パパは「青年海外協力隊」
リアルタイムでは南米パタゴニア地方を旅してるんですが、ブログの更新が滞ってしまっているイクエです。
というのも、ヒッチハイクしたチリ人家族を道連れにそのまま一週間彼らの車でいっしょに旅するという不思議な展開になってしまったからです。
きょうお別れしましたが、またサンチアゴで再会できるかな。
マラウィの首都リロングウェでまるでビジネスマンのように活動しているかつろうくん。
かつろうくんの出勤にあわせて、わたしたちもお世話になった家を出発。
かつろうくんは紳士で、おいしい和食でおもてなししてくれて、なおかつお酒までごちそうしてくれるという男気溢れる人だった。
仕事もばりばりできそうだしモテそうなんだけど、女性に優しすぎることと女性を見る目があまりなくて女性運がないことが欠点。
がんばれ!かつろうくん。
あとでFacebookで知ったんだけど、同じ大学の出身だった。
「大学どこ?」なんて普段聞かないけど、聞いとけばもっと話が盛り上がったのになあとちょっと後悔。
また日本でお酒を飲みながらたくさん語ろうね!
ありがとう。
わたしたちが次に向かうのはバラカという街。
とくに何があるってわけではないんだけど、この街では3人の協力隊員が活動中。
見どころがないマラウィはサラーッと通過するつもりだった。
リロングウェからそのままザンビアに抜けようと思っていたんだけど、せっかくなのでリロングウェより南で活動している隊員たちのところにもおじゃますることにしたのだった。
首都のバスターミナルと言えば、いちばん栄えてそうなんだけどそこはやっぱりマラウィ。
ビルはなく、雑多で騒々しくて汚い。
バスターミナルには中型のバスやワゴンタイプのミニバスなどが止まっていて、客引き合戦が繰り広げられている。
値段はほとんど変わらないので、客の立場としてはどれに乗ればいいか悩ましい。
満席にならないと出発しないので、いちばん客が乗っていて早く出発しそうなのを探す。
うーん、どっちにしようかなあ~。
どれもそんなに変わんないかあ。
乗ったはいいけれど、自分たちの選択が間違ったことに気づきはじめた。
この車、なかなか出発しない。
すでに定員の客は乗っているのに、ドライバーが客を詰められるだけ詰めようという作戦に出ている。
早く行こうよ~。
1時間以上経って車がパンパンになり、ようやく出発。
と思ったら10分で警察につかまった。
運転手が降りて警察から問いつめられる。
定員オーバーだったのがダメ。
普通だったら警官にその場で賄賂を渡して終わり、なんだけどきょうは厳しい一斉取り締まりが行なわれているみたい。
路上にはたくさんの警官とつかまったほかのバスの運転手たちがいる。
賄賂で見逃してもらえずに、書類手続きで待ちぼうけ。
結局1時間も路肩で待たされた。
定員以上の客を乗せるためにバスターミナルで待たされ、定員オーバーで警察につかまり待たされる。
最悪なバスに乗ってしまった・・・。
ようやく警察から解放されてバスは再出発。
定員オーバーだから客が何人か降ろされるのかと思ったら、そのままだった。
警察もそこまでちゃんと監視しないとダメでしょう。
定員オーバーでつかまりながら、定員オーバーのまま走りはじめたバス。
そしてまた30分で次の警察の検問にひっかかる。
「さっきもつかまったから見逃して」ってドライバーが言うんだけど、警察は「ダメ!」と厳しい。
きょうは賄賂も通用しない。
そしてここでまた1時間半待ち。
いったいバス会社も警察もどうなってるの!?
