なかなか疲れが取れない41歳の夫に「もう旅も潮どきってことかな」と言われたイクエです。
今いるキューバの旅がけっこう過酷で、ダンプカーの荷台に現地人20人くらいと立ったまま乗って100キロ以上移動したり、これまでの旅でいちばん乗り心地の悪いバス、というかもはや「バス」とも呼べない乗り物で連日移動したりと超ハード。
でもこれがキューバ人にとっては普通。
キューバ人は我慢強い国民だなあといつも感心しています。
話は戻ってベネズエラ・メリダでのできごと。
このメリダの良さは、物価が安く、店の品揃えが豊富、おしゃれでおいしいレストランが多い、標高が高いから暑すぎず快適。
それと、もうひとつ。
ツアー会社が多くてツアーやアクティビティーが充実している!
だからメリダでの滞在を飽きさせない。
一日激安バスツアーや、雷ツアーも楽しかったけど、どうせならアクティビティーにも挑戦しちゃおう!ということに。
まずは前から気になっていたキャノピー。
実はエクアドルのハチドリの村、ミンドでキャノピーができたんだけど外国人料金が高く設定されていたので、やるのをあきらめた。
でも、やっぱりやってみたかったなあ、せっかくなのでやればよかった、いま考えればそんなに高くなかったのに、なんてうじうじ思っていたところだった。
それが、ここメリダでできる。
しかもミンドよりも格段に安く。
ミンドでやんなくてよかった~♡
キャノピーとは「ジップライン」とも呼ばれているアクティビティー。
森の中にワイヤーが張ってあり、自分の腰につけたロープをワイヤーに通した滑車につなぎ、ワイヤーにぶら下がってシューッと移動していくもの。
と、文字で説明するとなんのこっちゃ?という感じなんだけど、わかりやすく言えばターザン。
つたや枝にしがみついて「ア~アア~」と木々の間を飛ぶように駆けるあのイメージ。
会場までの送迎もついてひとり4000ボリバル(約800円)。
半日遊べると思えば、かなりリーズナブル。
参加者はわたしたちふたりだけ。
送迎の車は、年代物のタクシーだった。

車内はとても広いんだけど、とにかく古い。
アメ車かな。
ドアのロックも窓を開け閉めするハンドルも壊れている。
ベネズエラはオンボロ車が多い国、世界トップ5に入るんじゃないかな。
走ること10分足らず。
どんな田舎に連れていかれるのかと思っていたら、意外にもメリダの繁華街からそう離れていない、丘の住宅街。
ぽつんぽつんと建っている家は、どれもお金持ちそうな家。
その一軒で、車は止まった。
門をくぐり、家の前へ。
まさかここがキャノピー会場?
たしかに土地は広いし、家の下は斜面になっているけど。

やっぱり800円のキャノピーだから、子どもだましみたいなものなのかな。
庭に張られたワイヤーをシューッと滑って終わりなのかな。
「まさか、ここ?」
「ありえるよね。
まあ、でも800円だからいいけど。」
通された室内は普通の居住空間。
ソファーがあって、食卓があって。
ただひとつ違うのは、脇にヘルメットやロープなどキャノピー道具一式が置かれていること。
インストラクターのお兄さんがイクエとケンゾーのサイズに合う道具を渡してくれる。
やっぱりここでやるってことなのかな。
キャノピーは、このお金持ちそうな家族の趣味のような副業なのかな。
と思っていたら、会場は別の場所。
そんなにここから遠くない場所みたいで、バイクに乗ってさらに丘の上へと移動。
番犬のシェパードがバイクに負けないスピードでついてくる。

シェパードと競争するように坂道を登っていき、何もない場所でバイクは止まった。
道路との境にはフェンスが張ってあり、ここをくぐるように言われた。
どうやらこの林は私有地で、ここでキャノピーができるみたい。

木々の間にワイヤーやロープが張り巡らされているのが見えた。
手作り感たっぷり。
ここが大人の遊び場かあ。

ワイヤーのラインは全部で8本。
およそ1時間半かけて、この8本を滑っていくことになる。
1本100メートル、200メートル、ラインによっては300メートルの長さがある。
腰のロープを、ワイヤーにかけた滑車に通して、いざ出発!

