クスコから日帰りできる 意外と穴場のマラス
美容室に行くのが苦手なイクエです。
何が苦手かって言うと、美容師さんとお話しするのが・・・。
どちらもがんばって話さなきゃっていうのが見え見えだし、お互い一生懸命話題作りをしなきゃいけないし。
自然にできなくてよそよそしいし、なんかそわそわしちゃうんですよ。
どこまでプライベートなことを話すべきかもわからず。
鏡越しに目が合うのも、気まずい。
だから美容室ではひたすら雑誌を読んでいます。
案外,わたしみたいな人多いと思うんだけどどうでしょう。
世界遺産の街、クスコに滞在中のイクエとケンゾー。
きょうはちょっと遠出することにした。
マラスという場所。

ガイドブックに紹介されてはいるものの、クスコ周辺にはたくさん遺跡があって見どころが多いので、みんなマラスにはそれほど行かない。
案外、穴場の場所。
そしてちょっとだけアクセスが悪い。
まずはウルバンバ行きのワゴンに乗る。
バスもあるんだろうけど、わたしたちはPavitos通りとGrau通りの交差点付近にウルバンバ行きのワゴンを出している会社が数社並んでいたので、それを利用。

残念ながらマラス直通の公共交通はない。
マラスは幹線道路からおよそ4キロほど奥まったところにある。
ワゴンのドライバーに「マラスに行きたい」と伝えておくと、マラスへの分岐点で降ろしてくれる。
ここまでおよそ1時間ほど、運賃は6ソレス(約240円)。

ここからマラスの村までおよそ4キロ。
歩いていけないこともないけれど、イクエとケンゾーが行きたい場所はマラスのもっと奥。
体力温存のために、ここは待機していたタクシーに乗ってマラスの村まで移動することに。
相乗りタクシーで運賃は1人1ソル(約40円)。

タクシーに乗った客、5人。
後部座席に地元の姉さんとおばあちゃんと外国人ツーリストとイクエの4人でぎゅうぎゅう詰め。
車がカーブにさしかかるたびに、おばあちゃんがもたれかかってくる。
半ケツで座りにくいけど、外の風景がのどかすぎて心にゆとりが。
外国人ツーリストのお姉さんと目を合わせ、この状況を笑いあう。

マラスは、古い長屋の建物が路地に陰を落とすひっそりとした村だった。
馬車の「タッカタッカタッカタッカ・・・」という音が響いてきそう。
クスコよりももっとタイムスリップできるところ。

何もない村。
でもこんなところをゆっくり散歩するのも悪くない。
とはいえ、わたしたちのきょうの目的地はこの村ではない。
村からさらに5キロほど北へ歩いたところにある。
そこへと続く道は、いまタクシーで通り過ぎた場所だった。
歩いて少し逆戻り。
こんなことなら早めに降ろしてもらえばよかった。
その場所へと続く道は、舗装路から脇に入った土の路。

たぶんこの道をまっすぐ行けばたどり着けるはず。
ちょっと不安になりながら、てくてく、てくてく。
きょうは天気もいいし、堂々とそびえる山を見ながら、気持ちよく歩いていく。

誰も来ないし、静かだなあ。
と思っていたら、向こうからこんもりとした・・・。
わたしたちの愛する・・・。


「がんばれ!がんばれ!ド・ン・キー!!
負けるな!負けるな!ド・ン・キー!!」
きょうも健気に、頭を垂れてがんばっている。
もうちょっと荷物を減らしてくれてもいいのに、容赦ないね。
胴体が見えなくて、ハリネズミみたいになってるよ。

少年に棒で追い立てられながらノロノロと坂を上っていくドンキーたち。
力持ちのドンキー。
がんばりやさんだ。
せめて仕事のあとはおいしいご飯とひとときの休息が待っているといいね。