結局このあともそのままバスは走り出した。
再び検問所があったけど、すかさず手前で車掌が降りて定員ギリギリの人数に。
車掌は猛ダッシュで先回りし、検問所を過ぎたところで拾ってもらっていた。
3人の隊員がバラカでわたしたちを待っているのに、もう太陽が沈みはじめている。
予定よりも3時間以上かかって真っ暗なバラカの街に到着。
自転車タクシーをつかまえて、3人の隊員が待つ家へと急ぐ。
実はマラウィのほかの隊員たちからバラカ隊員のうわさは聞いていた。
「あの3人かあ。頼りないけどだいじょうぶかなあ。」
「アッキーは飲んで酔っぱらうイメージしかないなあ。」
「かずちゃんはたぶん料理なんてできないと思いますよ。」
わたしたちとしてはおもてなしを期待しているわけではないし、ただ会って楽しいおしゃべりをして現地での暮らしぶりを見せてもらえればそれでいい。
料理だってわたしたちがみんなのぶんを作ればいいんだから。
前日3人からは「バーベキューするので牛のコブの肉をリロングウェで仕入れてきてください」とお願いされていた。
こちらの牛は日本の牛と違って、ラクダのように背中の部分にコブがひとつある。
このコブが脂が多くておいしいんだって。
コブの肉を買ってきてはいるけれど、ほかの隊員たちの話から想像するにきっと3人はほかの肉を買ってはいないだろうし、炭をおこしたり野菜を切ったりバーベキューの準備もしてないだろう。
移動でへとへとなので正直、いちからやることを考えると気が萎える。
でもおじゃまする身なのでそんなことを思うのは失礼。
だけど・・・。
疲れて重い足取りでメンバーが待つところへ。
「遅くなって本当にごめんね。
うわっ!
ちゃんと用意してくれてたんだ!!」
肉や野菜が串刺しにされて炭で焼かれている。
ごま油とマヨネーズやからしを使ったサラダなどサイドメニューも豊富。
デザートまで用意してくれていた。
バラカ隊員、ぜんぜん噂とちがうよ。
左から理学療法士のゴジさん、教師のかずちゃん、右端の最高の笑顔をしているのが教師のアッキー。
なぜバラカ隊員がほかの隊員から頼りなく思われているのかナゾ。
もしかしたら日本での研修中は頼りないキャラだったのかもしれない。
アフリカの田舎で生きていく技術をここで身につけたのかも。
特製ドレッシングでおいしいサラダを作ってくれたゴジさんは、今ではインターネットのレシピ集クックパッドの愛用者。
アフリカの地で、クックパッドの良さを熱弁。
この夜は理数科教師、アッキーの家に泊めてもらうことに。
学校の敷地内にある平屋の家。
扇風機を貸してくれたんだけど暑すぎて夜眠れなかった。
「マラウィでここがいちばん暑いんじゃない?
ほかの隊員のところはもっと涼しかったよ。」
そう言うとアッキーが喜んだ。
「ほんとですか?
ここがいちばん暑いのか。
いやー、そう思うとうれしいな。
ほかの隊員に自慢できる!」
前々から気づいていたけれどアフリカ隊員には変な癖がある。
自分の生活環境が悪いことを喜ぶという癖。
アフリカに派遣されているのだから自分の生活もアフリカらしくあらねばならない、快適ではだめだ、というマゾっぽい思いが湧いてくるらしい。
これまでお世話になってきた隊員の家では水が出ないところもあったけど「水がないくらいがいいんですよ。これで水道も出たら日本と変わらないでしょ。」と言う隊員は多い。
わたしたちがマラウィのかくちゃんの家におじゃましていたとき、はじめて長期間断水した。
そのときかくちゃんも「おお~!これでやっと俺の家も水が出ないって言えるぞ!」とテンションがあがっていた。
不便なこと、過酷なことも笑って受け入れられるくらいの余裕があるからこそ、アフリカ隊員が務まるのかもしれない。
マラウィでいちばん暑いと言って喜んだアッキーの家にはマンゴーの木がある。
暑くてもおいしいマンゴーが食べられたらいいか。
そしてこの家にも。
藁で作ったアヒル小屋。
オスとメスを飼っていて、ヒヨコまで生まれていた。
いつさばいて食べるのかな。
アッキーはこの日の夕食にそなえてわたしたちのためにゴマプリンを作っていた。
「家事なんてぜんぜんダメそう」と言われていたアッキーの家には、本格的なスイーツのレシピ本まであった。
しかもアッキーの趣味はピアノ。
今度大使館主催のマラウィと日本の交流の行事が開かれるらしく、なんとアッキーはマラウィ国歌と君が代のピアノ伴奏を大使館の人に任されている。
「演奏中、国歌を間違えて弾いたりつまづいたら大変ですよ。
こわいなあ。」
ゴマプリンを作ったアッキーは、学校のピアノを借りて練習するため汗だくで出かけていった。
理数科教師なのに、大変だ。
今晩はゴジさんの家にお世話になる。
アッキーの家からは自転車タクシーで15分くらい。
理学療法士のゴジさんは、集落をまわりながら理学療法をしている。
家はアッキーの家よりも広々。
玄関から入ると正面にデスクが。
その前にはソファーセット。
社長室みたいになっている。
すてきな家具の配置。
そして壁には子どもの写真!