「ア~ア、ア~~」
風を切る速さ。
飛んでいるような感覚。
自分で速さを調節できず、身を任せるしかできない。
その怖さと緊張感。
そして解き放たれたような開放感。
なに、これ。
楽しい!!!

200メートルほどいっきに滑った。
そして木に設定された、基地に到着。

振り返ると、出発した場所は木に隠れて見えない。
大きな声で、ケンゾーがいる方に向かって言った。
「これ、楽しいよ!!」
次はケンゾーの番。
「ア~ア、ア~~」
ケンゾーがこっちに近づいてくる。
すごく楽しそうな笑顔。
下を見たり、上を見たりしている。
キラキラと降り注ぐ木漏れ日を浴びて、疾走する感覚はたまらない。
それを満喫しているのがわかる。

ケンゾーがこちら側の基地に着地。
「あー!おもしろ~!!」
1本目のワイヤーを滑ったわたしたち。
最初の場所より下ってきたことになる。
そして次はどうするかと言えば、命綱をつけて、はしごを上って高い位置に移動する。
次の基地は、わたしたちの頭上。
このはしごを上るのも、スリリングで楽しい。
子どものころ、アスレチックでワクワクしていたのを思い出す。


そしてまた、ロープを滑車につけて「ア~ア、ア~~」。
スピードが増す。
森の上を飛んでいる感覚に。

ケンゾーが言った。
「森のカーテンみたいなところをくぐっていくのが楽しいね。」
木には毛のような細い草がからまっていて、その間を通り抜けていく。


基地に到達すると、次の基地まではしごを上っていくこともあれば、ロープで下にするすると降りていくところもある。
アクロバティックに楽しんでいく。
そして再び、「ア~ア、ア~~」。

木々のカーテンを抜けると、視界が開けた場所に。
メリダの都会の街並みが見える。
こんな林のなかでターザンを楽しんでいるという非日常。
日常の世界を横目に感じる優越感。

キャノピーは大人のアスレチック。
35歳のイクエと41歳のケンゾーが、まだこんなにもアスレチックにワクワクするこころをもっていることが意外だった。
日本にもキャノピーができるところはあるらしい。
もしお金があれば。
誰も買わないような、田舎の、斜面の多い使い勝手のない森を安く買って、キャノピーパークを作れるのになあ。
仕事に育児に疲れたお父さんやお母さんに、子どもたちといっしょに遊びに来てリフレッシュしてほしいなあ。
そんなことを本気で考えたほど、楽しかったキャノピー。
イクエとケンゾーのアクティビティーはキャノピーにとどまらない。
お次は・・・。
パラグライダー!!
これも送迎込みで10500ボリバル(約2100円)という安さ。
まだ人生で一度もパラグライダーをやったことのないイクエとケンゾー。
空を飛ぶってどんな感じなんだろう。
朝、ツアー会社に行くとみんなが集合していた。
といっても、パラグライダーをやるのはイクエとケンゾー、そしてベネズエラ人の女性だけ。
ほかは、ツアー会社のスタッフやパラグライダーのインストラクター。
みんな、朝からこのノリ。

パラグライダーのインストラクターはひとりにつき、ひとり。
後ろにぴたっとついて、操縦してくれる。
だからはじめてだけど、不安はない。
メリダの街から車でおよそ30分。
山のふもとにある、パラグライダーのオフィスで器材を積み込む。
それからさらに車で山を登ること30分。
こんな山の上でやるんだね。

目の高さに雲がある。
山の上だから霧に覆われることも多いらしい。
天気を心配したけれど、快晴とは言えないものの視界は良好。
手際よく準備をするスタッフたち。

飛ぶのは3人。
だからインストラクターも3人。
でもドライバーや手伝いの人も含めて全員で5人くらいのスタッフがいる。
「あの、お腹の大きい人もインストラクターかな。」
「それはないよ。
あの人といっしょに飛んだら落っこちそう。」
そう話していたら、その人がイクエにヘルメットをかぶせはじめた。
まさか、ポッコリお腹のこの人がインストラクター?

