リアルタイムではこの時期がもっとも暑いといわれるシルクロードの中央アジアにいて、汗ダラダラの環境にいますが「サウナで汗をかいて健康的になっているのといっしょ」と自分に言い聞かせて不快感を払拭しようと努めているイクエです。
旅行者の少ないアルメニア。
英語も通じない場合が多いけれど、アルメニアの人たちはとても穏やかで優しくて、そして旅人をもてなしてくれる。
郊外の世界遺産ゲガルド修道院に行った日のこと。
この日は、たくさんの優しさを受けた日だった。

ゲガルド修道院を目指し、朝からマルシュルートカに乗る。
だけど、山間にひっそりとたたずむ修道院。
そこまで行くマルシュはなくて、途中のゴクトという村が終点。
そこから修道院までは歩いていかないといけない。

朝から何も食べていない。
ゴクト村の食堂で食べればいいかって思ってたけど、想像してたよりずっと田舎。
食堂なんてなく、品揃えが少ない小さな商店がぽつんとあっただけ。
とりあえず、ごはんのことは考えないようにして進むことにした。
暑いなあ。
お腹減ったなあ。
体力もつかなあ。
道路脇では、太陽の光をキラキラ受けて真っ赤に実ったサクランボ。
さんさんと照りつける日差しのもと、おじいさんが収穫をしていた。

目が合ってニコリ。
何か尋ねられるけど、言葉がわからない。
こういうときは、とりあえず聞かれていそうなことを単語でこたえる。
「日本人なの。
旅行してるんだよ。
いまからゲガルドに行ってくる。」
するとおじいさん、「手を出しなさい」みたいなことを言う。
手を前に差し出すと・・・

こぼれるほどのたくさんのサクランボ。
手から落ちそうになりあわてて持っていた袋に入れたら、さらにサクランボを継ぎ足してくれる。
「そこで洗って食べるんだよ」
道に沿って灌漑用の溝がまっすぐ伸びていて、透き通る水が流れている。
そこでゆすいで、口に入れる。
甘さのなかにほのかな酸っぱさ。
今が食べごろ。
おいしい!
「ありがとう!!」
おじいさんは何かつぶやいて、サクランボでいっぱいになったバケツをもってスタスタと家のほうに歩いていった。

いただいた残りのサクランボを洗って再び歩き出そうとしていたら、おじいさんが戻ってきた。
もう一度、手に何かをのせてくれた。

桃!
てっきりサクランボの収穫が終わって家に帰ったのかと思っていたけど、わざわざこれを取りにいってくれたんだー。
日本の桃と香りはいっしょだけど酸味が強い。
皮が柔らかくて皮ごと食べられる。
旬のフルーツでエネルギー補給できたぞ!
よおし! もうちょっとがんばって歩こう ♪
500メートルほど歩いたところで、道の向かい側に立っていたおばさんに話しかけられた。
何て言っているかわからないけど、また推測して答えてみる。
「日本人でツーリストなの。
エレバンからマルシュでここまで来て、歩いてゲガルドまで行くんだよ。」
おばさんの顔がぱっと明るくなり「ヤパン!? ツーリスト!? カフェ、カフェ?」。
おばさんが手でコーヒーを飲むしぐさを繰り返した。
これはもしかしてお茶のお誘いを受けているのかな。
よくわからないけど「うん」ってうなずき、おばさんに連れられすぐそばの民家へ。

どうやらここはおばさんの家。
中庭に出されたベッドの上で横になっているだんなさん。
おばさんに話しかけられてわたしたちの顔を見たとたん、驚くとともにぱっと跳ね起きて優しい笑顔になった。
「ここに座りなさい」。
急に訪ねてきた日本人を不審に思わずに、こうやって笑顔で迎え入れてくれるなんて。

