インド以来、基本ずっと緩めのう◯こをキープしていたんだけど、この1週間くらいやっとふつうの固さに戻ったケンゾーです。
イランの食事が腹に合ってるのかな?
それとも禁酒してるからかな?
とりあえず、夫婦揃って2日連続でシモの話で失礼します。
こんなふたりのどこが気に入ったのか、イラン人の大学生マフブーベちゃんにべた惚れされてしまったケンゾーとイクエ。
熱烈なアタックに負けて部屋に泊まらせてもらうことになったのだった。
マフブーベちゃんは何度も「あと2、3日泊まってゆっくりしていけばいいじゃない」と言ってくれる。
とても嬉しいことだ。
でもそんなことをしていると、いくら時間があっても足りなくなってしまう。
それでなくてものんびり旅なケンゾーとイクエ。
これからは自転車旅なのでもっとスローペースになってしまう。
テンションだだ下がりのマフブーベちゃんには悪いけど、心を鬼にして予定通りきょうタブリーズを発つことに。
短い時間だったけど、マフブーベちゃんありがとう!

いよいよ、そしてとうとう、イクエの軽い思いつきでやることになった自転車旅のスタートだ。
はたしてどんな旅になるのか。
とりあえず、やれるとこまでやってみよう!


最初の目的地はタブリーズから215km離れたアルダビール。
もちろん、とてもじゃないけど1日でたどり着けるはずもない。
ど素人のふたりが1日でいったい何km走れるのか、さっぱり分からないのでとりあえずは60km先にあるボスターン・アーバードという街をめざそう。
ここには温泉もあるので、慣れない自転車旅でボロボロになった体を癒やすにはもってこいだ。

マフブーベちゃんの家を出てハイウェイに乗ったら、ボスターン・アーバードまではひたすら真っすぐの一本道。
と思ったら、ハイウェイに合流する道を間違えてしまった。
早めに気づいたからよかったけど、あぶないあぶない。
走ってきた道をすこし戻って、今度こそハイウェイに合流。
よっしゃー!チャリ旅はじまったぞー!
天気は快晴!
荷物の積み方を工夫したので昨日よりはずいぶん走りやすくなった。
イクエも昨日の調子だと正直無理かなと思ったりもしたんだけど、あまりフラフラすることもなくずいぶん様になってきてる。
ハイウェイは片側3車線あるし、側道の幅も広い。
でも猛スピードで走る車が真横をビュンビュン通り過ぎていくのでかなり怖い。
とくにトラックや大型バスがエンジン音を轟かせながら横を走っていくときにはかなり神経質になる。

それでもすぐに「自転車旅はじめてよかった!」って思ったんだよね。
なぜかというと・・・
横を通り過ぎていくほぼすべての車から声援が飛んでくるんだよ!
「グレイト!」とか「アメイジング!」って英語で声をかけてくれる人もいれば、トルコ語なのかペルシャ語なのか何を言ってるのかわかんないことも多いんだけど、みんなが笑顔で手を振ってくれる。
若い人からおじさんまで、真っ黒なチャドルに身を包んだおばさんたちも満面の笑顔で手を振ってくれる。
クラクションを鳴らしたり、拍手をしたり、親指を立ててグーッってしてくれたり。
なかには窓から体を乗り出して握手を求めてくる人も。
走りはじめてまだ30分くらいしか経ってないんだけど、ちょっと涙が出てきた。
自転車で走ってるだけなのに見ず知らずの外国人をこんなにも応援してくれるなんて。
なんだろうな、この幸せな気分は。
あっという間に自転車旅の魅力にはまってしまった。
下り坂は風をきって走れてすっごく気持ちいいんだけど、ちょっとでも上り坂になると途端にしんどくなる。
1時間くらい走ってちょっと休憩。
必死に漕いでるんだけどぜんぜん進まないなあ。
この調子できょうタブリーズを出られるのかな?

きょうのイクエの服装は、ファリバの71歳のお母さんからもらったピンクの蝶が乱れ飛ぶ派手な模様のシャツ。
スカーフはサイードのお母さんにもらったちょっと厚手のもの。
女性は外では長袖、スカーフが絶対だから女性の自転車旅は暑さとの闘いでもある。
ウールのスカーフは暑くてとてもじゃないけどやってられないとバンダナにチェンジ。
真夏のイランでは女性のサイクリストってどうしてたんだろね。


ふたたび走りはじめたケンゾーとイクエ。
すると1台の車が横付けして中からドライバーが英語で話しかけてきた。
「わたしはあなたたちをサポートしたい。」
サポート?どういうことだ?

