おかあと合流し、日本から持ってきてもらった肌用のカミソリで眉毛を久しぶりに整えたら、出血したイクエです。
海外では女性が使うまっすぐなカミソリがなかなか売ってなくて、T字型のしかないんだよねー。
イクエとケンゾーがなぜ、わざわざアゼルバイジャンに来たのか。
それはコーカサス地方から陸路でも、空路でも、海路でもなく、湖路で中央アジアへと向かうため。
そう、世界最大の湖カスピ海を渡って国境越えをするのだ~!
湖だけどカスピ「海」っていうくらいなので、向こうの岸辺なんてまったく見えない。
ほんとうに海みたい。

本当はアゼルバイジャンからトルクメニスタンにぬけたかったんだけど、トルクメニスタンのビザを取ることができなかったので、カザフスタンのアクタウを目指す。

でも乗るフェリーがクセものなのよ。
フェリーというより、ただしくは貨物船。
しかも不定期便。
「貨物といっしょについでにわたしたちものっけてくれませんか?」という感じでのっけてもらうのだ。
出港日も出港時間も当日にならないとわからない。
人をのっけるスペースがあるのか、のっけてもらえるのかも直前でないとわからない。
運が悪ければ1週間くらい待たないといけないんだって
こりゃ、長期戦だ。
そう覚悟を決めていたら
宿の人が「きょうは出港するかもよ」と教えてくれた。
さいさき良い〜 ♪
朝からチケット売場に行ってみる。
チケット売場って言ったってね、一般の人が行くような場所じゃないんだよ。
すごくわかりにくいらしい。
地元の人が教えてくれた。
「公園を過ぎてすぐを右に曲がる」
ポートバクーパークという公園の前を東に進むと、曲がり角が見えてきた。
「ねえねえ、ここ曲がるっちゃない?」
イクエの言葉を無視するようにケンゾーは歩き続ける。
「ケンゾーってば! ここ曲がるんやない?」
「いや、ここじゃないやろ。」
「とりあえず、見てくるよ。」
ケンゾーは不満そうな顔をしてイクエのあとをついて来る。
「こんなところに無いやろ。」ってぶつぶつ言いながら。
みなさん、どう思います?
トラックが出入りしているこの先にチケット売場はあるのでしょうか。

それがね、ありましたよ。
チケット売場なんて名前で呼べないような建物が。

室内には英語をしゃべれないおばちゃんひとり。
単語を並べて「フェリーでカザフスタンに行きたい」って言うのを伝える。

幸運なことに、きょうの午後フェリーが出航するらしい。
「午後3時にここに荷物を全部もって来なさい。
チケットはそのときに売ってあげる。」
バッグを背負うようなジェスチャーで伝えるおばちゃん。
急がないと!
宿に戻ってさっそく荷造り。
フェリーにどのくらい乗らないといけないのかわからないけど、長ければ2泊3日くらいかかるらしい。
だからとりあえず3日分の食料が必要。
アゼルバイジャンのお金が余ってもしかたないので、お財布の中身とにらめっこしながら缶詰やパン、カップヌードルを買い込む。
バックパックに食料や水。
めちゃくちゃ重い荷物を持って、夕方ふたたびおばちゃんのところへ。
するとおばちゃんが言う。
「ニェート!!」
ニェ、ニェート!?
ニェートってのは、「ねぇよ」ってこと。
フェリーの乗客の定員は11人で、もう人数に達したから乗せられないんだって


わたしたちの失望した顔を見て、おばちゃんが船長に電話してくれた。
頼むよ、おばちゃん。
どこでもいいから乗せてちょうだい!
荷物もって炎天下のなか、ここまで来たんだよ。
食材も買い込んでるし、アゼルバイジャンのお金ももう使い果たしたんだよ。
「個室は無くても余ってるスペースでいいから乗せてあげて」って頼んでくれるおばちゃんに船長の答えは「ニェート」。
きょうに限って、複数の欧米人チャリダーが乗船するから載せる自転車も多くて空きスペースもないんだって・・・。

3日分の食料と荷物を持って、足取り重く、あの激高足臭ホテルに戻る。
ホテルからは船に乗る欧米人チャリダーたちが出て行ったので足臭はほぼ消えていた。
きょうのフェリーに乗り損ねたアメリカ人チャリダーとともに、このホテルの唯一の利点、Wi-Fiでネット。
「あしたフェリーが出ればいいけど、今日出港したから明日はないよねえ」
「うん、そう思う。
早くてもあさって以降だよね・・・。」