おばさんがトマト、きゅうり、パプリカ、チーズを持ってきてナイフで切りはじめた。
チーズは飼っている牛(ヤギかも)のお乳を自分で搾って作ったんだって。

クレープのようなものに、野菜やチーズを並べて巻いて食べる。
おじさんがお手本を見せてくれる。

テーブルに塩も出してくれたけど、チーズが塩辛いので何もつけなくてもおいしい。
一本作って食べ終わるとおじさんが「もっと食べろ、もっと食べろ」と言う。
なので、何本も食べる。
「クレープも1枚じゃなくて2枚重ねて巻きなさい」
具もちょっとしか入れないと「もっと入れないとダメだ」って勧めてくる。
たくさん具を並べて上手に巻くことができると、おじさんはとても嬉しそうな顔をしてほめてくれる。
「もうお腹いっぱい。じゅうぶんです。」
すると、おじさんはきっと冗談だと思うんだけど大真面目な顔で机をどんどん叩きながら「ダメ!もっともっと、もっと食べなさい!!」
お腹ぱんぱんだけど、よし、もう一本いただこう。
おじさんとおばさんには子どもがいるんだけど、みんな独り立ちして今は大きなこの家に2人暮らし。

庭には畑や果樹園があってにわとりが元気に走り回っている。
手入れされた真っ赤なバラがとってもきれいに咲き誇っている。


おじさん、おばさん。
こんなにもてなしてくれてほんとうにありがとう!!
おじゃましましたー!


日本だと人を家に招くってけっこうハードルが高くて、部屋を掃除しないとダメだとか手のこんだ料理や気のきいたものでもてなさないといけないなんて思ってしまう。
だから「いま、部屋片付いてないからな」「家に何もないからな」って思って突然人を家に呼ぶのに躊躇してしまう。
だけど、たとえ家が片付いてなくても普段食べてるものしか冷蔵庫になくても、呼ばれるほうからしたらそんなのどうでもよくて、ただ招いてもらうだけでうれしいものだ。
だから「体裁なんて気にせずこころよく人を家に呼ぶ文化っていいね」ってケンゾーに言った。
そしたらケンゾーは「でも、日本でも田舎だとそうだよ。『うちで休憩していきなさい。ほら、この漬け物食べなさい。さあ、お茶飲んで。このミカン食べて。』なんて言われるもん。」だって。
たしかにねー。
日本に帰ったら、人をこころよく招くことができるようになりたいな。
「カフェで待ち合わせ?だったらうちに来なよ。コーヒーくらいは出せるから。
なんなら夕食もうちで食べていけば?たいしたものはないけど。」
そんなおばちゃんを目指したい。
しばらく歩くと、道が枝分かれしていた。
ちょうど分岐点に大きな木があっておばちゃんたちがサクランボを売っている。
「ねえ、どっちがゲガルド?」
「右だよ、右。
それよりさ、そのカメラでわたしの写真を撮ってよ。」
おばちゃんにカメラを向けると、なぜか爆笑して「やっぱり恥ずかしいわ」って顔を抑えた。
左のおばちゃんが一番「撮って」って言ってたのに、一番恥ずかしがってなんかかわいい♡

左のおばちゃんが「わたしはいいから、あの人を撮りなさい」って急に歩いて現れたおじさんを指差して爆笑している。

言われたおじさんは、笑いながらもポーズを決めてくれた。
それを見て、またおばちゃんたちが大爆笑。
アルメニアの田舎っていいなあ。
みんな気さくで優しくて明るい。
『地球の歩き方』には、ゲガルド修道院は不便な場所にあるから旅行会社でツアーを組んでもらって来たほうがいいって書いてあったけど、自力で来て良かったな。

とはいっても、やっぱり歩くのはかなり時間がかかる。
この辺でヒッチハイクでもしてみようか。
ヒッチハイクってなんか恥ずかしいというか、気が引けるというか。
なんでだろう。
なんて厚かましいんだろうって自分で思っちゃうのかもしれないし、親指を立てるポーズが日本人のわたしにはこっぱずかしく感じてしまうからかもしれない。
低い位置で控えめに親指を立てる。
それでも3台目くらいで車がとまってくれた。
乗っていたのはアルメニアのエレバンで暮らしているイキットと、グルジアのバトゥミから旅行に来ていたエドワール。
ふたりはいとこ同士で、イキットがエドワールを車で案内しているところだった。

ふたりもゲガルド修道院に行くところだったので、最後まで乗せてもらうことに。
ありがたーい。
車に乗って2キロほど進むと急に景色が変わった。
断崖絶壁と緑が織りなす壮大な眺め。
そして、車道は崖が重なり合う場所で行き止まりになっていて、そこにゲガルド修道院がたたずんでいた。


