことをやってのける。

子どもらしいかわいい姿。
だっこされて部屋に連れて行かれたら、子どもらしい姿ではなく完全なオヤジの姿になった。

ケンゾーもそうだけど、寝ているときにズボンに手を入れるというのは人間の習性なんだろうか。
部屋の窓からはライトアップされた修道院。

小学2年生の姪っ子は、眠るのにはちょっと早い時間。
「ライトアップされた島を見に行ってみようか。」

昼はあんなににぎやかだったのに、お店は閉まっていてガラーンとしている。
ちょっと怖いくらい。
昔はもっと暗くて何もなくて怖かったんだろうあ。
島の外の道のところから、島全体を見てみよう。
そう思って島の出入り口に行ってみてビックリ!!
「ええ〜っ! なにこれ!!」
「出られんようになっとる。
いつのまに!?」

門のところから海が押し寄せてきている。
満潮だ。
気づいたら島は海に覆われていた。
水位よりも少しだけ高いところにある別の裏口を見つけて、島の外へ。


人がいない静かな夜のほうが幻想的。
石畳の通りも独占できるしね。

そして迎えた朝。
朝もまた、違う表情を見せてくれる。

あいにくの曇り空で朝日は見えなかったけど、霧に包まれたモンサンミッシェルもなかなか。

さて、孤島にそびえる巡礼の地「モンサンミッシェル」。
「星いくつ?」
「星、2つ!」
これまで見てきた写真そのままの姿。
海と干潟と島と修道院。
この4つが織りなす空間はここでしか見られない独特のもの。
残念なのはお土産屋さんが多いし、狭い島に観光客が大勢大挙するから「幻想的」「おごそか」というにはほど遠いこと。
だから、その雰囲気を味わいたい人は人が少ない冬のシーズンオフをねらったり島内に宿泊することをお勧めします。
人がいなくなる夕方に島に到着して1泊。
その日は幻想的な雰囲気を楽しんで、次の日は修道院を観光してお土産屋さん巡りをするっていうプランが一番いいかも。
1日滞在すれば干潮も満潮も見られるだろうし。
現在「なるべく昔の姿に戻そう」ということで、島へ通じる道を作り直したり埋め立て地を壊したりしているので、将来のモンサンミッシェルにご期待ください。