なにをどうやってサポートするんだろう?
「ありがとうございます。
でもぼくたちスローペースなので大丈夫です。」
と言って丁重にお断りした。
すると、ハザードランプをつけてケンゾーたちの後ろをついてきはじめた。
これってひょっとして、ケンゾーとイクエをガードしてくれてるのかな。
でもここ一応ハイウェイだよ。
ほかの車からしょっちゅうクラクションを鳴らされてる。

なんだか逆に目立ってしまって危ない。
「ありがとうございます。
でも自分たちのペースでのんびり行くので、先に行ってください。」
と言うと、今度はケンゾーたちの前方を走り出した。
このあたりは長い上り坂。
イクエは30m漕いでは止まり、また漕いでは止まり。
はっきり言って歩いたほうが早いかもしれないくらいのノロノロさ。
それに合わせて前方をノロノロ走る車。
すでに5kmくらいこんな調子だ。

こりゃダメだ。
「ほんとうに僕らは大丈夫です。
先に行ってください。」
「どこまで行くの?アルダビール?!
今日はもう時間がないよ。
わたしの家でゆっくり休んであしたの朝出発するっていうのはどう?
家はすぐ近くだよ。」
と、まさかの家へのお誘い。
たしかにマフブーベちゃんの家を出るのが遅くなったのでもう夕方の4時だ。
長くてあと2時間くらいしか自転車で走ることはできない。
この人の言う通り、きょうはもう諦めてあした早朝から走りはじめたほうがいいかな。
というか、お誘いにのらないかぎり、この人はずっとこの調子でついてくるんじゃないかと不安になった。
ということで、記念すべき自転車旅初日はわずか3時間で終了。
タブリーズの端から端まで移動しただけでけっきょくタブリーズを出られずじまい。
走った距離はわずか17kmくらいかな。
こんな調子だといったいどれだけ時間がかかるんだろう?

車がビュンビュン行き交うハイウェイで声を掛けてきたのはモハンマド・レザー。
先導するモハンマドの車のうしろを自転車でついていく。
ノロノロ運転なのでブーブークラクションを鳴らされるモハンマド。
もうしわけないね。
そんなモハンマドの家は・・・なかなか立派な家だった。



モハンマドはイランで有名な重機メーカーに勤めている。
お姉さんが2人いる3人兄弟の末っ子。
国営の上下水道会社に勤めている一番上のお姉さんは34歳。
とても美人で知的な雰囲気。
イランでは珍しくまだ結婚はしていない。
英会話のレッスンに通ったり、陶芸を習ったりと、日本の独身女性と変わらないライフスタイルを送っている。
日本ではほとんどが恋愛結婚だと言うと、そうとう羨ましがっていた。
料理が上手な30歳の妹さんも未婚。
銀行に勤めてるそうだ。
写真の真ん中がお姉さんで左側が妹さん。

イランでは、家の中では「スカーフしなくていいよ」って言ってくれる家庭も多いけど、モハンマドの家はこれまでお世話になった家庭よりも敬虔なイスラム教徒。
お姉さんたちはずっと寝るとき以外スカーフをつけたまま。
モハンマドがタブリーズの街を案内してあげると言ってくれた。
タブリーズにはもうすでに1週間滞在してるケンゾーとイクエ。
サイードにも案内してもらったけど、最後のタブリーズ観光を楽しもう。
途中でモハンマドの親友も合流。
あとでお茶をするからお菓子を買うことに。
地元で有名だというお菓子屋さん。
ん?でもこれって・・・あれじゃない?