じつはゴジさん、一児の父。
子持ち隊員にはじめて出会った。
子どもが2歳のときにアフリカに派遣されたゴジさん。
かわいいさかりの一人娘を置いて単身でアフリカに行くのはつらいけれど、協力隊員になることはゴジさんの長年の夢だった。
自分の知識や技術を使って、海外の人たちの役に立ちたい。
そんなゴジさんの思いを理解してくれて、ひとり子育てに励む奥様はとても強くて優しい人だと思う。
決まった曜日の決まった時間帯にお互い時間を作って、スカイプで奥様と連絡をとっているゴジさん。
もちろん娘さんにもスカイプで話しかけている。
娘さんの写真も送ってもらっている。
年に一度の休暇を利用してわずかな間帰国したゴジさんは、久しぶりに娘に会って成長ぶりに驚いたのだそう。
「仕草とか動きとか、やっぱりスカイプや写真ではわからないもんね。」
2歳だった娘さんは4歳に。
遠く離れていても、娘さんには奥様がゴジさんのことをちゃんと写真で説明しているし、スカイプでも話しているから娘さんはお父さんのことをわかっている。
最近そんな娘さんの発言にゴジさんはちょっと動揺している。
「あのね、わたしおおきくなったらね、
アフリカでおしごとするの!」
うれしいような、切ないような。
親としては複雑な心境だね。
せめて日本の居酒屋気分を味わいたい。
ジョッキをキンキンに冷やして瓶ビールを注いで飲むのがマラウィでのゴジさんの至福の時間。
幼い子どもを日本においてわざわざアフリカに来なくてもいいんじゃないか。
そう思う人もいるかもしれない。
わたしより少し年上のゴジさんくらいの年齢の理学療法士というのはだいたいが家庭をもっている人なので、協力隊に応募する人は少ない。
そんななかゴジさんはとても貴重な存在。
ゴジさんだからこそできることがあるし、ゴジさんは求められている。
きょうのメニューは炭火焼と炊き込みご飯。
みんなで作っていたら、突然停電。
さらにきょうはずっと断水。
溜めておいた水をムダにせずちょろちょろ使いながら暗いなかみんなで料理。
特製ニンニク醤油につけこんだお肉を炭火でじわじわ焼いていく。
炭のおこし方も隊員たちは手慣れたもの。
そうこうしている間に電気が復活。
「おお~」と歓声を上げる。
電気があるのとないのじゃ調理のはかどりようが違う。
明るいなか、さくさくと料理が進む。
料理が不得意だと誤解されているかずちゃんが、本格炊き込みご飯を作ってくれている。
貴重な干し椎茸をふんだんに使って。
椎茸見ただけで唾が出るよ。
おいしそうな匂いが漂ってきた。
鶏肉の炊き込みご飯。
ケンゾーが大好きな「かしわ飯」。
デザートにはパイナップル。
こっちのパイナップルは本当に甘くて柔らかくて、芯まで食べられる。
ムダなく食べやすくする皮の剥き方をゴジさんがやってくれた。
このときゴジさんは、帰国を1か月後に控えていた。
2年間の任務の終了。
「もうすぐ愛娘とのいっしょの生活が始まるね。」
「楽しみだね。」
「いいなあ、日本。
帰国していちばんに何食べますか?」
みんなで夜遅くまで盛り上がった。
暑いバラカが少しだけ涼しくなる夜。
庭にゴザやマットを敷いてゴロンと横たわって、流れ星を探す。
星空を眺めて気づいたらみんなウトウトしていた。
さて、このブログを書いている今、ゴジさんはすでに帰国している。
きっと日本でおいしいものをたくさん食べただろうな。
娘さんといっしょの写真も増えたね。
2年間、ゴジさんも奥様もほんとうにおつかれさまでした。
娘さんのこれからの成長が楽しみだね!