「俺たちもエレバンまで戻るから、このまま帰りも乗せていってあげるよ。
1時間後にまたここで待ち合わせね。」
なんて嬉しいお誘い。
ほんとうにありがたい。
別行動で待ち合わせのつもりだったけど、自然にいっしょに観光するかたちに。
入口で石を投げはじめる2人。
5回石を投げて、一個でも壁の穴に入れば願いが叶うんだって。

これはかなり難しいですよ。
と思いきやエドワールとケンゾーは見事穴に入れることができた。
ふたりがどんな願い事をしたかはわからないけど、どうか叶いますように♡
持っていた一眼レフに興味を持ったイキット。
貸してあげると、無理な体勢をとりつつ手や足をぷるぷるさせながら渾身の ♪カシャ!
出来映えに本人は大満足の様子。
イキットの力作がこちら。

おお~。
なかなかやるじゃないですか。
入口のアーチ越しの修道院。
いいセンスしてますねえ。

アルメニアもグルジアもキリスト教徒の国。
教会に入ったらふたりはキャンドルに灯をともし、祈りはじめた。
崖のふもとの教会。
教会に華やかな装飾はないけれど、そこに窓から差し込む淡い光と祈る人の姿があればそれだけで素晴らしい絵になる。


修道院の駐車場にはご当地の食べ物を売っているお土産屋さんが並んでいた。
大きくて薄い丸いパン。
果物を煮詰めて蝋のようにして、中に木の実を練り込んだお菓子。

ふたりがクルミ入りのお菓子を買って来てくれた。
「ありがとう!」
食感は、ようかん。
外国のお菓子って砂糖いっぱいで日本人には甘過ぎるんだけど、このお菓子は甘さ控えめでおいしい。
緑茶にも合いそうだな。

ゲガルド修道院も世界遺産だけど車で15分ほどいった場所にもうひとつの世界遺産ガルニ神殿がある。
ふたりはそこにも寄る予定だったので、イクエたちも行ってみることにした。
当初、わたしたちはここに行く予定はなかった。
なぜなら入場料が高い割に、中に何もない神殿がぽつんとあってしょぼいので「行く必要はない」って宿の情報ノートに複数の人が書いていたから。
でも、これも何かのご縁。
入場料はかかるけど、せっかくだからわたしたちも入ってみよう。
「ガルニ神殿はしょぼい」という考えは日本人だけじゃなく、現地の人にとってもそうなのか、イキットは入る前にイクエたちに念押しをした。
「ここはね、神殿がひとつしかない場所であんまりおもしろくない場所なんだ。
しかもその神殿の中には何もない。」
まあ、それでも入ってみよう。
入場券を買おうとしたら、なんとイキットがわたしたちの分まで払ってくれた。
「いやいや、いいよいいよ。払う払う。」
そう言っても、お金を受け取ろうとしてくれない。
入場料は1000ドラム(約240円)。
2人分2000ドラムも払わせてしまった。
しかもこれは外国人料金で、イキットたちは1人250ドラム。
だからきっと外国人料金の1000ドラムはイキットたち現地人にとってはとても高く感じる額なのだ。
ああ、なんか悪いことさせちゃったな。
車にまで乗せてもらって、入場料まで払ってもらってとっても申し訳ない。

ガルニ神殿は想像以上にしょぼかったけど(写真は神殿がもっとも大きく見えるアングル。実際はとても小さい。)周りの自然はとても雄大だった。

イキットたちには本当にお世話になってしまった。
帰りもイキットの家はエレバンの手前のほうなのに、わざわざわたしたちの宿の近くまで送ってくれた。
こういうときにさらっと渡せる日本のお土産をバッグに入れておくべきなのに、手元にない。
宿のバックパックに入れたままだ。
バングラデシュのときも、いろんな人に親切にされたりごちそうになったりしていたので「いつも何かプレゼントできるものを持ち歩こう」って決めてそうしていたのに、ここ最近は持ち歩いていなかった。
今度からちゃんと持ち歩かなきゃ。
それにしてもいい一日だったなあ。
こういう出会いの積み重ねで、その国をどんどん好きになっていく。
だから、ぜったい日本で外国人に会ったら親切に接してあげたいな。
きょう会った人に再び会う機会はないだろうし、ご恩を返すこともできないけど、その分日本でほかの外国人に優しくしたい。
親切の循環で、みんなが幸せになっていく。
旅行者の少ないアルメニア。
英語も通じない場合が多いけれど、アルメニアの人たちはとても穏やかで優しくて、そして旅人をもてなしてくれる。
郊外の世界遺産ゲガルド修道院に行った日のこと。
この日は、たくさんの優しさを受けた日だった。

