数日間手のひらに刺さったトゲで不快な思いをしていたケンゾーです。
ものすごく痛いという訳ではないけど、チクチク気になって仕方がない。
我慢できなくなって、さっきカッターで切開して毛抜きで抜いたら拍子抜けするほど細くて小さなトゲだった。
妻に大げさ!って笑われてしまったよ。
生まれてはじめて「ゾウが恐い」と思った衝撃的な一夜を過ごしたケンゾーとイクエ。
それでも、ここアフリカでしか体験できないシチュエーションにテンションが上がる。
もっとゾウを間近に見るためにサファリに参加することに。
メジャーなケニアやタンザニアと比べてマイナーなマラウイでは破格の値段でサファリが楽しめる。
このロッジでは1人25USドル。
あまりの安さに「ほんとに動物見られるのかなあ」とちょっと心配。
ゾウにひっくり返されたから車がない!って言われたらどうしようとチラッと思ったけど、ちゃんとしたサファリカーが登場。
おお、いいねいいね。
サファリっぽくてテンション上がるよ。

参加するのは、自分のレンタカーの隣に止めていた車がゾウにひっくり返されるという人生で一度きりのスリルを味わった女の子とケンゾーとイクエ。
これにドライバーとガイドの5人でサファリスタート!
ギシギシ、ミシミシ、いまにも底が抜けそうな頼りない橋を渡って国立公園の入口へ。
ツアー料金とは別に国立公園の入場料1人10USドルが必要。

木が生い茂る林の中をゆっくりと進んでいく。
ファーストコンタクトはどの動物かな?
ぜったいに見逃すまいとキョロキョロと前後左右に視線を送る。

あ!なにかいた!
黒くて赤いへんなヤツ!


これはアフリカクロトキ。
体長は1m近くあるんじゃないかな、けっこうデカい。
黒い羽を広げてまっ赤な顔が目の前に飛んで来たら怖いよね。
次は鳥じゃなくて動物がいいなあ。
ワクワクしながら林を進んでいく。
細い木ばかりの林の中で主のように存在感抜群なバオバブの木。
そんなバオバブの木の幹だけ皮が剥ぎ取られたように傷ついている。


古い傷に混じってまだ真新しい傷跡も。
見るからに痛々しい。
この傷の正体はゾウ。
バオバブは樹皮と幹に大量の水分を蓄えている。
大きな木だと10トンもの水分を含んでいるんだそう。
乾期になると水に飢えたゾウが樹皮を剥ぎ取って食べたり、幹に穴を空けたりするんだって。
樹皮はとても硬いけれど、中はスポンジのように柔らかくて大量の水を含んでいる。
喉があまりにも渇き過ぎて、バオバブを押し倒すゾウもいるんだそう。
穏やかでのんびりしてるイメージのゾウだけど、けっこう気性が荒いんだ。
象の大群に出会うことを願いながらさらに奥地へと進んでいく。
しばらくすると、サファリ定番の動物が見えてきた。
肉食動物に食べられる、か弱い草食動物の代表、インパラ。


尻尾とお尻の両脇についている黒い筋が川の字みたいでかわいい。
みんな同じ顔にしか見えないけど、子どもは自分のお母さんをすぐに見分けられるのかな。
じっとこちらを見つめているのはウォーターバック。
お尻をぐるりと取り囲む白くて丸い模様が特徴的。


ダーツの的みたいでおもしろいね。
肉食獣がお尻めがけてガブッと食いついてきそう。
林を抜けるとだだっ広い草原に出た。
遠くにゴマのような黒いものが点在している。
望遠レンズを覗くと正体が判明。
待望のゾウの大群だった。


親子ゾウがたくさんいる。
すごい、大群だ!
でも遠い!!
近くまで行きたいけど、これ以上は進入禁止。
う~ん、これだったらロッジのほうが近くで見られるよ。
よく見るとゾウと至近距離のところに現地人がいる。
あそこまで行けたら迫力満点のゾウを見られるのになあ。

