3人で村生活 ロバに乗って散策
まぶしい時、本を読む時、眉間にシワを寄せるのが小さいころからのクセですが、このシワが深くなってきて不安になっているイクエです。
イクエとケンゾー、そしておかあ。
3人でユルタ(遊牧民のテント)に泊まり、朝がやってきた。

イクエとおかあは開放感あふれる洗面台で顔を洗う。

ケンゾーはというと・・・。
まるでミイラのようになって二度寝している。

まぶしいからシーツで顔を覆ってるのかと思ったら、飛び交うハエが煩わしいからなんだって。
ラクダがいるし、あちこちに糞が落ちてるからハエたちがたくさん住んでいる。
でも、そこまでして二度寝したい?
「寝きらん。」「全然寝られんかった。夢ばっかり見よった。」(夢見てたってことは寝とるやん!)なんていつも言いながらどこででも寝られるケンゾーを起こして、みんなで朝ごはん。
きのうの芋焼酎に引き続き、おかあが梅干しをおじさんに見せた。
きのうの芋焼酎で日本の味にこりごりだったはずなのに、果敢にもトライ。
さて、そのお味は?

想像と違った味だったようで、いっきに表情が変わる。
吐き出したそうにしてるけど、優しいおじさんは1本しかない前歯で最後までがんばって口に入れた梅干しをゆっくりかみつぶしていく。

そして頭を抱え込んでしまった。

「ウズベキでは、これは砂糖で漬けるのになんで塩でつけてるの!?」
たしかに、スモモとかアンズを砂糖で漬けたりジャムにしたり。
なんでフルーツにたっぷりの塩を入れてわざわざ酸っぱくするのか理解できないよね。
ごめんね、おじさん。
でも種は気に入ったようで、1時間くらい舐めていた。
きょう目指すのはアスラフという村。
広大な草原のなかにそびえる山の谷間に、ひっそりとその小さな村は存在している。
何もない場所をひたすら走る。

地平線の向こうに、小さな街のようなものが見える。
車が進むたびにその形はゆっくりと変わっていく。
ゆらめている。
あれは街でも建物でもない。
蜃気楼だ!

茶色だった大地にこんもりとした緑が見えてきた。
どうやらあそこがアスラフ村。
隠れたオアシスみたい。

ロバに乗った少年がお出迎え。
今晩の宿泊先の男の子。
「お世話になりま~す。
よろしくね。」

きょうの宿泊先は、もともとここで暮らしている家族が旅行者を泊められるように家を改築したもの。
宿泊者用の簡素な平屋建てが2棟ほどあって、床にマットが敷かれそこで寝るようになっている。
ドイツのNGOと協力して行っているプロジェクトで、外から来た人たちがウズベキスタンの田舎を体験できるという「エコツーリズム」のような感じだ。


敷地には色とりどりの花が咲き誇る。
きのうは乾いた大地に泊まって、色のない世界に包まれていた。
車窓から見えたのは地平線まで続く砂地や茶色い草原。
だから、緑や花がよりいっそう鮮やかに映る。

敷地の中央には、飲めるほどきれいな小川が流れていて、脇には大きな木。
その下にはテーブルや椅子、大人5人が横になれるほどの大きなベンチ。
木陰で食事をしたり、昼間からビールを飲んだり、3人で横になって昼寝したり。
昼間っから最高だね♡

この大きな木、さて何の木でしょう。
リンゴよりもちょっと小ぶりの実をつける。

正解はクルミ。
実をはがすと、中から種が。
この種がわたしたちが知っている「クルミ」。

だから、この種のさらに中身を食べることになる。
収穫したクルミは市場で高値で取り引きされるんだって。
広がりのある枝は木陰を作ってくれて家族に憩いの場を提供してくれるし、実は収入源にもなるから、この木はここになくてはならない存在なんだね。
この家庭には子どもたちがたくさんいる。
控えめだけど人と触れ合うのが好きで、そしてよく家の手伝いをしている。
手伝いをすることに不満をもってはいない様子。
水を汲んだり掃き掃除をしたり落ち葉を拾ったり。
次から次に仕事を見つけてやっている。
手伝うことがあたりまえ、むしろそうやって体を動かすほうが楽しいかのように。
日本の子どもみたいにたくさんのオモチャやゲームなんてないからね。