ゲガルド修道院を目指し、朝からマルシュルートカに乗る。
だけど、山間にひっそりとたたずむ修道院。
そこまで行くマルシュはなくて、途中のゴクトという村が終点。
そこから修道院までは歩いていかないといけない。

朝から何も食べていない。
ゴクト村の食堂で食べればいいかって思ってたけど、想像してたよりずっと田舎。
食堂なんてなく、品揃えが少ない小さな商店がぽつんとあっただけ。
とりあえず、ごはんのことは考えないようにして進むことにした。
暑いなあ。
お腹減ったなあ。
体力もつかなあ。
道路脇では、太陽の光をキラキラ受けて真っ赤に実ったサクランボ。
さんさんと照りつける日差しのもと、おじいさんが収穫をしていた。

目が合ってニコリ。
何か尋ねられるけど、言葉がわからない。
こういうときは、とりあえず聞かれていそうなことを単語でこたえる。
「日本人なの。
旅行してるんだよ。
いまからゲガルドに行ってくる。」
するとおじいさん、「手を出しなさい」みたいなことを言う。
手を前に差し出すと・・・

こぼれるほどのたくさんのサクランボ。
手から落ちそうになりあわてて持っていた袋に入れたら、さらにサクランボを継ぎ足してくれる。
「そこで洗って食べるんだよ」
道に沿って灌漑用の溝がまっすぐ伸びていて、透き通る水が流れている。
そこでゆすいで、口に入れる。
甘さのなかにほのかな酸っぱさ。
今が食べごろ。
おいしい!
「ありがとう!!」
おじいさんは何かつぶやいて、サクランボでいっぱいになったバケツをもってスタスタと家のほうに歩いていった。

いただいた残りのサクランボを洗って再び歩き出そうとしていたら、おじいさんが戻ってきた。
もう一度、手に何かをのせてくれた。

桃!
てっきりサクランボの収穫が終わって家に帰ったのかと思っていたけど、わざわざこれを取りにいってくれたんだー。
日本の桃と香りはいっしょだけど酸味が強い。
皮が柔らかくて皮ごと食べられる。
旬のフルーツでエネルギー補給できたぞ!
よおし! もうちょっとがんばって歩こう ♪
500メートルほど歩いたところで、道の向かい側に立っていたおばさんに話しかけられた。
何て言っているかわからないけど、また推測して答えてみる。
「日本人でツーリストなの。
エレバンからマルシュでここまで来て、歩いてゲガルドまで行くんだよ。」
おばさんの顔がぱっと明るくなり「ヤパン!? ツーリスト!? カフェ、カフェ?」。
おばさんが手でコーヒーを飲むしぐさを繰り返した。
これはもしかしてお茶のお誘いを受けているのかな。
よくわからないけど「うん」ってうなずき、おばさんに連れられすぐそばの民家へ。

どうやらここはおばさんの家。
中庭に出されたベッドの上で横になっているだんなさん。
おばさんに話しかけられてわたしたちの顔を見たとたん、驚くとともにぱっと跳ね起きて優しい笑顔になった。
「ここに座りなさい」。
急に訪ねてきた日本人を不審に思わずに、こうやって笑顔で迎え入れてくれるなんて。

おばさんがトマト、きゅうり、パプリカ、チーズを持ってきてナイフで切りはじめた。
チーズは飼っている牛(ヤギかも)のお乳を自分で搾って作ったんだって。

クレープのようなものに、野菜やチーズを並べて巻いて食べる。
おじさんがお手本を見せてくれる。

テーブルに塩も出してくれたけど、チーズが塩辛いので何もつけなくてもおいしい。
一本作って食べ終わるとおじさんが「もっと食べろ、もっと食べろ」と言う。
なので、何本も食べる。
「クレープも1枚じゃなくて2枚重ねて巻きなさい」
具もちょっとしか入れないと「もっと入れないとダメだ」って勧めてくる。
たくさん具を並べて上手に巻くことができると、おじさんはとても嬉しそうな顔をしてほめてくれる。
「もうお腹いっぱい。じゅうぶんです。」
すると、おじさんはきっと冗談だと思うんだけど大真面目な顔で机をどんどん叩きながら「ダメ!もっともっと、もっと食べなさい!!」
お腹ぱんぱんだけど、よし、もう一本いただこう。
おじさんとおばさんには子どもがいるんだけど、みんな独り立ちして今は大きなこの家に2人暮らし。