歩いているといつものようにモヨオしてきたイクエ。
いつものように野ションをすることにしたイクエ。
身を隠すような場所はないけれど、たま〜にロバが通るくらいなので人に見られる心配はない。
何もなくて静かな場所なので、遠くから足音がすればわかる。
いまは誰も来る気配なし。
ためらいもなくパンツを下ろし、ジャーッと勢いよく。
突然ケンゾーが言った。
「イクエ!来てる!!」
え!?
ウソ?
来てるっていっても足音もしないし、まだ大丈夫でしょ。
それにそんなに途中で止められるほど器用じゃない。
「イクエ!」
ジャーッというわたしの出す音のすぐ後ろから、シャーッという爽やかな音。
お尻丸出しのわたしの横を、マウンテンバイクに乗った外国人ツーリストが颯爽と過ぎていった。
完璧に見られてしまった。
そんなのアリ?
こんなところマウンテンバイクで観光しにくるとは思わないよ。
あっちゃ〜。
「なんでもっと早く教えてくれんかったと?」
「だって、見えんかったもん。
教えたやん。」
「あれじゃ、間に合わんやろ。」
ケンゾーと言い合っていると、またあいつらがやってきた。

どうせ見られるなら、あなたたちに見られたかったよ・・・。
マウンテンバイクの彼とはもう二度と会わないことを祈りながら歩くことおよそ1時間。
山間にわたしたちのお目当てのものが見えてきた。
おお〜!
あれかあ。

白く輝く残雪のようなもの。
なにかわかる?

これは塩田。
ここは標高およそ3000メートルのアンデスの高地。
でも、およそ6000万年前は海だった。
地殻変動でアンデス山脈ができあがると、元の海水は巨大な岩塩となって残った。
それが少しずつ溶けて、地下水となり濃度の高い塩水が湧いているのだそう。
普通の海水の7倍の塩分濃度があるらしい。
それを斜面の棚田に貯めて天日干しをして水分を蒸発させて、塩を作っているんだって。
棚田の縁は石で区切られている。

この塩作りはなんとプレ・インカ(インカ帝国よりも前の時代)から続いているそうだから、少なくとも500年以上の歴史をもつことになる。
谷の斜面の長さは数キロにもわたっていて、棚田の数はおよそ4000枚。

4月から9月の乾期にだけ、この白い塩田が見られる。
さらに塩の生産がピークを迎えるのは5月から6月ごろ。
わたしたちが訪れたこのときは、ちょうど6月下旬で地元の人たちがまるで畑仕事をするように塩を作っていた。

塩田で塩を作るには、まず底を平らにして、塩水が地中にしみ込まないように粘土や砂を敷き詰める必要があるみたい。
その上に塩水を貯めて、かき混ぜたりしながら水分を蒸発させ、できあがった塩をかき集めるらしい。

大きな企業が従業員を雇って塩を作っているのかと思ったけど、見ているとそんな感じではなさそう。
農家が自分の畑を持って耕すように、それぞれが塩田をもっているのかもしれない。
家族総出で一枚の塩田で作業しているところもあれば、この日は日曜日だから人がいなくて何もされていないところもある。

真っ白い塩田もあれば、茶色い塩田もあって進捗状況にも差がある。
ここで採れる塩はまろやかでミネラルたっぷり。
インカ皇帝へも献上されて「インカの白金」なんて呼ばれていたのだとか。
日本でも「マラスの塩」として、通信販売などで売っているみたいだよ。

入場料を払えば近くまで入れるんだけど、事前情報よりも入場料が数倍に値上がりしていたのと、外からでもじゅうぶん見られるので、わたしたちは中に入らなかった。
そのかわり、塩田に面した丘を歩くことに。
意外にここが絶景スポットじゃない?
塩田の端から端まで歩きながら眺めた。

赤味を帯びたアンデスの谷間。
まるで、塩田はその谷間を悠々と流れる白い川のよう。
不思議な光景。

塩田の斜面を北へ向かって終りまで下って行って、ウルバンバの西の方へ歩いて抜けることに。
空も青くて、ちょっとしたトレッキング。

川を渡ると幹線道路にぶちあたった。
ここでクスコ行きのバスが通るのを待つこともできるけど、地元の人の勧めでウルバンバのバスターミナルまでいっしょにタクシーに乗ることに。
その方が確実にクスコ行きのバスに乗れるから。
地元の親子連れと相乗りして、ひとり1ソル(約40円)。
ウルバンバのターミナルからクスコ行きのバスに4ソレス(約120円)で乗ることができた。
自力で行くには車を乗り継いだり歩いたりしないと行けない場所でちょっと面倒だけど、だからこそ秘境に行くようで楽しい気分に。
アンデスの山奥にひっそりと隠れている、白く輝く歴史あるマラスの塩田。
クスコを訪れた際はぜひ足を伸ばしてみては?
でも、くれぐれもマウンテンバイクにはご注意を。
ここはサイクリストに人気のコースなんだって、あとで知ったよ・・・。
何が苦手かって言うと、美容師さんとお話しするのが・・・。
どちらもがんばって話さなきゃっていうのが見え見えだし、お互い一生懸命話題作りをしなきゃいけないし。
自然にできなくてよそよそしいし、なんかそわそわしちゃうんですよ。
どこまでプライベートなことを話すべきかもわからず。
鏡越しに目が合うのも、気まずい。
だから美容室ではひたすら雑誌を読んでいます。
案外,わたしみたいな人多いと思うんだけどどうでしょう。
世界遺産の街、クスコに滞在中のイクエとケンゾー。
きょうはちょっと遠出することにした。
マラスという場所。