というのも、ヒッチハイクしたチリ人家族を道連れにそのまま一週間彼らの車でいっしょに旅するという不思議な展開になってしまったからです。
きょうお別れしましたが、またサンチアゴで再会できるかな。
マラウィの首都リロングウェでまるでビジネスマンのように活動しているかつろうくん。
かつろうくんの出勤にあわせて、わたしたちもお世話になった家を出発。
かつろうくんは紳士で、おいしい和食でおもてなししてくれて、なおかつお酒までごちそうしてくれるという男気溢れる人だった。
仕事もばりばりできそうだしモテそうなんだけど、女性に優しすぎることと女性を見る目があまりなくて女性運がないことが欠点。
がんばれ!かつろうくん。
あとでFacebookで知ったんだけど、同じ大学の出身だった。
「大学どこ?」なんて普段聞かないけど、聞いとけばもっと話が盛り上がったのになあとちょっと後悔。
また日本でお酒を飲みながらたくさん語ろうね!
ありがとう。
わたしたちが次に向かうのはバラカという街。
とくに何があるってわけではないんだけど、この街では3人の協力隊員が活動中。
見どころがないマラウィはサラーッと通過するつもりだった。
リロングウェからそのままザンビアに抜けようと思っていたんだけど、せっかくなのでリロングウェより南で活動している隊員たちのところにもおじゃますることにしたのだった。
首都のバスターミナルと言えば、いちばん栄えてそうなんだけどそこはやっぱりマラウィ。
ビルはなく、雑多で騒々しくて汚い。
バスターミナルには中型のバスやワゴンタイプのミニバスなどが止まっていて、客引き合戦が繰り広げられている。
値段はほとんど変わらないので、客の立場としてはどれに乗ればいいか悩ましい。
満席にならないと出発しないので、いちばん客が乗っていて早く出発しそうなのを探す。
うーん、どっちにしようかなあ~。
どれもそんなに変わんないかあ。
乗ったはいいけれど、自分たちの選択が間違ったことに気づきはじめた。
この車、なかなか出発しない。
すでに定員の客は乗っているのに、ドライバーが客を詰められるだけ詰めようという作戦に出ている。
早く行こうよ~。
1時間以上経って車がパンパンになり、ようやく出発。
と思ったら10分で警察につかまった。
運転手が降りて警察から問いつめられる。
定員オーバーだったのがダメ。
普通だったら警官にその場で賄賂を渡して終わり、なんだけどきょうは厳しい一斉取り締まりが行なわれているみたい。
路上にはたくさんの警官とつかまったほかのバスの運転手たちがいる。
賄賂で見逃してもらえずに、書類手続きで待ちぼうけ。
結局1時間も路肩で待たされた。
定員以上の客を乗せるためにバスターミナルで待たされ、定員オーバーで警察につかまり待たされる。
最悪なバスに乗ってしまった・・・。
ようやく警察から解放されてバスは再出発。
定員オーバーだから客が何人か降ろされるのかと思ったら、そのままだった。
警察もそこまでちゃんと監視しないとダメでしょう。
定員オーバーでつかまりながら、定員オーバーのまま走りはじめたバス。
そしてまた30分で次の警察の検問にひっかかる。
「さっきもつかまったから見逃して」ってドライバーが言うんだけど、警察は「ダメ!」と厳しい。
きょうは賄賂も通用しない。
そしてここでまた1時間半待ち。
いったいバス会社も警察もどうなってるの!?