でもね、一台だけ外にテレビがあるの。
チャンネルを決めるのは年長者なのかな。
テレビはおじいちゃんが独占。
昔の映画を見てる訳じゃないよ、単にモノクロでしか映らないだけ。

この家ではロバやニワトリのほかに牛も飼っている。
日課の乳搾り。

人間だけがミルクをもらうわけにはいかないよね。
子牛もたっぷり召し上がれ。

さて、この家のお兄ちゃんの案内で村の散策に行ってみましょう。
でも実はおかあはあんまり体調が良くない。
サマルカンドでケンゾーが高熱と下痢に襲われて回復したと思ったら今度はおかあが同じ症状に。
熱も39℃まであってようやくきょう平熱に戻ったばっかり。
そんなおかあに心強い(?)助っ人が待ち構えていた。

ロバくんです!
小さな体なのに力持ち。
これならおかあも長い距離を歩かなくても村を散策できるね。

山の向こうにはきのう行ったアイダルクル湖が見える。

この村には20世帯くらいが住んでいるらしい。
そしてみんなロバに乗って移動する。
ロバ同士がすれ違う。
「やあ! こんにちは~」

おかあからイクエに交代。
ロバの乗り心地は思っていた以上にいい♡
ラクダや馬よりも体が小さいから、座った感じがしっくりきてちょうどいい。
しかもすごくかわいいし!
ロバが大好きになってしまった。


大草原の窪みにあるような集落だけど、一応電気が通っている。
それぞれの電柱が素朴というか、自然というか、いびつというか・・・。
味がある。

村を散策すると、そこに住む人たちの生活が見える。
村には小屋のようなこじんまりした小学校があって、イクエたちの宿泊先のお母さんがそこの先生をやっている。
小さな村だけど、子どもも多い。
みんな手を振ってくれる。


ほんとうにロバはかわいくて、すっかりロバの虜になってしまった。
従順で働き者、だけど決して主役にはならないロバ。

白く縁取りされた目元もどこかまぬけで愛らしいけど、このピンと長く立った耳がこんなにも愛嬌のある姿にしているのかも。

そんなかわいいロバだけど、全然かわいくないのがその鳴き声。
ケンゾーはテレビで見たことあるから知ってたらしいけど、イクエとおかあはおったまげたよ!
はあふううん、はあふうん、はあふ〜、んんんががががが、ぐがぐがぐがあああああ〜。
(文字にしにくいけど、ケンゾーいわく「瀬川瑛子の笑い声」)
「え!! なに! なにこの鳴き声!!」
哀愁漂う、なんてものじゃない。
「どうしちゃったの? ストレスたまってるの? 何がそうさせてるの?」って思うくらい、奇妙で、長くて、大きくて、みんなの会話や動きを止めるくらいの鳴き声。
そしてものすごく反響する。
どこにいても聞こえるんだけど、周りの山に反響して鳴き声のあるじがどこにいるのかわからない。
10メートル先にいるのか、50メートル先にいるのか、西のほうにいるのか、東にいるのか。
その場所一帯の空気を揺らす感じ。
小さい体なのにどっからそんな声を出してるの?
この鳴き声を録音したかったんだけど、一日に5回くらいしか鳴かないからそのチャンスをつかむのが難しいのであっさりあきらめた。
ロバがこんなびっくりする声を出すなんて、大発見。
この大発見は人生においてなんの特にもならないし、別に知らなくてもいい。
現に65歳のおかあはロバの鳴き声を知らずになんの不便もなくここまで生きてきた。
だけどね、どうせ死ぬならロバの鳴き声を知って死にたいなって思った。
知ったところでなんにもならないし、どうでもいいことなんだけどね。

「何のために旅をするの?」って聞かれても明確な答えはない。
でも、ふと、そんなことなのかもなって思った。
おなじ生きるなら、ひとつでも多くの景色を見て、食べたことなかった物を食べて、ひとりでも多くの国の人と知り合いたい。
たとえそれが人生に何の利益をもたらさないとしてもね。
イクエとケンゾー、そしておかあ。
3人でユルタ(遊牧民のテント)に泊まり、朝がやってきた。