後ろ髪を引かれながらゾウの大群にお別れすると、別の大群に遭遇。
横たわって休んでいるのはバッファロー。
これは近い。


近すぎるのかノソノソと立ち上がって警戒する素振りを見せるやつも出てきた。
いかつい顔でじっとこちらを見ている。

牛科の動物だけどなかなか気性が荒いバッファロー。
ライオンに襲われた仲間を集団で助け出すという男気に溢れた動物でもある。
「復讐」という概念を持っていて、やられたらやり返す、かなりデンジャラスな奴ら。
横になってモグモグと口を動かしているバッファロー。
そんな長時間眺めているほど面白みもない。
時間も限られているし早く次の動物を探しに移動したいんだけど、なぜかドライバーの青年とガイドのおっちゃんがバッファローに食いついている。
2人して双眼鏡を取り出してバッファローをガン見。

客の3人はもう飽きちゃってるんだけど、まったく動こうとしないドライバーとガイド。
しまいには、ガイドのおっちゃんが手を出してまるで飼い犬を呼ぶようにバッファローに「おいでおいで」をしはじめた!

いやいや、勘弁してよ!
なんでわざわざデンジャラスなバッファローを刺激するのさ!
車とバッファローの距離は20mくらい、けっこう近い。
案の定、おっちゃんのかけ声に刺激されて次々とバッファローが立ち上がる!
やばいよ、顔がなんか怒ってるよ!


笑いながら「彼らはとてもデンジャラスなんだよ」と言うおっちゃん。
そんなん知っとるわ!
満足したのかやっとバッファロー達から離れていく。
ふーっと息を漏らしながら3人で苦笑い。
そんな人間達を凝視する家族が1組。

イクエが大好きなイボイノシシ。
イノシシは短足なイメージがあるけれど、こうして見るとけっこう足が長くてスマート。
この足を活かして時速50kmで走れるんだって。
大きな鹿のような動物が車の前を横切っていく。
クドゥという鹿の一種。
角の生えていないメスはなんだかちょっと間抜けに見える。


視線を感じて周囲の木を見上げると、目つきの鋭い鳥を発見。
これ何ていうタカだろう。
獲物を見つけたのか音もなくしなやかに飛び立った。



ハンティングに失敗したのか、そもそも獲物なんかいなかったのか分からないけど何も掴まずに飛び去って行った。
ちなみに、外見がそっくりなタカとワシ。
ほとんど生物学上の違いはなく、大型のものをワシ、比較的小型のものをタカと呼んでいるんだそう。
そういえば、ケンゾーの地元福岡のソフトバンクホークスの監督が秋山さんから工藤さんに変わっててビックリ。
いつの間にかメジャーから松坂も加入してるし、相変らず豪華な顔ぶれ。
今年もがんばれ若鷹軍団!
こんな感じでの〜んびりとした感じでサファリは終了。
リウォンデ国立公園には肉食動物はいないので派手さはない。
ボートサファリに参加するとカバやワニを見ることができるみたい。
けっきょく今日のハイライトは、ガイドのおっちゃんが興奮させたバッファローの鼻息が荒くなったことかな?

ゆる〜いサファリを楽しんでロッジに戻ると、ゾウにひっくり返されたオーナーの車が元に戻ってた。
ガソリン臭い匂いが残ってる以外は、パッと見ただけでは轟音を立ててひっくり返されたとは思えない。
さすが日本車。

これでケンゾーとイクエのマラウイの旅は終了。
首都のリロングウェに戻って1泊、翌日となりのザンビアへ入国し首都のルサカをめざすことに。

リウォンデからリロングウェまでのバスは1人3000クワチャ(約750円)。
フレンドリーで穏やかで人のいいマラウイ人と、のどかなマラウイの景色ともさよならだ。


リロングウェのバスターミナル前にあるバス・トイレ、冷蔵庫つきの1泊5000クワチャ(約1250円)の宿でマラウイ最後の夜を過ごす。


ほんとはリロングウェからザンビアのルサカまで直通の国際バスに乗るつもりだったケンゾーとイクエ。
だけど毎日は運行してなくて、残念なことにこの日は運休。
これ以上リロングウェに滞在する理由がないので、ローカルバスを乗り継いでルサカまで移動することに決定。
このときはまだ、これがこの旅でいちばん辛い移動になるとは思いもしてなかった・・・。
翌朝、長い長い一日がはじまる。
まずはザンビアとの国境まで乗合いワゴンで移動する。
朝6時にワゴン乗り場へ。