庭には畑や果樹園があってにわとりが元気に走り回っている。
手入れされた真っ赤なバラがとってもきれいに咲き誇っている。


おじさん、おばさん。
こんなにもてなしてくれてほんとうにありがとう!!
おじゃましましたー!


日本だと人を家に招くってけっこうハードルが高くて、部屋を掃除しないとダメだとか手のこんだ料理や気のきいたものでもてなさないといけないなんて思ってしまう。
だから「いま、部屋片付いてないからな」「家に何もないからな」って思って突然人を家に呼ぶのに躊躇してしまう。
だけど、たとえ家が片付いてなくても普段食べてるものしか冷蔵庫になくても、呼ばれるほうからしたらそんなのどうでもよくて、ただ招いてもらうだけでうれしいものだ。
だから「体裁なんて気にせずこころよく人を家に呼ぶ文化っていいね」ってケンゾーに言った。
そしたらケンゾーは「でも、日本でも田舎だとそうだよ。『うちで休憩していきなさい。ほら、この漬け物食べなさい。さあ、お茶飲んで。このミカン食べて。』なんて言われるもん。」だって。
たしかにねー。
日本に帰ったら、人をこころよく招くことができるようになりたいな。
「カフェで待ち合わせ?だったらうちに来なよ。コーヒーくらいは出せるから。
なんなら夕食もうちで食べていけば?たいしたものはないけど。」
そんなおばちゃんを目指したい。
しばらく歩くと、道が枝分かれしていた。
ちょうど分岐点に大きな木があっておばちゃんたちがサクランボを売っている。
「ねえ、どっちがゲガルド?」
「右だよ、右。
それよりさ、そのカメラでわたしの写真を撮ってよ。」
おばちゃんにカメラを向けると、なぜか爆笑して「やっぱり恥ずかしいわ」って顔を抑えた。
左のおばちゃんが一番「撮って」って言ってたのに、一番恥ずかしがってなんかかわいい♡

左のおばちゃんが「わたしはいいから、あの人を撮りなさい」って急に歩いて現れたおじさんを指差して爆笑している。

言われたおじさんは、笑いながらもポーズを決めてくれた。
それを見て、またおばちゃんたちが大爆笑。
アルメニアの田舎っていいなあ。
みんな気さくで優しくて明るい。
『地球の歩き方』には、ゲガルド修道院は不便な場所にあるから旅行会社でツアーを組んでもらって来たほうがいいって書いてあったけど、自力で来て良かったな。

とはいっても、やっぱり歩くのはかなり時間がかかる。
この辺でヒッチハイクでもしてみようか。
ヒッチハイクってなんか恥ずかしいというか、気が引けるというか。
なんでだろう。
なんて厚かましいんだろうって自分で思っちゃうのかもしれないし、親指を立てるポーズが日本人のわたしにはこっぱずかしく感じてしまうからかもしれない。
低い位置で控えめに親指を立てる。
それでも3台目くらいで車がとまってくれた。
乗っていたのはアルメニアのエレバンで暮らしているイキットと、グルジアのバトゥミから旅行に来ていたエドワール。
ふたりはいとこ同士で、イキットがエドワールを車で案内しているところだった。

ふたりもゲガルド修道院に行くところだったので、最後まで乗せてもらうことに。
ありがたーい。
車に乗って2キロほど進むと急に景色が変わった。
断崖絶壁と緑が織りなす壮大な眺め。
そして、車道は崖が重なり合う場所で行き止まりになっていて、そこにゲガルド修道院がたたずんでいた。