これぜったいケンタッキーのパクリだよね。
KFCじゃなくてKTCだけど。
まあ、ケンタッキーやマクドナルドがイランにはないようなのでほとんどのイラン人はパクリであると気づいていない。
タブリーズの夜景が見渡せる公園でティータイム。
アルコールが飲めないイランでは、おしゃべりしながら紅茶を飲むことが日常風景。
体がゴツい若者がティーカップ片手におしゃべりしてるのを見ると、なんだかかわいらしくて微笑ましい。
日本の飲み会なんか見たらビックリするだろうなあ。


ケンタッキーそっくりの店のお菓子は、イランでよく見かけるバーグラヴァーというパイのシロップ漬けだった。
噛むとジュワーっとシロップが口の中に広がる。
思ったよりは甘過ぎずけっこう美味しい。

わざわざ案内してくれてありがとう。
もうタブリーズに思い残すことはないよ。
(まさかこのときは、わずか2日後にタブリーズに舞い戻るはめになるなんて思ってなかったけど・・・。)

家に戻ると晩ご飯が準備されていた。
仕事から帰ってきたお父さんといっしょにディナータイム。
お母さんは身内にご不幸があったのでテヘランの親戚の家に行っているそうだ。
イランでは日本と同じように室内では靴を脱ぐ。
そして、こんなふうにシートを広げて床に座って食べるのが一般的。

妹さんが用意してくれた今夜のメニューはスープとチキン。
外のレストランで食べるより比べものにならないほど美味しい。
イランではレストランと家庭料理のレベルの差が激しい。


そしてビックリしたのがご飯。
日本で一昔前に見かけたような炊飯器で炊くんだけど、炊きあがりがこれ。


ケーキみたい!
このおこげがイラン人のお好みなんだって。
みんなボリボリいわせながらかじりつくんだよね。
食事の後はケンゾーとイクエの日本の写真を見せてあげた。
イラン人はほぼ100%の確率でイカの刺身にビックリする。
「切っただけでまだ動いてるうちに食べるんだ」って言うと眉間にしわを寄せてかなり気持ち悪がる。
生の魚を食べるなんて想像もつかないみたい。


モハンマドから「今後の予定は?」と聞かれたので、何日かかるか分からないけどアルダビールに行くつもりだと伝えると「危ないよ」と言われてしまった。
「ここからアルダビールまでの道は狭いし曲がりくねってるので危険だ。
アルダビールまでバスで行って、そこから自転車で走ったらいい。」
お姉さんにもバスで行くことを勧められた。
そんなに危ない道なのかな。
ていうか、自転車をバスに載っけられるの?
そんなこと考えてもなかった。
モハンマドに訪ねると「もちろんだよ、とてもイージーだよ。」だって。
地元の人の言うことは聞いてたほうがいいだろうな。
べつに「自転車だけで旅するんだ」なんてこだわりは持ってないし。
まあ自転車旅2日目にしていきなりバス利用ってのはヘタレすぎるかもしれないけど。
バスに自転車を載せるための交渉方法を教えてもらっているとモハンマドが「あしたの朝自分も自転車でいっしょにバスターミナルに行ってあげるよ。」って言ってきた。
え?モハンマドも自転車に乗るの?
「そうだよ。たまに会社まで自転車で行ったりもするよ。」
「そうなんだ!会社までどのくらい?」
「20kmくらいかな。」
「20km!!え?20kmを自転車で出勤するの?!」
「そうそう。バスターミナルまでだったら15分で着くよ。」
いやいやいや。
今日バスターミナルの横を通ってきたけど、ここまで1時間以上かかったよ!
ここからだと逆に下り坂が多いからずいぶん楽そうだけど15分じゃ無理だよ。
「モハンマドの自転車ってどんなの?見てもいい?」
って見せてくれた自転車がこれ。


これめっちゃ本格的でスゴいやつやん!
競輪選手が使うような自転車用の靴やサイクリングウェアももっている。
モハンマドってバリバリのサイクリストだったんだ!
ハイウェイをちんたら走ってるケンゾーとイクエの姿はさぞ滑稽でしかも危なっかしく見えてたんだろうな。
声をかけずにはいられなかったんだろう
うーわ、急に恥ずかしくなってきた。
そりゃこの速そうなやつだと15分で行けるだろうね。
でもケンゾーとイクエはぜったい無理だ。
トロトロ運転のケンゾーたちに付き合わせるのは申し訳ないので、モハンマドには車で行ってもらってバスターミナルで待ち合わせすることにした。
まさか自転車旅初日にサイクリストに助けられるなんてね。
まあこれも何かの縁だろうね。
経験者のアドバイスどおり、あしたバスに乗ってアルダビールまで行くことに。
いやあ、これって自転車旅って言えるのかな?
まあ行き当たりばったりのケンゾーとイクエらしいといえばらしいけどね。
まったく先が読めないふたりの自転車旅。
どうなることやら。
イランの食事が腹に合ってるのかな?
それとも禁酒してるからかな?
とりあえず、夫婦揃って2日連続でシモの話で失礼します。
こんなふたりのどこが気に入ったのか、イラン人の大学生マフブーベちゃんにべた惚れされてしまったケンゾーとイクエ。
熱烈なアタックに負けて部屋に泊まらせてもらうことになったのだった。
マフブーベちゃんは何度も「あと2、3日泊まってゆっくりしていけばいいじゃない」と言ってくれる。
とても嬉しいことだ。
でもそんなことをしていると、いくら時間があっても足りなくなってしまう。
それでなくてものんびり旅なケンゾーとイクエ。
これからは自転車旅なのでもっとスローペースになってしまう。
テンションだだ下がりのマフブーベちゃんには悪いけど、心を鬼にして予定通りきょうタブリーズを発つことに。
短い時間だったけど、マフブーベちゃんありがとう!