国境にいちばん近いのはムチンジという街。
街からボーダーまでは14kmほど距離がある。
客引きのおっちゃんに何度も「ボーダーまで行く?」って確認して「行くよ」って言うから、ボーダーまで1人2300クワチャ(約580円)を払ってワゴンに乗車。
けれどこれが失敗だった。
よくあることだけど、乗合いワゴンはムチンジまで。
ボーダーまでワゴン乗り場で待ち構えているタクシーに乗り換えて行かないといけない。

もちろんボーダーまでの料金を払っているのでタクシー代は払わなくていいんだけど、ワゴンのドライバーがタクシー代を水増ししていたことが発覚。
すったもんだの末少し取り戻したんだけど、ムチンジまでの料金を払って乗合いワゴンに乗り、ボーダーまで自分でタクシーを捕まえたほうが安くすむ。
気を取り直してマラウイ側のイミグレーションへ。
イミグレーションの前には両替商の男たち。
余ったマラウィクワチャを両替してもらおう。
レートを確認する。
「先にイミグレーション行ってから、あとで両替してもらうよ。」
「わかった。ここで待ってるよ。」
男たちに見守られながらイミグレーションの建物へ。
ここでふたりが予想もしていなかった事態が発生。

いつもの国境越えと同じように、まずはケンゾーがパスポートを提出。
とくに問題なくガチャンとスタンプが押されて返却されるパスポート。
つづいてイクエ。
ガチャンと押され・・・。
返却され・・・ないパスポート。
係員がイクエのパスポートをじーっと見つめている。
「なんだよ!早くしてくれよ!」
じれったいケンゾーとイクエ。
係員から予想外の一言が。
「オフィスの中に入って来なさい」
ええー、なんで?!
スタンプ押したやん!
バスを乗り継がないといけないから時間がないのに!
ぶーぶー言いながらオフィスの中へ。
「なに?
俺たちただのツーリストだよ。
スタンプ押したんだから早くパスポート返してよ!」
オフィスにいたのはおばちゃんの警察官。
「あんたたち、マラウイで何してたの?」
「だからあ、ツーリストだって言ってるでしょ。
観光してたに決まってるやん!」
そう文句を言うケンゾーとイクエに、これまた予想外の一言を言い放つおばちゃん。
「あなたたち、昨日までしかマラウイに滞在できないのに、
きょう一日何してたの?」
へ?
昨日までしか滞在できないってどういうこと?
きっとこの時、ふたりとも口をぽかーんと開けて間抜けな顔してただろうなあ。
「あなたたちはマラウイに2週間しか滞在できないのよ。
どうして今マラウイにいるの?」
2週間?
あっ!!
サーッと血の気が引いていく。
そういえば、入国スタンプの下に『14days 』って書かれた記憶が!
頭の中で何度数えなおしても今日は入国して15日目だ。
やっちまったー!!
日本人はマラウイ入国にビザは必要ないけれど、2週間しか滞在できない。
入国するときは1週間くらいでザンビアに抜けるつもりだったのでまったく気にも留めてなかった。
生まれてはじめてオーバーステイをしてしまったケンゾーとイクエ。
数え間違えてました、ごめんなさい!
打って変わって低姿勢で謝るケンゾーとイクエ。
けれど「もう、しょうがないわね」とはならない。
「今すぐリロングウェに戻って裁判所に出頭しないといけないわね。」
1日のオーバーステイで裁判所?
そんな話聞いたことない。
「日本大使館に連絡するのでちょっと待ってください。」
「大使館?
それはダメよ。」
「どうして?
電話するくらいの権利はあるでしょ?
どうしたらいいか聞くからちょっと待って。」
「ノー!! 電話なんかさせない!!」
「でも日本とマラウィの問題だから、聞かないと!」