次の朝。
アメリカ人と話しながら、インスタントコーヒーをすすっていると寝ぼけ眼の宿のおばちゃんが2階から顔を出した。
「あんたたち、何やってるの!?
きょうフェリー出港するみたいだよ。
あと1時間後だから、早く急ぎなさい!!」
ええー!
もう出港するの?
急いで荷物をまとめてチケット売場へ。
時間は未定だけど、やっぱりきょう出港するんだって!
とにかく乗れる ♪
チケット代はけっこうお高くて90マナト(約11000円)。
出港を待つためのアゼルバイジャンでの滞在費も含めると、飛行機のほうがかえって安かったかも・・・。
(逆コースでカザフスタンからアゼルバイジャン行きのチケットを買うと若干安いかも。)
待合室に向かう。
いや、「室」じゃないな。
ドアも窓もない待ち合い「スペース」。

すると、そこにいた現地の人たちがいっせいにこっちを見た。
「オオ~! イポーン(日本)!!」
あれ?
みんなまだいるの?
実はこの人たち、きのうもここにいたメンバー。
フェリーでトルクメニスタンに行きたいんだけど、船が出航せずにここで待ちぼうけ。
なんと、ここに寝泊まりしながらすでに3日が過ぎている!!
まだ3歳くらいの小さな子どももいるんだよ。
ここを離れず、みんなでここでご飯を食べて、一日何もせずにただフェリーが出港するのを待ちながら、この細いベンチに横になって夜を明かしている。
「いったいいつ出るの?」「何日待たせるの?」って文句を言いたいところだけど、貨物船に乗せてもらう身。
文句は言えない。
そこにはスイスからバイクで大陸を横断しているカップルもいた。
彼らはトルクメニスタンのトランジットビザを持っているけどビザの有効期限はたったの5日間。
フェリーの出港が遅れればトルクメニスタンに滞在できる日にちがどんどん削られる。
最悪の場合は、出港を待っている間にビザの期限が切れてしまうことだってありえる。
恐ろしや、カスピ海の国境越え。
3日間こんな環境の悪い待ち合いスペースで待機しているにもかかわらず、一足先にカザフスタンに向かうイクエとケンゾーに現地の人は笑顔で手を振ってくれた。
大量の食料をもって、いざ貨物船へ。
こんな貨物の港で人間の出国手続きはできるのかなあ。

小さくて粗末な建物。
一応空港みたいに荷物をスキャンしてチェック。
パスポートを見せてカメラで顔を写されて、出国スタンプを押される。

出国手続きをする外国人はイクエとケンゾーとアメリカ人チャリダーの計3人だけなのに、職員は8人くらいいた。
船がでない日だって多いのに、スタッフが多すぎ。
8人中4人くらい机に突っ伏して寝てたけどね。
フェリーに近づいていく。
湖での国境越え。
ワクワクしてきた。
フェリーは下から見るとずいぶん大きい。

どこから乗り込むのかわからなくてウロウロしていたら、デッキから乗組員に声をかけられた。
「こっちにあがってこい」
こっちにあがってこいっていったって、客船じゃないしどっから入ってどこからデッキにあがればいいのやら。
貨物列車の脇を通る。

なんでフェリーなのに列車なのかというと・・・。
こんなふうになってるから。

フェリーの後方3分の2のスペースにはレールが敷かれていて、貨物列車ごと搬入されている。
両サイドの丸い貨物にはガソリンって表示されているから、ガソリンなんかもこのフェリーでカザフスタンへと輸出するみたい。
こりゃ、完全な貨物船。
デッキにベンチもないしわたしたちの乗るスペースってあるの?
と思っていたら、ちゃんとした個室を提供してくれた♡

この船はクロアチアで造られたものらしく、まだ真新しい。
なんとなんと、個室にはきれいなシャワー室もある ♪
しかもばっちりお湯がでるシャワー!
あの足臭ホテルよりもかなりいい環境だ!

唯一の欠点は窓がないこと。
窓ありの個室は乗組員が使っている。
しかもソファーまである。
そして船長の部屋は大きくて、りっぱな書斎までついていた。
操縦席には自由に出入りすることができる。
みんなフレンドリー。


このさっぱりしたケンゾーの髪。
これまでドミトリーで生活していたイクエとケンゾー。
久しぶりの個室だから、この機会に伸びていたケンゾーの髪をイクエがカット
イクエのカットの腕もあがってきたなあ。
いやあ、快適な個室が使えるし、フェリーでの国境越え、楽しめそうだな〜。
食材も余裕をもって3日分買ってきたから食べ物に困ることもない。