イクエとおかあは開放感あふれる洗面台で顔を洗う。

ケンゾーはというと・・・。
まるでミイラのようになって二度寝している。

まぶしいからシーツで顔を覆ってるのかと思ったら、飛び交うハエが煩わしいからなんだって。
ラクダがいるし、あちこちに糞が落ちてるからハエたちがたくさん住んでいる。
でも、そこまでして二度寝したい?
「寝きらん。」「全然寝られんかった。夢ばっかり見よった。」(夢見てたってことは寝とるやん!)なんていつも言いながらどこででも寝られるケンゾーを起こして、みんなで朝ごはん。
きのうの芋焼酎に引き続き、おかあが梅干しをおじさんに見せた。
きのうの芋焼酎で日本の味にこりごりだったはずなのに、果敢にもトライ。
さて、そのお味は?

想像と違った味だったようで、いっきに表情が変わる。
吐き出したそうにしてるけど、優しいおじさんは1本しかない前歯で最後までがんばって口に入れた梅干しをゆっくりかみつぶしていく。

そして頭を抱え込んでしまった。

「ウズベキでは、これは砂糖で漬けるのになんで塩でつけてるの!?」
たしかに、スモモとかアンズを砂糖で漬けたりジャムにしたり。
なんでフルーツにたっぷりの塩を入れてわざわざ酸っぱくするのか理解できないよね。
ごめんね、おじさん。
でも種は気に入ったようで、1時間くらい舐めていた。
きょう目指すのはアスラフという村。
広大な草原のなかにそびえる山の谷間に、ひっそりとその小さな村は存在している。
何もない場所をひたすら走る。

地平線の向こうに、小さな街のようなものが見える。
車が進むたびにその形はゆっくりと変わっていく。
ゆらめている。
あれは街でも建物でもない。
蜃気楼だ!

茶色だった大地にこんもりとした緑が見えてきた。
どうやらあそこがアスラフ村。
隠れたオアシスみたい。

ロバに乗った少年がお出迎え。
今晩の宿泊先の男の子。
「お世話になりま~す。
よろしくね。」

きょうの宿泊先は、もともとここで暮らしている家族が旅行者を泊められるように家を改築したもの。
宿泊者用の簡素な平屋建てが2棟ほどあって、床にマットが敷かれそこで寝るようになっている。
ドイツのNGOと協力して行っているプロジェクトで、外から来た人たちがウズベキスタンの田舎を体験できるという「エコツーリズム」のような感じだ。


敷地には色とりどりの花が咲き誇る。
きのうは乾いた大地に泊まって、色のない世界に包まれていた。
車窓から見えたのは地平線まで続く砂地や茶色い草原。
だから、緑や花がよりいっそう鮮やかに映る。

敷地の中央には、飲めるほどきれいな小川が流れていて、脇には大きな木。
その下にはテーブルや椅子、大人5人が横になれるほどの大きなベンチ。
木陰で食事をしたり、昼間からビールを飲んだり、3人で横になって昼寝したり。
昼間っから最高だね♡

この大きな木、さて何の木でしょう。
リンゴよりもちょっと小ぶりの実をつける。

正解はクルミ。
実をはがすと、中から種が。
この種がわたしたちが知っている「クルミ」。

だから、この種のさらに中身を食べることになる。
収穫したクルミは市場で高値で取り引きされるんだって。
広がりのある枝は木陰を作ってくれて家族に憩いの場を提供してくれるし、実は収入源にもなるから、この木はここになくてはならない存在なんだね。
この家庭には子どもたちがたくさんいる。
控えめだけど人と触れ合うのが好きで、そしてよく家の手伝いをしている。
手伝いをすることに不満をもってはいない様子。
水を汲んだり掃き掃除をしたり落ち葉を拾ったり。
次から次に仕事を見つけてやっている。
手伝うことがあたりまえ、むしろそうやって体を動かすほうが楽しいかのように。
日本の子どもみたいにたくさんのオモチャやゲームなんてないからね。