「日本は関係ない。わたしたちとあなたたちの問題。」
大使館に電話するとは言ったものの、電話番号を知らないふたり。
ノーとは言ったものの、ダメな理由を言わないおばちゃん警察官。
こう着状態がしばらくつづく。
「リロングウェまで行かなくても、ここでお金を払えばいいわ。
レシートは渡せないけどね。」
つまり、これは賄賂の要求か?
躊躇していると、ほかの現地人の男性も中に入ってきてお金を渡して何やら交渉している。
男性のもってきたお金が少額だったのか、警察官はつっぱねて、男性は出直した。
ここではこんなことが日常茶飯事なのだろう。
賄賂なんて払いたくないけど、日本大使館にも連絡できないしほかに方法がない。
「レシートください。」
「ダメ、レシートはあげられない。
裁判所に出頭させるわよ。」
「いくら払えばいいんですか?」
「2人で2万クワチャね。」
5000円?高!!
マラウイの物価を考えたら高過ぎだよ。
「料金表を見せてください。
ほんとうに2万クワチャかどうか確かめたいです。」
「ない!」
「もうザンビアに行くから1万しかないんですけど。」
「・・・いいわ、1万で。
そのかわり、もう2度とマラウイには入国できないわよ。」
はあ、2500円は痛いけど、お金で解決できてよかった。
お金を払ってやっとパスポートが手元に戻ってきた。
一安心してちょっと言ってみた。
「そのお金、みんなのポケットに入るんだよね?
よかったね、これで豪華なランチが食べられるね。」
「そんなことないわ、これは政府のお金よ。」
「でもレシートがないんだよね。
よかったね、美味しいランチが食べられて。」
「・・・そうね。」
ニヤッと笑うおばちゃん。
イミグレーションを出ると、両替商の男たちが待っていた。
イミグレーションのオフィスの中へ連れて行かれたのを男たちは見ていた。
なにがあったのかなんとなく分かった様子だった。
「両替、できなくなったよ。
お金を全部取られちゃった!
ノーマネー!」
ゲラゲラと笑う両替商たち。
まさか最後の最後にこんなハプニングが待っているとは。
マイナーなアフリカの小国マラウイが忘れられない国になったよ。
ものすごく痛いという訳ではないけど、チクチク気になって仕方がない。
我慢できなくなって、さっきカッターで切開して毛抜きで抜いたら拍子抜けするほど細くて小さなトゲだった。
妻に大げさ!って笑われてしまったよ。
生まれてはじめて「ゾウが恐い」と思った衝撃的な一夜を過ごしたケンゾーとイクエ。
それでも、ここアフリカでしか体験できないシチュエーションにテンションが上がる。
もっとゾウを間近に見るためにサファリに参加することに。
メジャーなケニアやタンザニアと比べてマイナーなマラウイでは破格の値段でサファリが楽しめる。
このロッジでは1人25USドル。
あまりの安さに「ほんとに動物見られるのかなあ」とちょっと心配。
ゾウにひっくり返されたから車がない!って言われたらどうしようとチラッと思ったけど、ちゃんとしたサファリカーが登場。
おお、いいねいいね。
サファリっぽくてテンション上がるよ。

参加するのは、自分のレンタカーの隣に止めていた車がゾウにひっくり返されるという人生で一度きりのスリルを味わった女の子とケンゾーとイクエ。
これにドライバーとガイドの5人でサファリスタート!
ギシギシ、ミシミシ、いまにも底が抜けそうな頼りない橋を渡って国立公園の入口へ。
ツアー料金とは別に国立公園の入場料1人10USドルが必要。

木が生い茂る林の中をゆっくりと進んでいく。
ファーストコンタクトはどの動物かな?
ぜったいに見逃すまいとキョロキョロと前後左右に視線を送る。

あ!なにかいた!
黒くて赤いへんなヤツ!