海風、ちがった、湖風が心地いい。
きれいな個室でゆっくり寝て、うまくいけば明日にはカザフスタンに着く。
しゅっぱ〜つ、しんこう〜 ♪

清々しい表情のイクエとケンゾー。
このときはまだ、知るよしもなかった。
ふたりがこれから〇日間、フェリーに軟禁されることを。
そして、ふたりに食料危機が押し寄せることを・・・。
海外では女性が使うまっすぐなカミソリがなかなか売ってなくて、T字型のしかないんだよねー。
イクエとケンゾーがなぜ、わざわざアゼルバイジャンに来たのか。
それはコーカサス地方から陸路でも、空路でも、海路でもなく、湖路で中央アジアへと向かうため。
そう、世界最大の湖カスピ海を渡って国境越えをするのだ~!
湖だけどカスピ「海」っていうくらいなので、向こうの岸辺なんてまったく見えない。
ほんとうに海みたい。

本当はアゼルバイジャンからトルクメニスタンにぬけたかったんだけど、トルクメニスタンのビザを取ることができなかったので、カザフスタンのアクタウを目指す。

でも乗るフェリーがクセものなのよ。
フェリーというより、ただしくは貨物船。
しかも不定期便。
「貨物といっしょについでにわたしたちものっけてくれませんか?」という感じでのっけてもらうのだ。
出港日も出港時間も当日にならないとわからない。
人をのっけるスペースがあるのか、のっけてもらえるのかも直前でないとわからない。
運が悪ければ1週間くらい待たないといけないんだって

こりゃ、長期戦だ。
そう覚悟を決めていたら
宿の人が「きょうは出港するかもよ」と教えてくれた。
さいさき良い〜 ♪
朝からチケット売場に行ってみる。
チケット売場って言ったってね、一般の人が行くような場所じゃないんだよ。
すごくわかりにくいらしい。
地元の人が教えてくれた。
「公園を過ぎてすぐを右に曲がる」
ポートバクーパークという公園の前を東に進むと、曲がり角が見えてきた。
「ねえねえ、ここ曲がるっちゃない?」
イクエの言葉を無視するようにケンゾーは歩き続ける。
「ケンゾーってば! ここ曲がるんやない?」
「いや、ここじゃないやろ。」
「とりあえず、見てくるよ。」
ケンゾーは不満そうな顔をしてイクエのあとをついて来る。
「こんなところに無いやろ。」ってぶつぶつ言いながら。
みなさん、どう思います?
トラックが出入りしているこの先にチケット売場はあるのでしょうか。

それがね、ありましたよ。
チケット売場なんて名前で呼べないような建物が。

室内には英語をしゃべれないおばちゃんひとり。
単語を並べて「フェリーでカザフスタンに行きたい」って言うのを伝える。

幸運なことに、きょうの午後フェリーが出航するらしい。
「午後3時にここに荷物を全部もって来なさい。
チケットはそのときに売ってあげる。」
バッグを背負うようなジェスチャーで伝えるおばちゃん。
急がないと!
宿に戻ってさっそく荷造り。
フェリーにどのくらい乗らないといけないのかわからないけど、長ければ2泊3日くらいかかるらしい。
だからとりあえず3日分の食料が必要。
アゼルバイジャンのお金が余ってもしかたないので、お財布の中身とにらめっこしながら缶詰やパン、カップヌードルを買い込む。
バックパックに食料や水。
めちゃくちゃ重い荷物を持って、夕方ふたたびおばちゃんのところへ。
するとおばちゃんが言う。
「ニェート!!」
ニェ、ニェート!?
ニェートってのは、「ねぇよ」ってこと。
フェリーの乗客の定員は11人で、もう人数に達したから乗せられないんだって



わたしたちの失望した顔を見て、おばちゃんが船長に電話してくれた。
頼むよ、おばちゃん。
どこでもいいから乗せてちょうだい!
荷物もって炎天下のなか、ここまで来たんだよ。
食材も買い込んでるし、アゼルバイジャンのお金ももう使い果たしたんだよ。
「個室は無くても余ってるスペースでいいから乗せてあげて」って頼んでくれるおばちゃんに船長の答えは「ニェート」。
きょうに限って、複数の欧米人チャリダーが乗船するから載せる自転車も多くて空きスペースもないんだって・・・。

3日分の食料と荷物を持って、足取り重く、あの激高足臭ホテルに戻る。
ホテルからは船に乗る欧米人チャリダーたちが出て行ったので足臭はほぼ消えていた。
きょうのフェリーに乗り損ねたアメリカ人チャリダーとともに、このホテルの唯一の利点、Wi-Fiでネット。
「あしたフェリーが出ればいいけど、今日出港したから明日はないよねえ」
「うん、そう思う。
早くてもあさって以降だよね・・・。」