いよいよ、そしてとうとう、イクエの軽い思いつきでやることになった自転車旅のスタートだ。
はたしてどんな旅になるのか。
とりあえず、やれるとこまでやってみよう!


最初の目的地はタブリーズから215km離れたアルダビール。
もちろん、とてもじゃないけど1日でたどり着けるはずもない。
ど素人のふたりが1日でいったい何km走れるのか、さっぱり分からないのでとりあえずは60km先にあるボスターン・アーバードという街をめざそう。
ここには温泉もあるので、慣れない自転車旅でボロボロになった体を癒やすにはもってこいだ。

マフブーベちゃんの家を出てハイウェイに乗ったら、ボスターン・アーバードまではひたすら真っすぐの一本道。
と思ったら、ハイウェイに合流する道を間違えてしまった。
早めに気づいたからよかったけど、あぶないあぶない。
走ってきた道をすこし戻って、今度こそハイウェイに合流。
よっしゃー!チャリ旅はじまったぞー!
天気は快晴!
荷物の積み方を工夫したので昨日よりはずいぶん走りやすくなった。
イクエも昨日の調子だと正直無理かなと思ったりもしたんだけど、あまりフラフラすることもなくずいぶん様になってきてる。
ハイウェイは片側3車線あるし、側道の幅も広い。
でも猛スピードで走る車が真横をビュンビュン通り過ぎていくのでかなり怖い。
とくにトラックや大型バスがエンジン音を轟かせながら横を走っていくときにはかなり神経質になる。

それでもすぐに「自転車旅はじめてよかった!」って思ったんだよね。
なぜかというと・・・
横を通り過ぎていくほぼすべての車から声援が飛んでくるんだよ!
「グレイト!」とか「アメイジング!」って英語で声をかけてくれる人もいれば、トルコ語なのかペルシャ語なのか何を言ってるのかわかんないことも多いんだけど、みんなが笑顔で手を振ってくれる。
若い人からおじさんまで、真っ黒なチャドルに身を包んだおばさんたちも満面の笑顔で手を振ってくれる。
クラクションを鳴らしたり、拍手をしたり、親指を立ててグーッってしてくれたり。
なかには窓から体を乗り出して握手を求めてくる人も。
走りはじめてまだ30分くらいしか経ってないんだけど、ちょっと涙が出てきた。
自転車で走ってるだけなのに見ず知らずの外国人をこんなにも応援してくれるなんて。
なんだろうな、この幸せな気分は。
あっという間に自転車旅の魅力にはまってしまった。
下り坂は風をきって走れてすっごく気持ちいいんだけど、ちょっとでも上り坂になると途端にしんどくなる。
1時間くらい走ってちょっと休憩。
必死に漕いでるんだけどぜんぜん進まないなあ。
この調子できょうタブリーズを出られるのかな?

きょうのイクエの服装は、ファリバの71歳のお母さんからもらったピンクの蝶が乱れ飛ぶ派手な模様のシャツ。
スカーフはサイードのお母さんにもらったちょっと厚手のもの。
女性は外では長袖、スカーフが絶対だから女性の自転車旅は暑さとの闘いでもある。
ウールのスカーフは暑くてとてもじゃないけどやってられないとバンダナにチェンジ。
真夏のイランでは女性のサイクリストってどうしてたんだろね。


ふたたび走りはじめたケンゾーとイクエ。
すると1台の車が横付けして中からドライバーが英語で話しかけてきた。
「わたしはあなたたちをサポートしたい。」
サポート?どういうことだ?