これはアフリカクロトキ。
体長は1m近くあるんじゃないかな、けっこうデカい。
黒い羽を広げてまっ赤な顔が目の前に飛んで来たら怖いよね。
次は鳥じゃなくて動物がいいなあ。
ワクワクしながら林を進んでいく。
細い木ばかりの林の中で主のように存在感抜群なバオバブの木。
そんなバオバブの木の幹だけ皮が剥ぎ取られたように傷ついている。


古い傷に混じってまだ真新しい傷跡も。
見るからに痛々しい。
この傷の正体はゾウ。
バオバブは樹皮と幹に大量の水分を蓄えている。
大きな木だと10トンもの水分を含んでいるんだそう。
乾期になると水に飢えたゾウが樹皮を剥ぎ取って食べたり、幹に穴を空けたりするんだって。
樹皮はとても硬いけれど、中はスポンジのように柔らかくて大量の水を含んでいる。
喉があまりにも渇き過ぎて、バオバブを押し倒すゾウもいるんだそう。
穏やかでのんびりしてるイメージのゾウだけど、けっこう気性が荒いんだ。
象の大群に出会うことを願いながらさらに奥地へと進んでいく。
しばらくすると、サファリ定番の動物が見えてきた。
肉食動物に食べられる、か弱い草食動物の代表、インパラ。


尻尾とお尻の両脇についている黒い筋が川の字みたいでかわいい。
みんな同じ顔にしか見えないけど、子どもは自分のお母さんをすぐに見分けられるのかな。
じっとこちらを見つめているのはウォーターバック。
お尻をぐるりと取り囲む白くて丸い模様が特徴的。


ダーツの的みたいでおもしろいね。
肉食獣がお尻めがけてガブッと食いついてきそう。
林を抜けるとだだっ広い草原に出た。
遠くにゴマのような黒いものが点在している。
望遠レンズを覗くと正体が判明。
待望のゾウの大群だった。


親子ゾウがたくさんいる。
すごい、大群だ!
でも遠い!!
近くまで行きたいけど、これ以上は進入禁止。
う~ん、これだったらロッジのほうが近くで見られるよ。
よく見るとゾウと至近距離のところに現地人がいる。
あそこまで行けたら迫力満点のゾウを見られるのになあ。

後ろ髪を引かれながらゾウの大群にお別れすると、別の大群に遭遇。
横たわって休んでいるのはバッファロー。
これは近い。


近すぎるのかノソノソと立ち上がって警戒する素振りを見せるやつも出てきた。
いかつい顔でじっとこちらを見ている。

牛科の動物だけどなかなか気性が荒いバッファロー。
ライオンに襲われた仲間を集団で助け出すという男気に溢れた動物でもある。
「復讐」という概念を持っていて、やられたらやり返す、かなりデンジャラスな奴ら。
横になってモグモグと口を動かしているバッファロー。
そんな長時間眺めているほど面白みもない。
時間も限られているし早く次の動物を探しに移動したいんだけど、なぜかドライバーの青年とガイドのおっちゃんがバッファローに食いついている。
2人して双眼鏡を取り出してバッファローをガン見。

客の3人はもう飽きちゃってるんだけど、まったく動こうとしないドライバーとガイド。
しまいには、ガイドのおっちゃんが手を出してまるで飼い犬を呼ぶようにバッファローに「おいでおいで」をしはじめた!

いやいや、勘弁してよ!
なんでわざわざデンジャラスなバッファローを刺激するのさ!
車とバッファローの距離は20mくらい、けっこう近い。
案の定、おっちゃんのかけ声に刺激されて次々とバッファローが立ち上がる!
やばいよ、顔がなんか怒ってるよ!


笑いながら「彼らはとてもデンジャラスなんだよ」と言うおっちゃん。
そんなん知っとるわ!
満足したのかやっとバッファロー達から離れていく。
ふーっと息を漏らしながら3人で苦笑い。
そんな人間達を凝視する家族が1組。

イクエが大好きなイボイノシシ。
イノシシは短足なイメージがあるけれど、こうして見るとけっこう足が長くてスマート。
この足を活かして時速50kmで走れるんだって。
大きな鹿のような動物が車の前を横切っていく。
クドゥという鹿の一種。
角の生えていないメスはなんだかちょっと間抜けに見える。