そして、イクエの身長とほとんど変わらないようなバックパックのようなものを担がせる。
飛んでいるときは、座椅子みたいにこれに座るんだって。

さすがにポッコリお腹の彼の役目はドライバー。
飛ばないみたい。
わたしのインストラクターは、もっと細い男性。
ホッ。
練習みたいなのがあるのかと思ったら、口頭で簡単な説明を受けるだけ。
離陸のときは止まらずに丘を走って下ること。
離陸したあとはしゃがんで、椅子のように後ろの袋に座ること。
着陸のときは、椅子から立ち上がって足を伸ばすこと。
以上。
そんなにシンプルなの?
操縦はインストラクターがやってくれるから、あとは身を任せればいいってことかな。
あれよあれよという間に、準備が整った。
「じゃあ、行くよ!
さあ、走るんだ!!」
ぴったりと後ろにひっついたインストラクターに、うながされるまま丘を走る。
でも、実際はほとんど走らなかった。
5歩くらいで足が地を離れ、宙に浮いた。
えっ?
こんなにすぐに飛べるものなの?
でもまたすぐに着陸しそうな不安があって、宙に浮いても足をバタバタとさせる。
あとでケンゾーに聞いたら「ホタテみたいだった」って笑われた。
ホタテというのは我が家のチワワで、だっこしたときに犬かきのように足をばたつかせる。
かっこ悪い離陸だったことには間違いなさそう。
あっけなく空を飛べた。
想像していたよりも全然怖さを感じない。
ふわーっと心地よい。
座椅子に座るみたいにしゃがんでいるからか、不安定な感じもしない。

上へ上へと上がっていったかと思ったら、す~っと降下したり。
降下するときは、ジェットコースターで落ちるときみたいにお腹のあたりがフワッとする。
それがちょっとひやっとしておもしろい。
右に旋回したり、左に旋回したり。
わたしのすぐあとには、ケンゾーも飛び立ち、ケンゾーと近づいたり離れたり、すれ違ったり。
お互い空の上で顔を見合わせるっていうのは不思議。
「お~い!」

車で上ってきた丘の斜面のジグザグの道が見える。
向こうにはメリダの街並みも。
川も見えて山もそびえる。
バリエーションに富んだ景色を空から堪能。

コンドルの仲間のような大きな鳥が、羽を伸ばしたまますぐ横を飛んでいる。
鳥ってこんなに気持ちのいいことをいつもやってるんだね。
幸せ者だね。
後ろのインストラクターと会話する余裕もある。
彼は、その道16年のベテラン。
ほぼ毎日飛んでいるのだそう。

スペインに住んでいたこともあって、ヨーロッパを中心に何か国もの国でパラグライダーをやった経験がある。
「国によって違うの?
パラグライダーをするのに、どこがいちばんいい?」
「それぞれのよさがある。
スペインは乾いた茶色い土地で、フランスは緑が多い。」
「ここの特徴は?」
「メリダのよさはね、いつだって飛べるっていうこと。
ここは谷になっていていつもいい風が吹いている。
ほかの場所は天候によって飛べないことも多いけど、メリダは一年中飛べるんだ。」
だから数歩走っただけで、一発で簡単に飛べたのかな。

「操縦するのは難しい?」
「簡単だよ。
ほら、ここをもってごらん。」
インストラクターが右手と左手でつかんでいたロープを外し、わたしに託した。
右を引くと右側が下がり右へ、左を引くと左側が下がり左へ。
とても簡単。
風を受けたパラシュートが少し重く感じるけど、モーターにも頼らずこんな簡単に自分で空を自由に飛べるなんて。
パラグライダーにハマる人の気持ちがわかる。