なにをどうやってサポートするんだろう?
「ありがとうございます。
でもぼくたちスローペースなので大丈夫です。」
と言って丁重にお断りした。
すると、ハザードランプをつけてケンゾーたちの後ろをついてきはじめた。
これってひょっとして、ケンゾーとイクエをガードしてくれてるのかな。
でもここ一応ハイウェイだよ。
ほかの車からしょっちゅうクラクションを鳴らされてる。

なんだか逆に目立ってしまって危ない。
「ありがとうございます。
でも自分たちのペースでのんびり行くので、先に行ってください。」
と言うと、今度はケンゾーたちの前方を走り出した。
このあたりは長い上り坂。
イクエは30m漕いでは止まり、また漕いでは止まり。
はっきり言って歩いたほうが早いかもしれないくらいのノロノロさ。
それに合わせて前方をノロノロ走る車。
すでに5kmくらいこんな調子だ。

こりゃダメだ。
「ほんとうに僕らは大丈夫です。
先に行ってください。」
「どこまで行くの?アルダビール?!
今日はもう時間がないよ。
わたしの家でゆっくり休んであしたの朝出発するっていうのはどう?
家はすぐ近くだよ。」
と、まさかの家へのお誘い。
たしかにマフブーベちゃんの家を出るのが遅くなったのでもう夕方の4時だ。
長くてあと2時間くらいしか自転車で走ることはできない。
この人の言う通り、きょうはもう諦めてあした早朝から走りはじめたほうがいいかな。
というか、お誘いにのらないかぎり、この人はずっとこの調子でついてくるんじゃないかと不安になった。
ということで、記念すべき自転車旅初日はわずか3時間で終了。
タブリーズの端から端まで移動しただけでけっきょくタブリーズを出られずじまい。
走った距離はわずか17kmくらいかな。
こんな調子だといったいどれだけ時間がかかるんだろう?

車がビュンビュン行き交うハイウェイで声を掛けてきたのはモハンマド・レザー。
先導するモハンマドの車のうしろを自転車でついていく。
ノロノロ運転なのでブーブークラクションを鳴らされるモハンマド。
もうしわけないね。
そんなモハンマドの家は・・・なかなか立派な家だった。



モハンマドはイランで有名な重機メーカーに勤めている。
お姉さんが2人いる3人兄弟の末っ子。
国営の上下水道会社に勤めている一番上のお姉さんは34歳。
とても美人で知的な雰囲気。
イランでは珍しくまだ結婚はしていない。
英会話のレッスンに通ったり、陶芸を習ったりと、日本の独身女性と変わらないライフスタイルを送っている。
日本ではほとんどが恋愛結婚だと言うと、そうとう羨ましがっていた。
料理が上手な30歳の妹さんも未婚。
銀行に勤めてるそうだ。
写真の真ん中がお姉さんで左側が妹さん。

イランでは、家の中では「スカーフしなくていいよ」って言ってくれる家庭も多いけど、モハンマドの家はこれまでお世話になった家庭よりも敬虔なイスラム教徒。
お姉さんたちはずっと寝るとき以外スカーフをつけたまま。
モハンマドがタブリーズの街を案内してあげると言ってくれた。
タブリーズにはもうすでに1週間滞在してるケンゾーとイクエ。
サイードにも案内してもらったけど、最後のタブリーズ観光を楽しもう。
途中でモハンマドの親友も合流。
あとでお茶をするからお菓子を買うことに。
地元で有名だというお菓子屋さん。
ん?でもこれって・・・あれじゃない?