結局このあともそのままバスは走り出した。
再び検問所があったけど、すかさず手前で車掌が降りて定員ギリギリの人数に。
車掌は猛ダッシュで先回りし、検問所を過ぎたところで拾ってもらっていた。
3人の隊員がバラカでわたしたちを待っているのに、もう太陽が沈みはじめている。
予定よりも3時間以上かかって真っ暗なバラカの街に到着。
自転車タクシーをつかまえて、3人の隊員が待つ家へと急ぐ。
実はマラウィのほかの隊員たちからバラカ隊員のうわさは聞いていた。
「あの3人かあ。頼りないけどだいじょうぶかなあ。」
「アッキーは飲んで酔っぱらうイメージしかないなあ。」
「かずちゃんはたぶん料理なんてできないと思いますよ。」
わたしたちとしてはおもてなしを期待しているわけではないし、ただ会って楽しいおしゃべりをして現地での暮らしぶりを見せてもらえればそれでいい。
料理だってわたしたちがみんなのぶんを作ればいいんだから。
前日3人からは「バーベキューするので牛のコブの肉をリロングウェで仕入れてきてください」とお願いされていた。
こちらの牛は日本の牛と違って、ラクダのように背中の部分にコブがひとつある。
このコブが脂が多くておいしいんだって。
コブの肉を買ってきてはいるけれど、ほかの隊員たちの話から想像するにきっと3人はほかの肉を買ってはいないだろうし、炭をおこしたり野菜を切ったりバーベキューの準備もしてないだろう。
移動でへとへとなので正直、いちからやることを考えると気が萎える。
でもおじゃまする身なのでそんなことを思うのは失礼。
だけど・・・。
疲れて重い足取りでメンバーが待つところへ。
「遅くなって本当にごめんね。
うわっ!
ちゃんと用意してくれてたんだ!!」
肉や野菜が串刺しにされて炭で焼かれている。
ごま油とマヨネーズやからしを使ったサラダなどサイドメニューも豊富。
デザートまで用意してくれていた。
バラカ隊員、ぜんぜん噂とちがうよ。
左から理学療法士のゴジさん、教師のかずちゃん、右端の最高の笑顔をしているのが教師のアッキー。
なぜバラカ隊員がほかの隊員から頼りなく思われているのかナゾ。
もしかしたら日本での研修中は頼りないキャラだったのかもしれない。
アフリカの田舎で生きていく技術をここで身につけたのかも。
特製ドレッシングでおいしいサラダを作ってくれたゴジさんは、今ではインターネットのレシピ集クックパッドの愛用者。
アフリカの地で、クックパッドの良さを熱弁。
この夜は理数科教師、アッキーの家に泊めてもらうことに。
学校の敷地内にある平屋の家。
扇風機を貸してくれたんだけど暑すぎて夜眠れなかった。
「マラウィでここがいちばん暑いんじゃない?
ほかの隊員のところはもっと涼しかったよ。」
そう言うとアッキーが喜んだ。
「ほんとですか?
ここがいちばん暑いのか。
いやー、そう思うとうれしいな。
ほかの隊員に自慢できる!」
前々から気づいていたけれどアフリカ隊員には変な癖がある。
自分の生活環境が悪いことを喜ぶという癖。
アフリカに派遣されているのだから自分の生活もアフリカらしくあらねばならない、快適ではだめだ、というマゾっぽい思いが湧いてくるらしい。
これまでお世話になってきた隊員の家では水が出ないところもあったけど「水がないくらいがいいんですよ。これで水道も出たら日本と変わらないでしょ。」と言う隊員は多い。
わたしたちがマラウィのかくちゃんの家におじゃましていたとき、はじめて長期間断水した。
そのときかくちゃんも「おお~!これでやっと俺の家も水が出ないって言えるぞ!」とテンションがあがっていた。
不便なこと、過酷なことも笑って受け入れられるくらいの余裕があるからこそ、アフリカ隊員が務まるのかもしれない。
マラウィでいちばん暑いと言って喜んだアッキーの家にはマンゴーの木がある。
暑くてもおいしいマンゴーが食べられたらいいか。
そしてこの家にも。
藁で作ったアヒル小屋。
オスとメスを飼っていて、ヒヨコまで生まれていた。
いつさばいて食べるのかな。
アッキーはこの日の夕食にそなえてわたしたちのためにゴマプリンを作っていた。
「家事なんてぜんぜんダメそう」と言われていたアッキーの家には、本格的なスイーツのレシピ本まであった。
しかもアッキーの趣味はピアノ。
今度大使館主催のマラウィと日本の交流の行事が開かれるらしく、なんとアッキーはマラウィ国歌と君が代のピアノ伴奏を大使館の人に任されている。
「演奏中、国歌を間違えて弾いたりつまづいたら大変ですよ。
こわいなあ。」
ゴマプリンを作ったアッキーは、学校のピアノを借りて練習するため汗だくで出かけていった。
理数科教師なのに、大変だ。
今晩はゴジさんの家にお世話になる。
アッキーの家からは自転車タクシーで15分くらい。
理学療法士のゴジさんは、集落をまわりながら理学療法をしている。
家はアッキーの家よりも広々。
玄関から入ると正面にデスクが。
その前にはソファーセット。
社長室みたいになっている。
すてきな家具の配置。
そして壁には子どもの写真!