ガイドブックに紹介されてはいるものの、クスコ周辺にはたくさん遺跡があって見どころが多いので、みんなマラスにはそれほど行かない。
案外、穴場の場所。
そしてちょっとだけアクセスが悪い。
まずはウルバンバ行きのワゴンに乗る。
バスもあるんだろうけど、わたしたちはPavitos通りとGrau通りの交差点付近にウルバンバ行きのワゴンを出している会社が数社並んでいたので、それを利用。

残念ながらマラス直通の公共交通はない。
マラスは幹線道路からおよそ4キロほど奥まったところにある。
ワゴンのドライバーに「マラスに行きたい」と伝えておくと、マラスへの分岐点で降ろしてくれる。
ここまでおよそ1時間ほど、運賃は6ソレス(約240円)。

ここからマラスの村までおよそ4キロ。
歩いていけないこともないけれど、イクエとケンゾーが行きたい場所はマラスのもっと奥。
体力温存のために、ここは待機していたタクシーに乗ってマラスの村まで移動することに。
相乗りタクシーで運賃は1人1ソル(約40円)。

タクシーに乗った客、5人。
後部座席に地元の姉さんとおばあちゃんと外国人ツーリストとイクエの4人でぎゅうぎゅう詰め。
車がカーブにさしかかるたびに、おばあちゃんがもたれかかってくる。
半ケツで座りにくいけど、外の風景がのどかすぎて心にゆとりが。
外国人ツーリストのお姉さんと目を合わせ、この状況を笑いあう。

マラスは、古い長屋の建物が路地に陰を落とすひっそりとした村だった。
馬車の「タッカタッカタッカタッカ・・・」という音が響いてきそう。
クスコよりももっとタイムスリップできるところ。

何もない村。
でもこんなところをゆっくり散歩するのも悪くない。
とはいえ、わたしたちのきょうの目的地はこの村ではない。
村からさらに5キロほど北へ歩いたところにある。
そこへと続く道は、いまタクシーで通り過ぎた場所だった。
歩いて少し逆戻り。
こんなことなら早めに降ろしてもらえばよかった。
その場所へと続く道は、舗装路から脇に入った土の路。

たぶんこの道をまっすぐ行けばたどり着けるはず。
ちょっと不安になりながら、てくてく、てくてく。
きょうは天気もいいし、堂々とそびえる山を見ながら、気持ちよく歩いていく。

誰も来ないし、静かだなあ。
と思っていたら、向こうからこんもりとした・・・。
わたしたちの愛する・・・。


「がんばれ!がんばれ!ド・ン・キー!!
負けるな!負けるな!ド・ン・キー!!」
きょうも健気に、頭を垂れてがんばっている。
もうちょっと荷物を減らしてくれてもいいのに、容赦ないね。
胴体が見えなくて、ハリネズミみたいになってるよ。

少年に棒で追い立てられながらノロノロと坂を上っていくドンキーたち。
力持ちのドンキー。
がんばりやさんだ。
せめて仕事のあとはおいしいご飯とひとときの休息が待っているといいね。

歩いているといつものようにモヨオしてきたイクエ。
いつものように野ションをすることにしたイクエ。
身を隠すような場所はないけれど、たま〜にロバが通るくらいなので人に見られる心配はない。
何もなくて静かな場所なので、遠くから足音がすればわかる。
いまは誰も来る気配なし。
ためらいもなくパンツを下ろし、ジャーッと勢いよく。
突然ケンゾーが言った。
「イクエ!来てる!!」
え!?
ウソ?
来てるっていっても足音もしないし、まだ大丈夫でしょ。
それにそんなに途中で止められるほど器用じゃない。
「イクエ!」
ジャーッというわたしの出す音のすぐ後ろから、シャーッという爽やかな音。
お尻丸出しのわたしの横を、マウンテンバイクに乗った外国人ツーリストが颯爽と過ぎていった。
完璧に見られてしまった。
そんなのアリ?
こんなところマウンテンバイクで観光しにくるとは思わないよ。
あっちゃ〜。
「なんでもっと早く教えてくれんかったと?」
「だって、見えんかったもん。
教えたやん。」
「あれじゃ、間に合わんやろ。」
ケンゾーと言い合っていると、またあいつらがやってきた。