これぜったいケンタッキーのパクリだよね。
KFCじゃなくてKTCだけど。
まあ、ケンタッキーやマクドナルドがイランにはないようなのでほとんどのイラン人はパクリであると気づいていない。
タブリーズの夜景が見渡せる公園でティータイム。
アルコールが飲めないイランでは、おしゃべりしながら紅茶を飲むことが日常風景。
体がゴツい若者がティーカップ片手におしゃべりしてるのを見ると、なんだかかわいらしくて微笑ましい。
日本の飲み会なんか見たらビックリするだろうなあ。


ケンタッキーそっくりの店のお菓子は、イランでよく見かけるバーグラヴァーというパイのシロップ漬けだった。
噛むとジュワーっとシロップが口の中に広がる。
思ったよりは甘過ぎずけっこう美味しい。

わざわざ案内してくれてありがとう。
もうタブリーズに思い残すことはないよ。
(まさかこのときは、わずか2日後にタブリーズに舞い戻るはめになるなんて思ってなかったけど・・・。)

家に戻ると晩ご飯が準備されていた。
仕事から帰ってきたお父さんといっしょにディナータイム。
お母さんは身内にご不幸があったのでテヘランの親戚の家に行っているそうだ。
イランでは日本と同じように室内では靴を脱ぐ。
そして、こんなふうにシートを広げて床に座って食べるのが一般的。

妹さんが用意してくれた今夜のメニューはスープとチキン。
外のレストランで食べるより比べものにならないほど美味しい。
イランではレストランと家庭料理のレベルの差が激しい。


そしてビックリしたのがご飯。
日本で一昔前に見かけたような炊飯器で炊くんだけど、炊きあがりがこれ。


ケーキみたい!
このおこげがイラン人のお好みなんだって。
みんなボリボリいわせながらかじりつくんだよね。
食事の後はケンゾーとイクエの日本の写真を見せてあげた。
イラン人はほぼ100%の確率でイカの刺身にビックリする。
「切っただけでまだ動いてるうちに食べるんだ」って言うと眉間にしわを寄せてかなり気持ち悪がる。
生の魚を食べるなんて想像もつかないみたい。


モハンマドから「今後の予定は?」と聞かれたので、何日かかるか分からないけどアルダビールに行くつもりだと伝えると「危ないよ」と言われてしまった。
「ここからアルダビールまでの道は狭いし曲がりくねってるので危険だ。
アルダビールまでバスで行って、そこから自転車で走ったらいい。」
お姉さんにもバスで行くことを勧められた。
そんなに危ない道なのかな。
ていうか、自転車をバスに載っけられるの?
そんなこと考えてもなかった。
モハンマドに訪ねると「もちろんだよ、とてもイージーだよ。」だって。
地元の人の言うことは聞いてたほうがいいだろうな。
べつに「自転車だけで旅するんだ」なんてこだわりは持ってないし。
まあ自転車旅2日目にしていきなりバス利用ってのはヘタレすぎるかもしれないけど。
バスに自転車を載せるための交渉方法を教えてもらっているとモハンマドが「あしたの朝自分も自転車でいっしょにバスターミナルに行ってあげるよ。」って言ってきた。
え?モハンマドも自転車に乗るの?
「そうだよ。たまに会社まで自転車で行ったりもするよ。」
「そうなんだ!会社までどのくらい?」
「20kmくらいかな。」
「20km!!え?20kmを自転車で出勤するの?!」
「そうそう。バスターミナルまでだったら15分で着くよ。」
いやいやいや。
今日バスターミナルの横を通ってきたけど、ここまで1時間以上かかったよ!
ここからだと逆に下り坂が多いからずいぶん楽そうだけど15分じゃ無理だよ。
「モハンマドの自転車ってどんなの?見てもいい?」
って見せてくれた自転車がこれ。


これめっちゃ本格的でスゴいやつやん!
競輪選手が使うような自転車用の靴やサイクリングウェアももっている。
モハンマドってバリバリのサイクリストだったんだ!
ハイウェイをちんたら走ってるケンゾーとイクエの姿はさぞ滑稽でしかも危なっかしく見えてたんだろうな。
声をかけずにはいられなかったんだろう
うーわ、急に恥ずかしくなってきた。
そりゃこの速そうなやつだと15分で行けるだろうね。
でもケンゾーとイクエはぜったい無理だ。
トロトロ運転のケンゾーたちに付き合わせるのは申し訳ないので、モハンマドには車で行ってもらってバスターミナルで待ち合わせすることにした。
まさか自転車旅初日にサイクリストに助けられるなんてね。
まあこれも何かの縁だろうね。
経験者のアドバイスどおり、あしたバスに乗ってアルダビールまで行くことに。
いやあ、これって自転車旅って言えるのかな?
まあ行き当たりばったりのケンゾーとイクエらしいといえばらしいけどね。
まったく先が読めないふたりの自転車旅。
どうなることやら。
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