「俺たちもエレバンまで戻るから、このまま帰りも乗せていってあげるよ。
1時間後にまたここで待ち合わせね。」
なんて嬉しいお誘い。
ほんとうにありがたい。
別行動で待ち合わせのつもりだったけど、自然にいっしょに観光するかたちに。
入口で石を投げはじめる2人。
5回石を投げて、一個でも壁の穴に入れば願いが叶うんだって。

これはかなり難しいですよ。
と思いきやエドワールとケンゾーは見事穴に入れることができた。
ふたりがどんな願い事をしたかはわからないけど、どうか叶いますように♡
持っていた一眼レフに興味を持ったイキット。
貸してあげると、無理な体勢をとりつつ手や足をぷるぷるさせながら渾身の ♪カシャ!
出来映えに本人は大満足の様子。
イキットの力作がこちら。

おお~。
なかなかやるじゃないですか。
入口のアーチ越しの修道院。
いいセンスしてますねえ。

アルメニアもグルジアもキリスト教徒の国。
教会に入ったらふたりはキャンドルに灯をともし、祈りはじめた。
崖のふもとの教会。
教会に華やかな装飾はないけれど、そこに窓から差し込む淡い光と祈る人の姿があればそれだけで素晴らしい絵になる。


修道院の駐車場にはご当地の食べ物を売っているお土産屋さんが並んでいた。
大きくて薄い丸いパン。
果物を煮詰めて蝋のようにして、中に木の実を練り込んだお菓子。

ふたりがクルミ入りのお菓子を買って来てくれた。
「ありがとう!」
食感は、ようかん。
外国のお菓子って砂糖いっぱいで日本人には甘過ぎるんだけど、このお菓子は甘さ控えめでおいしい。
緑茶にも合いそうだな。

ゲガルド修道院も世界遺産だけど車で15分ほどいった場所にもうひとつの世界遺産ガルニ神殿がある。
ふたりはそこにも寄る予定だったので、イクエたちも行ってみることにした。
当初、わたしたちはここに行く予定はなかった。
なぜなら入場料が高い割に、中に何もない神殿がぽつんとあってしょぼいので「行く必要はない」って宿の情報ノートに複数の人が書いていたから。
でも、これも何かのご縁。
入場料はかかるけど、せっかくだからわたしたちも入ってみよう。
「ガルニ神殿はしょぼい」という考えは日本人だけじゃなく、現地の人にとってもそうなのか、イキットは入る前にイクエたちに念押しをした。
「ここはね、神殿がひとつしかない場所であんまりおもしろくない場所なんだ。
しかもその神殿の中には何もない。」
まあ、それでも入ってみよう。
入場券を買おうとしたら、なんとイキットがわたしたちの分まで払ってくれた。
「いやいや、いいよいいよ。払う払う。」
そう言っても、お金を受け取ろうとしてくれない。
入場料は1000ドラム(約240円)。
2人分2000ドラムも払わせてしまった。
しかもこれは外国人料金で、イキットたちは1人250ドラム。
だからきっと外国人料金の1000ドラムはイキットたち現地人にとってはとても高く感じる額なのだ。
ああ、なんか悪いことさせちゃったな。
車にまで乗せてもらって、入場料まで払ってもらってとっても申し訳ない。

ガルニ神殿は想像以上にしょぼかったけど(写真は神殿がもっとも大きく見えるアングル。実際はとても小さい。)周りの自然はとても雄大だった。

イキットたちには本当にお世話になってしまった。
帰りもイキットの家はエレバンの手前のほうなのに、わざわざわたしたちの宿の近くまで送ってくれた。
こういうときにさらっと渡せる日本のお土産をバッグに入れておくべきなのに、手元にない。
宿のバックパックに入れたままだ。
バングラデシュのときも、いろんな人に親切にされたりごちそうになったりしていたので「いつも何かプレゼントできるものを持ち歩こう」って決めてそうしていたのに、ここ最近は持ち歩いていなかった。
今度からちゃんと持ち歩かなきゃ。
それにしてもいい一日だったなあ。
こういう出会いの積み重ねで、その国をどんどん好きになっていく。
だから、ぜったい日本で外国人に会ったら親切に接してあげたいな。
きょう会った人に再び会う機会はないだろうし、ご恩を返すこともできないけど、その分日本でほかの外国人に優しくしたい。
親切の循環で、みんなが幸せになっていく。
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