決まったコースなんてない。
無限の広さの空を、好きなようにに自由に。
北に、南に。
空高く上がったかと思えば、大地に近づいたり。

20分くらい空の散歩を楽しんで着地。
着地場所は、離陸の場所と違い、山のふもと。
下で別のスタッフが待っていてくれる。
立ち上がり、足を伸ばして大地に近づくと、下にいるスタッフが受け止めてくれた。
旋回しながら着地場所に近づいていったから少しだけ酔った。
しばらくしてケンゾーも無事着地。
満面の笑顔。
「あー、楽しかった!」
大人になっても楽しいことっていっぱいあるんだね。
この年になってもまだやったことがないことがいっぱいある。
だから人生飽きないね!
今いるキューバの旅がけっこう過酷で、ダンプカーの荷台に現地人20人くらいと立ったまま乗って100キロ以上移動したり、これまでの旅でいちばん乗り心地の悪いバス、というかもはや「バス」とも呼べない乗り物で連日移動したりと超ハード。
でもこれがキューバ人にとっては普通。
キューバ人は我慢強い国民だなあといつも感心しています。
話は戻ってベネズエラ・メリダでのできごと。
このメリダの良さは、物価が安く、店の品揃えが豊富、おしゃれでおいしいレストランが多い、標高が高いから暑すぎず快適。
それと、もうひとつ。
ツアー会社が多くてツアーやアクティビティーが充実している!
だからメリダでの滞在を飽きさせない。
一日激安バスツアーや、雷ツアーも楽しかったけど、どうせならアクティビティーにも挑戦しちゃおう!ということに。
まずは前から気になっていたキャノピー。
実はエクアドルのハチドリの村、ミンドでキャノピーができたんだけど外国人料金が高く設定されていたので、やるのをあきらめた。
でも、やっぱりやってみたかったなあ、せっかくなのでやればよかった、いま考えればそんなに高くなかったのに、なんてうじうじ思っていたところだった。
それが、ここメリダでできる。
しかもミンドよりも格段に安く。
ミンドでやんなくてよかった~♡
キャノピーとは「ジップライン」とも呼ばれているアクティビティー。
森の中にワイヤーが張ってあり、自分の腰につけたロープをワイヤーに通した滑車につなぎ、ワイヤーにぶら下がってシューッと移動していくもの。
と、文字で説明するとなんのこっちゃ?という感じなんだけど、わかりやすく言えばターザン。
つたや枝にしがみついて「ア~アア~」と木々の間を飛ぶように駆けるあのイメージ。
会場までの送迎もついてひとり4000ボリバル(約800円)。
半日遊べると思えば、かなりリーズナブル。
参加者はわたしたちふたりだけ。
送迎の車は、年代物のタクシーだった。

車内はとても広いんだけど、とにかく古い。
アメ車かな。
ドアのロックも窓を開け閉めするハンドルも壊れている。
ベネズエラはオンボロ車が多い国、世界トップ5に入るんじゃないかな。
走ること10分足らず。
どんな田舎に連れていかれるのかと思っていたら、意外にもメリダの繁華街からそう離れていない、丘の住宅街。
ぽつんぽつんと建っている家は、どれもお金持ちそうな家。
その一軒で、車は止まった。
門をくぐり、家の前へ。
まさかここがキャノピー会場?
たしかに土地は広いし、家の下は斜面になっているけど。

やっぱり800円のキャノピーだから、子どもだましみたいなものなのかな。
庭に張られたワイヤーをシューッと滑って終わりなのかな。
「まさか、ここ?」
「ありえるよね。
まあ、でも800円だからいいけど。」
通された室内は普通の居住空間。
ソファーがあって、食卓があって。
ただひとつ違うのは、脇にヘルメットやロープなどキャノピー道具一式が置かれていること。
インストラクターのお兄さんがイクエとケンゾーのサイズに合う道具を渡してくれる。
やっぱりここでやるってことなのかな。
キャノピーは、このお金持ちそうな家族の趣味のような副業なのかな。
と思っていたら、会場は別の場所。
そんなにここから遠くない場所みたいで、バイクに乗ってさらに丘の上へと移動。
番犬のシェパードがバイクに負けないスピードでついてくる。

シェパードと競争するように坂道を登っていき、何もない場所でバイクは止まった。
道路との境にはフェンスが張ってあり、ここをくぐるように言われた。
どうやらこの林は私有地で、ここでキャノピーができるみたい。

木々の間にワイヤーやロープが張り巡らされているのが見えた。
手作り感たっぷり。
ここが大人の遊び場かあ。

ワイヤーのラインは全部で8本。
およそ1時間半かけて、この8本を滑っていくことになる。
1本100メートル、200メートル、ラインによっては300メートルの長さがある。
腰のロープを、ワイヤーにかけた滑車に通して、いざ出発!