次の朝。
アメリカ人と話しながら、インスタントコーヒーをすすっていると寝ぼけ眼の宿のおばちゃんが2階から顔を出した。
「あんたたち、何やってるの!?
きょうフェリー出港するみたいだよ。
あと1時間後だから、早く急ぎなさい!!」
ええー!
もう出港するの?
急いで荷物をまとめてチケット売場へ。
時間は未定だけど、やっぱりきょう出港するんだって!
とにかく乗れる ♪
チケット代はけっこうお高くて90マナト(約11000円)。
出港を待つためのアゼルバイジャンでの滞在費も含めると、飛行機のほうがかえって安かったかも・・・。
(逆コースでカザフスタンからアゼルバイジャン行きのチケットを買うと若干安いかも。)
待合室に向かう。
いや、「室」じゃないな。
ドアも窓もない待ち合い「スペース」。

すると、そこにいた現地の人たちがいっせいにこっちを見た。
「オオ~! イポーン(日本)!!」
あれ?
みんなまだいるの?
実はこの人たち、きのうもここにいたメンバー。
フェリーでトルクメニスタンに行きたいんだけど、船が出航せずにここで待ちぼうけ。
なんと、ここに寝泊まりしながらすでに3日が過ぎている!!
まだ3歳くらいの小さな子どももいるんだよ。
ここを離れず、みんなでここでご飯を食べて、一日何もせずにただフェリーが出港するのを待ちながら、この細いベンチに横になって夜を明かしている。
「いったいいつ出るの?」「何日待たせるの?」って文句を言いたいところだけど、貨物船に乗せてもらう身。
文句は言えない。
そこにはスイスからバイクで大陸を横断しているカップルもいた。
彼らはトルクメニスタンのトランジットビザを持っているけどビザの有効期限はたったの5日間。
フェリーの出港が遅れればトルクメニスタンに滞在できる日にちがどんどん削られる。
最悪の場合は、出港を待っている間にビザの期限が切れてしまうことだってありえる。
恐ろしや、カスピ海の国境越え。
3日間こんな環境の悪い待ち合いスペースで待機しているにもかかわらず、一足先にカザフスタンに向かうイクエとケンゾーに現地の人は笑顔で手を振ってくれた。
大量の食料をもって、いざ貨物船へ。
こんな貨物の港で人間の出国手続きはできるのかなあ。

小さくて粗末な建物。
一応空港みたいに荷物をスキャンしてチェック。
パスポートを見せてカメラで顔を写されて、出国スタンプを押される。

出国手続きをする外国人はイクエとケンゾーとアメリカ人チャリダーの計3人だけなのに、職員は8人くらいいた。
船がでない日だって多いのに、スタッフが多すぎ。
8人中4人くらい机に突っ伏して寝てたけどね。
フェリーに近づいていく。
湖での国境越え。
ワクワクしてきた。
フェリーは下から見るとずいぶん大きい。

どこから乗り込むのかわからなくてウロウロしていたら、デッキから乗組員に声をかけられた。
「こっちにあがってこい」
こっちにあがってこいっていったって、客船じゃないしどっから入ってどこからデッキにあがればいいのやら。
貨物列車の脇を通る。

なんでフェリーなのに列車なのかというと・・・。
こんなふうになってるから。

フェリーの後方3分の2のスペースにはレールが敷かれていて、貨物列車ごと搬入されている。
両サイドの丸い貨物にはガソリンって表示されているから、ガソリンなんかもこのフェリーでカザフスタンへと輸出するみたい。
こりゃ、完全な貨物船。
デッキにベンチもないしわたしたちの乗るスペースってあるの?
と思っていたら、ちゃんとした個室を提供してくれた♡

この船はクロアチアで造られたものらしく、まだ真新しい。
なんとなんと、個室にはきれいなシャワー室もある ♪
しかもばっちりお湯がでるシャワー!
あの足臭ホテルよりもかなりいい環境だ!

唯一の欠点は窓がないこと。
窓ありの個室は乗組員が使っている。
しかもソファーまである。
そして船長の部屋は大きくて、りっぱな書斎までついていた。
操縦席には自由に出入りすることができる。
みんなフレンドリー。


このさっぱりしたケンゾーの髪。
これまでドミトリーで生活していたイクエとケンゾー。
久しぶりの個室だから、この機会に伸びていたケンゾーの髪をイクエがカット

イクエのカットの腕もあがってきたなあ。
いやあ、快適な個室が使えるし、フェリーでの国境越え、楽しめそうだな〜。
食材も余裕をもって3日分買ってきたから食べ物に困ることもない。

海風、ちがった、湖風が心地いい。
きれいな個室でゆっくり寝て、うまくいけば明日にはカザフスタンに着く。
しゅっぱ〜つ、しんこう〜 ♪

清々しい表情のイクエとケンゾー。
このときはまだ、知るよしもなかった。
ふたりがこれから〇日間、フェリーに軟禁されることを。
そして、ふたりに食料危機が押し寄せることを・・・。
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