視線を感じて周囲の木を見上げると、目つきの鋭い鳥を発見。
これ何ていうタカだろう。
獲物を見つけたのか音もなくしなやかに飛び立った。



ハンティングに失敗したのか、そもそも獲物なんかいなかったのか分からないけど何も掴まずに飛び去って行った。
ちなみに、外見がそっくりなタカとワシ。
ほとんど生物学上の違いはなく、大型のものをワシ、比較的小型のものをタカと呼んでいるんだそう。
そういえば、ケンゾーの地元福岡のソフトバンクホークスの監督が秋山さんから工藤さんに変わっててビックリ。
いつの間にかメジャーから松坂も加入してるし、相変らず豪華な顔ぶれ。
今年もがんばれ若鷹軍団!
こんな感じでの〜んびりとした感じでサファリは終了。
リウォンデ国立公園には肉食動物はいないので派手さはない。
ボートサファリに参加するとカバやワニを見ることができるみたい。
けっきょく今日のハイライトは、ガイドのおっちゃんが興奮させたバッファローの鼻息が荒くなったことかな?

ゆる〜いサファリを楽しんでロッジに戻ると、ゾウにひっくり返されたオーナーの車が元に戻ってた。
ガソリン臭い匂いが残ってる以外は、パッと見ただけでは轟音を立ててひっくり返されたとは思えない。
さすが日本車。

これでケンゾーとイクエのマラウイの旅は終了。
首都のリロングウェに戻って1泊、翌日となりのザンビアへ入国し首都のルサカをめざすことに。

リウォンデからリロングウェまでのバスは1人3000クワチャ(約750円)。
フレンドリーで穏やかで人のいいマラウイ人と、のどかなマラウイの景色ともさよならだ。


リロングウェのバスターミナル前にあるバス・トイレ、冷蔵庫つきの1泊5000クワチャ(約1250円)の宿でマラウイ最後の夜を過ごす。


ほんとはリロングウェからザンビアのルサカまで直通の国際バスに乗るつもりだったケンゾーとイクエ。
だけど毎日は運行してなくて、残念なことにこの日は運休。
これ以上リロングウェに滞在する理由がないので、ローカルバスを乗り継いでルサカまで移動することに決定。
このときはまだ、これがこの旅でいちばん辛い移動になるとは思いもしてなかった・・・。
翌朝、長い長い一日がはじまる。
まずはザンビアとの国境まで乗合いワゴンで移動する。
朝6時にワゴン乗り場へ。

国境にいちばん近いのはムチンジという街。
街からボーダーまでは14kmほど距離がある。
客引きのおっちゃんに何度も「ボーダーまで行く?」って確認して「行くよ」って言うから、ボーダーまで1人2300クワチャ(約580円)を払ってワゴンに乗車。
けれどこれが失敗だった。
よくあることだけど、乗合いワゴンはムチンジまで。
ボーダーまでワゴン乗り場で待ち構えているタクシーに乗り換えて行かないといけない。

もちろんボーダーまでの料金を払っているのでタクシー代は払わなくていいんだけど、ワゴンのドライバーがタクシー代を水増ししていたことが発覚。
すったもんだの末少し取り戻したんだけど、ムチンジまでの料金を払って乗合いワゴンに乗り、ボーダーまで自分でタクシーを捕まえたほうが安くすむ。
気を取り直してマラウイ側のイミグレーションへ。
イミグレーションの前には両替商の男たち。
余ったマラウィクワチャを両替してもらおう。
レートを確認する。
「先にイミグレーション行ってから、あとで両替してもらうよ。」
「わかった。ここで待ってるよ。」
男たちに見守られながらイミグレーションの建物へ。
ここでふたりが予想もしていなかった事態が発生。