「ア~ア、ア~~」
風を切る速さ。
飛んでいるような感覚。
自分で速さを調節できず、身を任せるしかできない。
その怖さと緊張感。
そして解き放たれたような開放感。
なに、これ。
楽しい!!!

200メートルほどいっきに滑った。
そして木に設定された、基地に到着。

振り返ると、出発した場所は木に隠れて見えない。
大きな声で、ケンゾーがいる方に向かって言った。
「これ、楽しいよ!!」
次はケンゾーの番。
「ア~ア、ア~~」
ケンゾーがこっちに近づいてくる。
すごく楽しそうな笑顔。
下を見たり、上を見たりしている。
キラキラと降り注ぐ木漏れ日を浴びて、疾走する感覚はたまらない。
それを満喫しているのがわかる。

ケンゾーがこちら側の基地に着地。
「あー!おもしろ~!!」
1本目のワイヤーを滑ったわたしたち。
最初の場所より下ってきたことになる。
そして次はどうするかと言えば、命綱をつけて、はしごを上って高い位置に移動する。
次の基地は、わたしたちの頭上。
このはしごを上るのも、スリリングで楽しい。
子どものころ、アスレチックでワクワクしていたのを思い出す。


そしてまた、ロープを滑車につけて「ア~ア、ア~~」。
スピードが増す。
森の上を飛んでいる感覚に。

ケンゾーが言った。
「森のカーテンみたいなところをくぐっていくのが楽しいね。」
木には毛のような細い草がからまっていて、その間を通り抜けていく。


基地に到達すると、次の基地まではしごを上っていくこともあれば、ロープで下にするすると降りていくところもある。
アクロバティックに楽しんでいく。
そして再び、「ア~ア、ア~~」。

木々のカーテンを抜けると、視界が開けた場所に。
メリダの都会の街並みが見える。
こんな林のなかでターザンを楽しんでいるという非日常。
日常の世界を横目に感じる優越感。

キャノピーは大人のアスレチック。
35歳のイクエと41歳のケンゾーが、まだこんなにもアスレチックにワクワクするこころをもっていることが意外だった。
日本にもキャノピーができるところはあるらしい。
もしお金があれば。
誰も買わないような、田舎の、斜面の多い使い勝手のない森を安く買って、キャノピーパークを作れるのになあ。
仕事に育児に疲れたお父さんやお母さんに、子どもたちといっしょに遊びに来てリフレッシュしてほしいなあ。
そんなことを本気で考えたほど、楽しかったキャノピー。
イクエとケンゾーのアクティビティーはキャノピーにとどまらない。
お次は・・・。
パラグライダー!!
これも送迎込みで10500ボリバル(約2100円)という安さ。
まだ人生で一度もパラグライダーをやったことのないイクエとケンゾー。
空を飛ぶってどんな感じなんだろう。
朝、ツアー会社に行くとみんなが集合していた。
といっても、パラグライダーをやるのはイクエとケンゾー、そしてベネズエラ人の女性だけ。
ほかは、ツアー会社のスタッフやパラグライダーのインストラクター。
みんな、朝からこのノリ。

パラグライダーのインストラクターはひとりにつき、ひとり。
後ろにぴたっとついて、操縦してくれる。
だからはじめてだけど、不安はない。
メリダの街から車でおよそ30分。
山のふもとにある、パラグライダーのオフィスで器材を積み込む。
それからさらに車で山を登ること30分。
こんな山の上でやるんだね。

目の高さに雲がある。
山の上だから霧に覆われることも多いらしい。
天気を心配したけれど、快晴とは言えないものの視界は良好。
手際よく準備をするスタッフたち。

飛ぶのは3人。
だからインストラクターも3人。
でもドライバーや手伝いの人も含めて全員で5人くらいのスタッフがいる。
「あの、お腹の大きい人もインストラクターかな。」
「それはないよ。
あの人といっしょに飛んだら落っこちそう。」
そう話していたら、その人がイクエにヘルメットをかぶせはじめた。
まさか、ポッコリお腹のこの人がインストラクター?