でもね、一台だけ外にテレビがあるの。
チャンネルを決めるのは年長者なのかな。
テレビはおじいちゃんが独占。
昔の映画を見てる訳じゃないよ、単にモノクロでしか映らないだけ。

この家ではロバやニワトリのほかに牛も飼っている。
日課の乳搾り。

人間だけがミルクをもらうわけにはいかないよね。
子牛もたっぷり召し上がれ。

さて、この家のお兄ちゃんの案内で村の散策に行ってみましょう。
でも実はおかあはあんまり体調が良くない。
サマルカンドでケンゾーが高熱と下痢に襲われて回復したと思ったら今度はおかあが同じ症状に。
熱も39℃まであってようやくきょう平熱に戻ったばっかり。
そんなおかあに心強い(?)助っ人が待ち構えていた。

ロバくんです!
小さな体なのに力持ち。
これならおかあも長い距離を歩かなくても村を散策できるね。

山の向こうにはきのう行ったアイダルクル湖が見える。

この村には20世帯くらいが住んでいるらしい。
そしてみんなロバに乗って移動する。
ロバ同士がすれ違う。
「やあ! こんにちは~」

おかあからイクエに交代。
ロバの乗り心地は思っていた以上にいい♡
ラクダや馬よりも体が小さいから、座った感じがしっくりきてちょうどいい。
しかもすごくかわいいし!
ロバが大好きになってしまった。


大草原の窪みにあるような集落だけど、一応電気が通っている。
それぞれの電柱が素朴というか、自然というか、いびつというか・・・。
味がある。

村を散策すると、そこに住む人たちの生活が見える。
村には小屋のようなこじんまりした小学校があって、イクエたちの宿泊先のお母さんがそこの先生をやっている。
小さな村だけど、子どもも多い。
みんな手を振ってくれる。


ほんとうにロバはかわいくて、すっかりロバの虜になってしまった。
従順で働き者、だけど決して主役にはならないロバ。

白く縁取りされた目元もどこかまぬけで愛らしいけど、このピンと長く立った耳がこんなにも愛嬌のある姿にしているのかも。

そんなかわいいロバだけど、全然かわいくないのがその鳴き声。
ケンゾーはテレビで見たことあるから知ってたらしいけど、イクエとおかあはおったまげたよ!
はあふううん、はあふうん、はあふ〜、んんんががががが、ぐがぐがぐがあああああ〜。
(文字にしにくいけど、ケンゾーいわく「瀬川瑛子の笑い声」)
「え!! なに! なにこの鳴き声!!」
哀愁漂う、なんてものじゃない。
「どうしちゃったの? ストレスたまってるの? 何がそうさせてるの?」って思うくらい、奇妙で、長くて、大きくて、みんなの会話や動きを止めるくらいの鳴き声。
そしてものすごく反響する。
どこにいても聞こえるんだけど、周りの山に反響して鳴き声のあるじがどこにいるのかわからない。
10メートル先にいるのか、50メートル先にいるのか、西のほうにいるのか、東にいるのか。
その場所一帯の空気を揺らす感じ。
小さい体なのにどっからそんな声を出してるの?
この鳴き声を録音したかったんだけど、一日に5回くらいしか鳴かないからそのチャンスをつかむのが難しいのであっさりあきらめた。
ロバがこんなびっくりする声を出すなんて、大発見。
この大発見は人生においてなんの特にもならないし、別に知らなくてもいい。
現に65歳のおかあはロバの鳴き声を知らずになんの不便もなくここまで生きてきた。
だけどね、どうせ死ぬならロバの鳴き声を知って死にたいなって思った。
知ったところでなんにもならないし、どうでもいいことなんだけどね。

「何のために旅をするの?」って聞かれても明確な答えはない。
でも、ふと、そんなことなのかもなって思った。
おなじ生きるなら、ひとつでも多くの景色を見て、食べたことなかった物を食べて、ひとりでも多くの国の人と知り合いたい。
たとえそれが人生に何の利益をもたらさないとしてもね。