いつもの国境越えと同じように、まずはケンゾーがパスポートを提出。
とくに問題なくガチャンとスタンプが押されて返却されるパスポート。
つづいてイクエ。
ガチャンと押され・・・。
返却され・・・ないパスポート。
係員がイクエのパスポートをじーっと見つめている。
「なんだよ!早くしてくれよ!」
じれったいケンゾーとイクエ。
係員から予想外の一言が。
「オフィスの中に入って来なさい」
ええー、なんで?!
スタンプ押したやん!
バスを乗り継がないといけないから時間がないのに!
ぶーぶー言いながらオフィスの中へ。
「なに?
俺たちただのツーリストだよ。
スタンプ押したんだから早くパスポート返してよ!」
オフィスにいたのはおばちゃんの警察官。
「あんたたち、マラウイで何してたの?」
「だからあ、ツーリストだって言ってるでしょ。
観光してたに決まってるやん!」
そう文句を言うケンゾーとイクエに、これまた予想外の一言を言い放つおばちゃん。
「あなたたち、昨日までしかマラウイに滞在できないのに、
きょう一日何してたの?」
へ?
昨日までしか滞在できないってどういうこと?
きっとこの時、ふたりとも口をぽかーんと開けて間抜けな顔してただろうなあ。
「あなたたちはマラウイに2週間しか滞在できないのよ。
どうして今マラウイにいるの?」
2週間?
あっ!!
サーッと血の気が引いていく。
そういえば、入国スタンプの下に『14days 』って書かれた記憶が!
頭の中で何度数えなおしても今日は入国して15日目だ。
やっちまったー!!
日本人はマラウイ入国にビザは必要ないけれど、2週間しか滞在できない。
入国するときは1週間くらいでザンビアに抜けるつもりだったのでまったく気にも留めてなかった。
生まれてはじめてオーバーステイをしてしまったケンゾーとイクエ。
数え間違えてました、ごめんなさい!
打って変わって低姿勢で謝るケンゾーとイクエ。
けれど「もう、しょうがないわね」とはならない。
「今すぐリロングウェに戻って裁判所に出頭しないといけないわね。」
1日のオーバーステイで裁判所?
そんな話聞いたことない。
「日本大使館に連絡するのでちょっと待ってください。」
「大使館?
それはダメよ。」
「どうして?
電話するくらいの権利はあるでしょ?
どうしたらいいか聞くからちょっと待って。」
「ノー!! 電話なんかさせない!!」
「でも日本とマラウィの問題だから、聞かないと!」
「日本は関係ない。わたしたちとあなたたちの問題。」
大使館に電話するとは言ったものの、電話番号を知らないふたり。
ノーとは言ったものの、ダメな理由を言わないおばちゃん警察官。
こう着状態がしばらくつづく。
「リロングウェまで行かなくても、ここでお金を払えばいいわ。
レシートは渡せないけどね。」
つまり、これは賄賂の要求か?
躊躇していると、ほかの現地人の男性も中に入ってきてお金を渡して何やら交渉している。
男性のもってきたお金が少額だったのか、警察官はつっぱねて、男性は出直した。
ここではこんなことが日常茶飯事なのだろう。
賄賂なんて払いたくないけど、日本大使館にも連絡できないしほかに方法がない。
「レシートください。」
「ダメ、レシートはあげられない。
裁判所に出頭させるわよ。」
「いくら払えばいいんですか?」
「2人で2万クワチャね。」
5000円?高!!
マラウイの物価を考えたら高過ぎだよ。
「料金表を見せてください。
ほんとうに2万クワチャかどうか確かめたいです。」
「ない!」
「もうザンビアに行くから1万しかないんですけど。」
「・・・いいわ、1万で。
そのかわり、もう2度とマラウイには入国できないわよ。」
はあ、2500円は痛いけど、お金で解決できてよかった。
お金を払ってやっとパスポートが手元に戻ってきた。
一安心してちょっと言ってみた。
「そのお金、みんなのポケットに入るんだよね?
よかったね、これで豪華なランチが食べられるね。」
「そんなことないわ、これは政府のお金よ。」
「でもレシートがないんだよね。
よかったね、美味しいランチが食べられて。」
「・・・そうね。」
ニヤッと笑うおばちゃん。
イミグレーションを出ると、両替商の男たちが待っていた。
イミグレーションのオフィスの中へ連れて行かれたのを男たちは見ていた。
なにがあったのかなんとなく分かった様子だった。
「両替、できなくなったよ。
お金を全部取られちゃった!
ノーマネー!」
ゲラゲラと笑う両替商たち。
まさか最後の最後にこんなハプニングが待っているとは。
マイナーなアフリカの小国マラウイが忘れられない国になったよ。
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