そして、イクエの身長とほとんど変わらないようなバックパックのようなものを担がせる。
飛んでいるときは、座椅子みたいにこれに座るんだって。

さすがにポッコリお腹の彼の役目はドライバー。
飛ばないみたい。
わたしのインストラクターは、もっと細い男性。
ホッ。
練習みたいなのがあるのかと思ったら、口頭で簡単な説明を受けるだけ。
離陸のときは止まらずに丘を走って下ること。
離陸したあとはしゃがんで、椅子のように後ろの袋に座ること。
着陸のときは、椅子から立ち上がって足を伸ばすこと。
以上。
そんなにシンプルなの?
操縦はインストラクターがやってくれるから、あとは身を任せればいいってことかな。
あれよあれよという間に、準備が整った。
「じゃあ、行くよ!
さあ、走るんだ!!」
ぴったりと後ろにひっついたインストラクターに、うながされるまま丘を走る。
でも、実際はほとんど走らなかった。
5歩くらいで足が地を離れ、宙に浮いた。
えっ?
こんなにすぐに飛べるものなの?
でもまたすぐに着陸しそうな不安があって、宙に浮いても足をバタバタとさせる。
あとでケンゾーに聞いたら「ホタテみたいだった」って笑われた。
ホタテというのは我が家のチワワで、だっこしたときに犬かきのように足をばたつかせる。
かっこ悪い離陸だったことには間違いなさそう。
あっけなく空を飛べた。
想像していたよりも全然怖さを感じない。
ふわーっと心地よい。
座椅子に座るみたいにしゃがんでいるからか、不安定な感じもしない。

上へ上へと上がっていったかと思ったら、す~っと降下したり。
降下するときは、ジェットコースターで落ちるときみたいにお腹のあたりがフワッとする。
それがちょっとひやっとしておもしろい。
右に旋回したり、左に旋回したり。
わたしのすぐあとには、ケンゾーも飛び立ち、ケンゾーと近づいたり離れたり、すれ違ったり。
お互い空の上で顔を見合わせるっていうのは不思議。
「お~い!」

車で上ってきた丘の斜面のジグザグの道が見える。
向こうにはメリダの街並みも。
川も見えて山もそびえる。
バリエーションに富んだ景色を空から堪能。

コンドルの仲間のような大きな鳥が、羽を伸ばしたまますぐ横を飛んでいる。
鳥ってこんなに気持ちのいいことをいつもやってるんだね。
幸せ者だね。
後ろのインストラクターと会話する余裕もある。
彼は、その道16年のベテラン。
ほぼ毎日飛んでいるのだそう。

スペインに住んでいたこともあって、ヨーロッパを中心に何か国もの国でパラグライダーをやった経験がある。
「国によって違うの?
パラグライダーをするのに、どこがいちばんいい?」
「それぞれのよさがある。
スペインは乾いた茶色い土地で、フランスは緑が多い。」
「ここの特徴は?」
「メリダのよさはね、いつだって飛べるっていうこと。
ここは谷になっていていつもいい風が吹いている。
ほかの場所は天候によって飛べないことも多いけど、メリダは一年中飛べるんだ。」
だから数歩走っただけで、一発で簡単に飛べたのかな。

「操縦するのは難しい?」
「簡単だよ。
ほら、ここをもってごらん。」
インストラクターが右手と左手でつかんでいたロープを外し、わたしに託した。
右を引くと右側が下がり右へ、左を引くと左側が下がり左へ。
とても簡単。
風を受けたパラシュートが少し重く感じるけど、モーターにも頼らずこんな簡単に自分で空を自由に飛べるなんて。
パラグライダーにハマる人の気持ちがわかる。

決まったコースなんてない。
無限の広さの空を、好きなようにに自由に。
北に、南に。
空高く上がったかと思えば、大地に近づいたり。

20分くらい空の散歩を楽しんで着地。
着地場所は、離陸の場所と違い、山のふもと。
下で別のスタッフが待っていてくれる。
立ち上がり、足を伸ばして大地に近づくと、下にいるスタッフが受け止めてくれた。
旋回しながら着地場所に近づいていったから少しだけ酔った。
しばらくしてケンゾーも無事着地。
満面の笑顔。
「あー、楽しかった!」
大人になっても楽しいことっていっぱいあるんだね。
この年になってもまだやったことがないことがいっぱいある。
だから人生飽きないね!
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