どうせ見られるなら、あなたたちに見られたかったよ・・・。
マウンテンバイクの彼とはもう二度と会わないことを祈りながら歩くことおよそ1時間。
山間にわたしたちのお目当てのものが見えてきた。
おお〜!
あれかあ。

白く輝く残雪のようなもの。
なにかわかる?

これは塩田。
ここは標高およそ3000メートルのアンデスの高地。
でも、およそ6000万年前は海だった。
地殻変動でアンデス山脈ができあがると、元の海水は巨大な岩塩となって残った。
それが少しずつ溶けて、地下水となり濃度の高い塩水が湧いているのだそう。
普通の海水の7倍の塩分濃度があるらしい。
それを斜面の棚田に貯めて天日干しをして水分を蒸発させて、塩を作っているんだって。
棚田の縁は石で区切られている。

この塩作りはなんとプレ・インカ(インカ帝国よりも前の時代)から続いているそうだから、少なくとも500年以上の歴史をもつことになる。
谷の斜面の長さは数キロにもわたっていて、棚田の数はおよそ4000枚。

4月から9月の乾期にだけ、この白い塩田が見られる。
さらに塩の生産がピークを迎えるのは5月から6月ごろ。
わたしたちが訪れたこのときは、ちょうど6月下旬で地元の人たちがまるで畑仕事をするように塩を作っていた。

塩田で塩を作るには、まず底を平らにして、塩水が地中にしみ込まないように粘土や砂を敷き詰める必要があるみたい。
その上に塩水を貯めて、かき混ぜたりしながら水分を蒸発させ、できあがった塩をかき集めるらしい。

大きな企業が従業員を雇って塩を作っているのかと思ったけど、見ているとそんな感じではなさそう。
農家が自分の畑を持って耕すように、それぞれが塩田をもっているのかもしれない。
家族総出で一枚の塩田で作業しているところもあれば、この日は日曜日だから人がいなくて何もされていないところもある。

真っ白い塩田もあれば、茶色い塩田もあって進捗状況にも差がある。
ここで採れる塩はまろやかでミネラルたっぷり。
インカ皇帝へも献上されて「インカの白金」なんて呼ばれていたのだとか。
日本でも「マラスの塩」として、通信販売などで売っているみたいだよ。

入場料を払えば近くまで入れるんだけど、事前情報よりも入場料が数倍に値上がりしていたのと、外からでもじゅうぶん見られるので、わたしたちは中に入らなかった。
そのかわり、塩田に面した丘を歩くことに。
意外にここが絶景スポットじゃない?
塩田の端から端まで歩きながら眺めた。

赤味を帯びたアンデスの谷間。
まるで、塩田はその谷間を悠々と流れる白い川のよう。
不思議な光景。

塩田の斜面を北へ向かって終りまで下って行って、ウルバンバの西の方へ歩いて抜けることに。
空も青くて、ちょっとしたトレッキング。

川を渡ると幹線道路にぶちあたった。
ここでクスコ行きのバスが通るのを待つこともできるけど、地元の人の勧めでウルバンバのバスターミナルまでいっしょにタクシーに乗ることに。
その方が確実にクスコ行きのバスに乗れるから。
地元の親子連れと相乗りして、ひとり1ソル(約40円)。
ウルバンバのターミナルからクスコ行きのバスに4ソレス(約120円)で乗ることができた。
自力で行くには車を乗り継いだり歩いたりしないと行けない場所でちょっと面倒だけど、だからこそ秘境に行くようで楽しい気分に。
アンデスの山奥にひっそりと隠れている、白く輝く歴史あるマラスの塩田。
クスコを訪れた際はぜひ足を伸ばしてみては?
でも、くれぐれもマウンテンバイクにはご注意を。
ここはサイクリストに人気のコースなんだって、あとで知ったよ・・・。