じつはゴジさん、一児の父。
子持ち隊員にはじめて出会った。
子どもが2歳のときにアフリカに派遣されたゴジさん。
かわいいさかりの一人娘を置いて単身でアフリカに行くのはつらいけれど、協力隊員になることはゴジさんの長年の夢だった。
自分の知識や技術を使って、海外の人たちの役に立ちたい。
そんなゴジさんの思いを理解してくれて、ひとり子育てに励む奥様はとても強くて優しい人だと思う。
決まった曜日の決まった時間帯にお互い時間を作って、スカイプで奥様と連絡をとっているゴジさん。
もちろん娘さんにもスカイプで話しかけている。
娘さんの写真も送ってもらっている。
年に一度の休暇を利用してわずかな間帰国したゴジさんは、久しぶりに娘に会って成長ぶりに驚いたのだそう。
「仕草とか動きとか、やっぱりスカイプや写真ではわからないもんね。」
2歳だった娘さんは4歳に。
遠く離れていても、娘さんには奥様がゴジさんのことをちゃんと写真で説明しているし、スカイプでも話しているから娘さんはお父さんのことをわかっている。
最近そんな娘さんの発言にゴジさんはちょっと動揺している。
「あのね、わたしおおきくなったらね、
アフリカでおしごとするの!」
うれしいような、切ないような。
親としては複雑な心境だね。
せめて日本の居酒屋気分を味わいたい。
ジョッキをキンキンに冷やして瓶ビールを注いで飲むのがマラウィでのゴジさんの至福の時間。
幼い子どもを日本においてわざわざアフリカに来なくてもいいんじゃないか。
そう思う人もいるかもしれない。
わたしより少し年上のゴジさんくらいの年齢の理学療法士というのはだいたいが家庭をもっている人なので、協力隊に応募する人は少ない。
そんななかゴジさんはとても貴重な存在。
ゴジさんだからこそできることがあるし、ゴジさんは求められている。
きょうのメニューは炭火焼と炊き込みご飯。
みんなで作っていたら、突然停電。
さらにきょうはずっと断水。
溜めておいた水をムダにせずちょろちょろ使いながら暗いなかみんなで料理。
特製ニンニク醤油につけこんだお肉を炭火でじわじわ焼いていく。
炭のおこし方も隊員たちは手慣れたもの。
そうこうしている間に電気が復活。
「おお~」と歓声を上げる。
電気があるのとないのじゃ調理のはかどりようが違う。
明るいなか、さくさくと料理が進む。
料理が不得意だと誤解されているかずちゃんが、本格炊き込みご飯を作ってくれている。
貴重な干し椎茸をふんだんに使って。
椎茸見ただけで唾が出るよ。
おいしそうな匂いが漂ってきた。
鶏肉の炊き込みご飯。
ケンゾーが大好きな「かしわ飯」。
デザートにはパイナップル。
こっちのパイナップルは本当に甘くて柔らかくて、芯まで食べられる。
ムダなく食べやすくする皮の剥き方をゴジさんがやってくれた。
このときゴジさんは、帰国を1か月後に控えていた。
2年間の任務の終了。
「もうすぐ愛娘とのいっしょの生活が始まるね。」
「楽しみだね。」
「いいなあ、日本。
帰国していちばんに何食べますか?」
みんなで夜遅くまで盛り上がった。
暑いバラカが少しだけ涼しくなる夜。
庭にゴザやマットを敷いてゴロンと横たわって、流れ星を探す。
星空を眺めて気づいたらみんなウトウトしていた。
さて、このブログを書いている今、ゴジさんはすでに帰国している。
きっと日本でおいしいものをたくさん食べただろうな。
娘さんといっしょの写真も増えたね。
2年間、ゴジさんも奥様もほんとうにおつかれさまでした。
娘さんのこれからの成長が楽しみだね!